この本を読みました。
依存症治療で有名な国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進先生が、インターネット依存症について書いた本です。とても興味深かったのと同時に、ある理由から安心感を感じました。
精神科外来では、今までにない依存症の患者さんが増えて来たそう。インターネットが普及し、スマートフォンの保有率は急激に増加。なぜ働き盛り・子育て世代のスマホゲーム依存が増えているかということが、客観的な調査結果から明らかになります。いいですか、客観的な調査結果から数字やグラフで表されます。
スマホゲームは、とてもうまい手法で収益を上げられ、利用者を掴んで離さない構造になっています。いつでも、どこでも、隙間時間にできます。無料で始められて間口を広げ、ごく少数の人が課金すればゲーム会社の収支がプラスになります。そして、課金することでゲーム上級者になるために必要な時間や技術を買うことができるという誘惑が、さらなる課金を呼びます。アップデートで飽きさせず、ガチャという仕組みがギャンブル性を高めます。私もディズニーツムツムとポケモンGOをやるので、身につまされます。
また、脳の構造が画像でも示され、インターネット依存、アルコール依存、ギャンブル依存の患者さんたちのMRIで前頭葉と線条体の反応が似通っていることがわかります。科学的な手法、画像診断で示しているんです。
筆者の樋口先生は治療をしている医師であるので、インターネット依存・スマホ依存の治療の実際、疑った際にどうしたらいいか、予防するためにはどうしたらいいかということも載っています。
冒頭で安心感を感じたと書いたのは、ある2つのことが念頭にあったからです。一つ目は子どもを泣かせっぱなしにしておくと、他人に興味を持たなくなり、将来は問題行動や脳の障害につながるとママサイトで話題の「サイレント・ベビー」。
1990年に開業医であるいち小児科医が著書で発表した言葉がサイレント・ベビーです。私が持っている「いま赤ちゃんが危ないーサイレント・ベビーからの警告」は初版から4年経った第11刷で、当時とてもよく売れたことがわかります。実際、サイレント・ベビーというものがあり、母親が育児の主たる責任者で、細心の注意を払わないと子どもが大変なことになってしまうというのはほぼ常識のようになってしまい、ママサイトで尾ヒレがどんどん長くなったことに対して、このBuzzfeedの記事で警鐘を鳴らしました。
もう1つはこちら。
リンクがなくなったときのために↓
この記事は脳外科医がインタビューに答えて書かれたもののようですが、うつ病と認知症を混同していますね。
サイレント・ベビーもスマホ認知症も、医師が自分のクリニックにこういう患者が増えたという印象だけで話を進めます。以前の患者の様子、ある時点以降の患者の様子を比較したデータを示していません。そして、自分の価値観に沿って論を進めます。サイレント・ベビーについては、母親がもっと愛情をもってしっかり育児しないとダメだという話が随所に出てきます。奥村医師の著書は読んでいませんが、インタビューでは必要以上にスマホを悪者にしている気がします。ぜひとも、客観的な数字と画像診断などで説得力を見せてほしいものです。
「スマホゲーム依存症」に話を戻すと、2018年に改定されるICD-11(国際疾病分類)にも樋口先生たちの努力が実を結び、ゲーム障害という病名が載ることになるようです。名前をつけるというのは重要で、人がなにに困っているのかをそういう観点から診ることができ、診断基準が作られ、治療法が研究され、困っている症状が改善に向かうということです。
このブログもスマホで読んでいる方が、おそらくパソコンで読む以上に多いと思います。興味のある方はぜひ、ご一読ください。