若田部氏:時期尚早な政策転換は回避-必要なら追加緩和の提案も

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  • デフレからの完全脱却が必要-金融政策には基本的に限界がない
  • 2%達成以前に出口戦略の発動あり得ない-緩和の副作用顕在化せず

日本銀行の副総裁候補の若田部昌澄早稲田大学教授は5日、衆院議院運営委員会の所信聴取とその後の質疑で、「デフレからの完全脱却が必要」とした上で、時期尚早な政策転換を回避し、「必要あれば追加緩和を提案する」との考えを表明した。

  若田部氏は「時期尚早な政策転換は避けないといけない。デフレ脱却のために日銀はあらゆる政策を駆使すべきだ」と言明。「金融政策には基本的に限界がない」との認識も示した。

  経済理論と経済学史を専門とする若田部氏はマネーの量を重視するリフレ派として知られ、岩田規久男副総裁の後任候補。国会の同意が得られれば20日に就任する。新体制は黒田東彦総裁が再任し、副総裁には若田部氏に加え、雨宮正佳日銀理事が就任する見込み。

  若田部氏は日銀が保有していない国債はまだ6割残っているとし、「金融政策の持続性には問題はない」とも指摘。「緩和の副作用は顕在化していないし、メリットが上回る。マイナス金利の副作用もあまり顕在化していない」と述べ、2%達成に何が必要かよく議論したいと語った。

  黒田総裁は2日、同委員会での所信聴取後の質疑で、物価目標について「19年度ごろには2%に達成する可能性が高いと確信している」と述べるとともに、「当然のことながら、出口というものをそのころ検討し、議論しているということは間違いない」との見方を示した。発言を受けて為替市場では円高が進行した。

  若田部氏は出口の検討・議論について物価2%目標の「見通し達成が前提」と強調。「2%達成以前に出口戦略を発動することはあり得ない」と述べるとともに、1カ月だけ2%になっても出口に向かうことはないとの考えを明確にした。

  若田部氏は昨年12月のインタビューでは、2019年10月の消費税10%への引き上げを考慮した場合、追加緩和が必要だとの見解を示した。具体的な緩和策としては、年間80兆円をめどとする長期国債買い入れ額(保有残高の年間増加額)の90兆円への引き上げや物価上昇目標の2%から3%への変更を挙げた。

  前日本銀行審議委員の木内登英野村総研エグゼクティブ・エコノミストは先月20日のブルームバーグ・テレビジョンで、総裁を補佐しなければならない副総裁としての立場や実務経験の乏しさから、若田部氏が金融緩和方向に大きな影響力を及ぼすのは難しいとの見方を示した。

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