イタリア総選挙、ハングパーラメントへ 右派・ポピュリストに支持集まる
4日に実施されたイタリアで総選挙が開かれ、右派寄りとポピュリズム(大衆迎合主義)政党への有権者の支持が集まるなか、過半数を占める政党がないハングパーラメント(宙づり議会)となる見通しとなった。
当初の見通しでは、下院(定数630)でシルビオ・ベルルスコーニ元首相が率いる中道右派が最大勢力となる見通し。出口調査では、中道右派は225~265議席を獲得する勢いだが、過半数の316には届かない見通し。
出口調査では、ポピュリズム政党「五つ星運動」が2番目に大きな勢力になる見通し。五つ星運動は今回、大幅に勢力を伸ばし最大政党となる可能性がある。得票率は約30%で、獲得議席数は195~235とみられている。
現在の与党、中道左派の民主党は115~155議席と、議会第3位になると予想されている。国民は就職難と移民問題で不満を高めていた。
BBCのカティヤ・アドラーBBC欧州編集長はツイッターで、「有権者は、最近の欧州各国で中道左派が罰せられたのと同様、中道左派政権を罰した」とコメントした。
イタリアで過去に実施された総選挙では、初期の出口調査が最終的な結果と一致しないことがあるが、結果が判明するまでには数時間かかる見通し。
アドラー編集長はツイッターで、「理論的には、五つ星運動と同盟(旧北部同盟)が連立を組むという、欧州にとっての悪夢が現実になる可能性がある」と指摘した。
ポピュリズム政党への支持の高まりは、2016年の、英国の欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票や、米大統領選でのドナルド・トランプ氏の選出との類似性が指摘されている。
フランスの極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首はツイッターで、「欧州連合にとっていやな夜になる」とコメントした。
開票速報によると、五つ星運動と同盟は上院(選出定数315)でも予想を上回る議席を獲得する勢いとなっている。
ベルルスコーニ元首相の連立に参加しているのは?
中道右派の連合にはベルルスコーニ元首相率いる政党フォルツァ・イタリア、欧州懐疑派の同盟、極右の「イタリアの同胞」が参加している。
過去4回首相を務め、現在81歳のベルルスコーニ首相は脱税で有罪判決を受けているため、来年まで公職に就くことができない。反移民政党の同盟と組む同氏は、現在欧州議会議長を務めるアントニオ・タヤーニ氏を首相に推挙する方針を示している。
他の政党
反エスタブリッシュメント(既得権層)を掲げる五つ星運動は、縁故主義的なイタリア政界を批判するコメディアンのベッペ・グリッロ氏が2009年に設立。
マッテオ・レンツィ前首相率いる民主党は、より小規模の3つの政党と中道左派・親欧州の連合を形成し、経済の立て直しを選挙運動の中心にすえた。レンツィ氏は2016年12月に首相を辞任している。
投票率
選挙管理当局は4日午後7時(6日午前3時)に、投票率が58%超となったと発表した。投票は午後11時に締め切られた。
イタリア各地の投票所で投票を待つ長い列ができた。ローマでは、時間に余裕を持たせて投票するよう市民に呼びかけていた。
投票に時間がかかった背景には、新たに導入された投票システムや、不正を予防するための新たな綿密なチェックがあったとみられている。
シチリア島パレルモでは、手違いのため20万票を再印刷する必要があったため、一部の投票所の開場が遅れた。
選挙の主要な争点
<移民問題>
2013年以降、リビアから地中海を渡る危険な旅を経て、イタリアに到達した移民は60万人以上。多くのイタリア国民は大量の移民の到着に不満を高めており、主流派を含む政治家たちが、移民に対する厳しい主張をするようになった。
ベルルスコーニ首相は、不法移民の存在を「社会的時限爆弾」だとし、強制送還を大量に行うと約束した。
選挙期間中には極右を支持する人々と、反ファシスト抗議デモの参加者との間で激しい衝突が起きた。
<経済>
イタリア経済は再び拡大基調にあるが、世界金融危機から約10年が経過したなか、イタリアの国内総生産(GDP)は依然として、危機前より5.7%低い水準にある。
2016年には、約1800万人が貧困に陥る危険に直面し、失業率は11%に上っていた。
経済政策は選挙の主な争点だったが、各政党は若者よりも年金生活者にアピールしようとする姿勢が見られたと、専門家たちは指摘する。若者の棄権率が高いことが影響している可能性がある。
選挙結果が注目される理由
イタリアの経済規模は欧州で4番目で、EUや欧州の一部の国にとって、ポピュリズムや極右政党の台頭は大きな懸念となっている。
候補者たちは口をそろえて、EUの財政規定が景気回復を妨げていると批判。五つ星運動や同盟は一時、ユーロ圏離脱を問う国民投票の実施を公約に掲げていたが、その後、取り下げている。
トランプ米大統領の当選に大きな役割を果たしたスティーブ・バノン前首席戦略官は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、イタリアの総選選挙は、「完全なポピュリズムだ」と述べた。
(英語記事 Italy election: Early exit polls point to hung parliament)