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IoTは「まずLTEで」と考えている

5G標準化作業の進捗を教えてほしい。

 2017年12月に決まったのは、先ほど説明したノンスタンドアローンの部分。スタンドアローンの標準化作業が残っており、それは2018年6月までに完了する予定だ。これをもって「3GPP リリース15」仕様として策定が完了する。つまり、ノンスタンドアローンの5Gネットワークはもう作れるということだ。

 スタンドアローンに関してもある程度議論されており、(装置ベンダーなども)予想しながら開発を進めていると思うので、スタンドアローンのネットワークも標準化が完了するまで一切作れないということではない。ただ、予想が外れると手戻りが大きくなるので、リスクを負いながら開発を進めていると思う。

 先ほどドコモはノンスタンドアローンを選択したいと言ったが、それはスタンドアローンよりネットワーク構築期間が長くなることが理由ではない。ノンスタンドアローンが先に標準化されたのは結果論だ。

標準仕様の内容は、だいたい予想していた通りか。

 当社は標準化に関してかなり積極的に活動しており、ほかの事業者や3GPPをリードしているベンダーと密にやり取りをしている。5Gのユースケースは、大きく3種類ある。まず高速大容量の「eMBB」(enhanced Mobile Broad Band)。次に世間一般でいうIoTを表す「mMTC」(massive Machine Type Communications)。ここではマッシブとは、端末が多数あることを意味する。そして、超高信頼、超低遅延の「URLLC」(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)だ。

 日本ではオリンピックもあるし、マーケットニーズとして高速化と大容量化は常に求められている。そのためeMBBを最優先しようとしている。mMTCはIoTサービスにおいて重要だが、我々は現状LTEでもIoTサービスを提供しているし、IoTに関してはカバレッジ、つまりエリアが大事になる。また、NB-IoTやCat-M1はLTEのプロトコルなので、5Gでは急がず、当面はLTEのネットワークを使った方がよいのかなと考えている。mMTCは標準仕様の作成上は少し優先度を落としてよいのではないかと提案した。

 URLLCについては低遅延に関心があり、その部分は本当に基本的なところから作り込む必要があるので、最初から考えておいた方がよい。一方サービスとしては、もう少しビジネスモデルを含めて考えた方がよく、URLLCを全部入れず低遅延のところだけ対応しておけばよいかと思い、そのような提案をしていた。仕様に盛り込まれた機能に関しては、概ね思った通りに進んでいる。

LTEも今後まだ高速化する

5Gを定義した3GPPのリリース15とLTEの関係は。

 3GPPのリリース15には、5Gの新たな無線方式(5G NR)とLTEの仕様が含まれる。ブランディングにもかかわるので、何をもって5Gというかは微妙なところだが、3GPPの標準仕様においては、LTEがリリース15仕様だったらそれは5G。5G NRはリリース15からできているので当然5G。当社の5Gのブランディングが将来どうなるかは分からないし、何をしたときに5Gと呼ぶかは検討が必要だろう。3GPPのLTEリリース15の機能を入れて5Gと言えなくはないが、どうするかはまだ分からない。競合他社がどうするかということも少しあるだろう。4Gのときに経験したことを言えば「ちょっとそれらしいことをすると4G」だった。5Gでも同じことが起こるかは分からない。

そのLTEだが、米クアルコムが2017年に1Gbpsを超えるギガビットLTEに対応するモデムを搭載した常時接続PCを発表した。こうした高速なLTEと5Gは、どのような使い分けになると思うか。

 適材適所で使うことになるだろう。我々はLTEの拡張を続けるし、5Gを必要なところで提供していく。コスト面も考えなくてはならないので、どこにどの程度注力するかはケースバイケースで運用サイドが考えなくてはならないが、両輪で捉えるものだと思う。1Gbps超のLTEは、時期や提供形態は分からないが、LTEも高速化は続けなくてはならないので、対応する方向で進めようと思っている。

 5Gと高速LTEとの関係でいうと、我々としては大容量性も必要だと考えている。LTEにおいては、端末の速度が上がるといっても、いつもその速度が出るわけではない。多くの人が集まるところでは、1台当たりの速度は落ちていく。その点5Gには大容量性もあり、多くの人が周囲にいるときの1台当たりの速度を上げられる可能性がある。これはマルチユーザーMIMO(MU-MIMO)という技術で実現する。MU-MIMOはLTEにも盛り込まれているが、性能面でどのくらい出るかは疑問が残るところだ。複数台の移動機があるときに、どれだけの性能差が出るか。それが容量に結び付けられる。