なぜ当事者に取材しないのか 識者の見方
◆大谷昭宏氏(ジャーナリスト)
産経新聞の一連の報道は、手抜き取材やうっかりミスによる誤報ではない。最初から沖縄県民に悪意をぶつけることを目的とした敵対記事だった。
批判する場合、公平性を担保するため相手の言い分を聞くのが報道の原則だ。だが、敵対記事を書くためには事実が明らかになっては困る。根底から崩れてしまう。だからあえて当事者に聞いていない。産経新聞はメディアであることを自ら放棄したに等しい。
安倍政権による裁量労働制の不適切データ問題がよく似ている。自らに都合が良いように事実の方をねじ曲げる、そんな手法がまかり通っている。共通の目的は日本を戦争のできる国にすること。そのためには沖縄戦の体験、平和を希求する県民が邪魔になる。
対抗するために、ジャーナリズムの原則を持ちだしても効果がない。例えば観光収入の報道について、県が産経新聞に損害賠償を求めて提訴してはどうか。県民全員に対する侮辱であり、精神的損害が1人100円としても1億円を超える。
でたらめだからと放っておいては被害が繰り返される。司法の判断を仰ぎ、一つ一つつぶしていく必要がある。(談)