不通の列車戻ってくる前に…被災倒壊の駅舎復元へ JR日田彦山線・大行司駅 九州豪雨8ヵ月
福岡県東峰村は、九州豪雨で倒壊したJR日田彦山線大行司駅の駅舎を新年度に復元する。駅舎は2008年にJRから村に譲渡され、駅務室を活用した喫茶店、待合室は近所の住民や来訪者が交流する場になっていた。大行司駅一帯の日田彦山線は不通が続くが、村の担当者は「地域のシンボルでもある駅舎をよみがえらせ、復興に向けた情報発信の拠点にしたい」と意気込む。
駅舎は瓦ぶき屋根の木造平屋約70平方メートル。総工費は約1400万円の見込みで、村に支給された災害共済金と、社会奉仕団体のライオンズクラブの寄付金で賄う。駅舎は解体されており、村は隣接する土手の改修が終わり次第着工する。平面図や写真などの資料を基に、被災前の姿を再現する計画だ。
駅舎は1946年に建てられ、最盛期は石炭の運搬でにぎわった。近くの宝珠山炭鉱で俳優の故高倉健さんの父親が働いていたことがあり、高倉さんの主演映画にちなみ、駅舎からホームに至る77段の階段を黄色いハンカチで彩ったこともあった。
2013年には駅の近くで生まれ育った井上佳子さん(49)が、愛着のある駅を「子どもからお年寄りまで利用できるように」と資金をため、元駅務室を借りて喫茶店を開業。地元の食材で作った料理を小石原焼の器で提供し、寂しくなった無人駅にぬくもりと活気が戻った。
昨年7月の集中豪雨で、駅舎は流れてきた土砂に押しつぶされた。70年にわたって村を見守ってきた存在だけに、復元に対する住民の期待は大きい。喫茶店の復活を望む声も多いが、井上さんは「時代を感じる建物に思い入れがあったから」と首を横に振る。
九州豪雨から5日で8カ月。村は井上さんの店のように、復元した駅舎をさまざまな人が集う場にすることを検討する。日田彦山線の列車がホームに戻ってくるのを心待ちにしながら。
=2018/03/05付 西日本新聞朝刊=