百年超える歴史の島原鉄道、無念の自主再建断念

本田哲士氏[島原鉄道社長]

2018年3月5日(月)

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時に時勢に見放され、時に敵襲に遭い、時に身内に裏切られる――。栄華興隆から一転して敗戦に直面したリーダーが、おのれの敗因と向き合って問わず語りする連載「敗軍の将、兵を語る」を、「日経ビジネス」(有料)では原則毎号掲載しています。連載の魅力を知っていただくために、2018年3月の月曜から金曜まで、過去2年間に登場した「敗軍の将」たちの声を無料記事として転載・公開します。

(日経ビジネス2017年12月11日号より転載)

100年を超える歴史を持つ島原鉄道が自主再建を断念した。雲仙・普賢岳噴火災害の復興費用や沿線人口の減少が響いた。支援会社やファンドの資本を受け入れ、経営の立て直しを図る。

[島原鉄道社長]
本田哲士氏

1951年生まれ。長崎県出身。長崎県庁などを経て、2011年6月から現職。島原鉄道は大株主でもあり、補助金などで大きな影響力を持つ長崎県とのパイプを重視し、県庁出身者を代々社長として受け入れてきた。本田氏で連続4人目になる。

SUMMARY

島原鉄道再建の概要

長崎県の島原半島で運行している島原鉄道は、雲仙・普賢岳噴火災害の復興費用に充てた借入金返済や沿線人口の減少による鉄道収入の減少により、累積赤字が大幅に増加。今回、自主再建を断念した。長崎自動車や地域経済活性化支援機構への第三者割当増資で資本を増強することに加え、長崎自動車や機構から経営陣も受け入れる。

 長く経営が低迷しながらもなんとか自助努力で立ち直ろうと努力してきました。しかし赤字が慢性化しており、2017年3月期も売上高18億2200万円に対して2億5700万円の経常損失と厳しいものでした。累積赤字は7億5000万円にもなり、これを減らすことにも限界を迎えておりました。

 そこで11月13日に自主再建をあきらめ、長崎自動車や地域経済活性化支援機構の資本を受け入れて再建する道を選ぶことを発表いたしました。

 経営不振が長く続き、存続できるのか利用者の皆様にご心配をおかけしておりました。また、地域住民の方の重要な足である鉄道を守るためではありますが、再建にあたって地元の金融機関には大幅な債権放棄をお願いすることになり申し訳ない気持ちです。

 今回、どのような経緯で自主再建を断念するに至ったかをお話しいたします。

 経営不振に陥った大きな要因は、26年前の雲仙・普賢岳噴火災害です。島原鉄道も大きな被害を受けました。線路や鉄橋など設備を復興しましたが、そのために多額の費用がかかりました。28億円の借入金で費用を賄いましたが、この返済がいまだに大きくのしかかっていました。

 鉄道事業で返済していければいいのですが、沿線の地域は人口の減少が著しく、鉄道事業も赤字続きで返済どころではありませんでした。ただ、返済を滞らせることはできません。

 事業では黄色い車両を生かして「幸せの黄色い列車王国」という観光客誘致のプロジェクトを実施したり、2008年には島原外港~加津佐間の路線を廃止したりと経営改善を続けてきました。

 しかしこれだけでは鉄道事業の経営を上向かせることは難しく、同じ島原鉄道が行っているバス事業やホテル事業、不動産事業の収益を鉄道事業の資金や借入金返済に回している状況が続いていました。不動産事業で運営していた建物や土地を売却して捻出したこともあります。

 この資金は本来ならばバスやホテル事業に再投資すべきものでした。鉄道事業の赤字の補填に充てた結果、バス設備やホテル設備の更新などが後回しになり、これらの事業も競争力を失って収益が出なくなってしまったのです。売却する不動産もほとんどなくなってしまいました。

 タコ足食いのような状況で何とか保っていたのが実情で、借入金は16億円も残っていました。県や市から整備費に関する補助金も受けていましたし、増額していただいたり、赤字補?をしていただいたりしたのですが、それでも限界を迎えてしまいました。

「幸せ」をイメージさせる黄色い車両で運行している島原鉄道は、沿線住民の貴重な公共交通機関だが、人口減で鉄道収入は減少。苦しい経営が続いていた

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