2018年3月7日配信「“平成の是銀”!?――ニチダイ株暴騰で急浮上した浪速の相場師・山田亨とは何者か?」<経済>
大阪証券取引所(☚wikipedia)
昨年末の600円台から年初にかけてジリジリ上げ始め、2月に入って急騰。2月20日に3060円の高値を記録、その後は2700円台で一進一退、先週3月2日の終値は2825円だった銘柄がある。
目下、証券界が注目しているこの会社は、京都府に本社を置く独立系金型メーカーの「ニチダイ」(古屋元伸社長、本社・京都府京田辺市)である。
一般に馴染みはないが、創立50年の老舗でジャスダックに上場する同社は、売上高141億円(17年3月期)、経常利益6億4000万円(同)、1株利益47円弱、配当20円と、それなりに堅調な数字を計上しているが、宇宙ロケットに使用される部品を製造する特殊な技術を持ちながら、役所や納入メーカーとの秘密保持契約の縛りもあって積極的なIR(投資家向け広報)ができず、株価は永らく500円台、時価総額は50億円前後で沈んでいた。
何のために上場しているのかわからないという意味で、経営陣の姿勢が問われる典型的な優良中堅企業の高騰劇は当初、「割安」と信じて購入を始めたファンド、投資家集団、物言う株主のアクティビストかと思われたのだが、2月13日、大量保有報告書が提出されて、「個人」が現物で買い集めていたことが明らかとなった。
その個人は大阪市在住の山田亨氏。――発行済み株式907万株のニチダイ株を5・75%買い集め、取得資金は約8億600万円。借入金もないことから全額自己資金で現物株を購入していったことになる。
2月20日にはさらに買い増して大量保有報告書の変更届を提出、7・81%の第2位株主となっており、これまでに12億6600万円を投じている。
一体、山田亨とは何者なのか。
北浜のベテラン証券マンが説明する。
「山田氏は投資が本業ですが、亡くなった親父さんが投資家として有名でした。特定の銘柄に狙いを定め、現物で買い上がっていく手法は親父さん直伝のもので、投資家というより『相場師』でした。相場を張る一方で、『ダイエー』の中内功さん(故人)と親しく、『マルエツ』や『福岡ダイエーホークス』などM&A戦略の一端を担うようなこともあり、相当な財を亨氏に残しています。一時、日本を離れ、中国で投資に打ち込んでいた亨氏は、親父さんの病気を機に帰国。2年ぐらい前から個別の日本株投資を始め、昨年半ばから本格的な活動を開始しました」
5%ルールに則って名前が登場したのは初めてだが、昨夏に300円台だった杉村倉庫株(東証2部)を、現物で買い上げ、今年1月22日、3680円にまで持ち上げたのも山田氏である。
その後、手仕舞ったこともあり、1000円代(3月2日の終値は1168円)に落ち着いているが、この時は「売り」を仕掛けてきた外資に「買い」で抵抗、踏み上げ相場にして勝利した。
山田父子と親交のある企業経営者は、「それが山田家のポリシーだ」という。
「姑息な手法を使わず、とにかく真っ向勝負が好きなんです。売りがきたら買い向かう。借り株で売ってくる連中には最もファイトを燃やして戦う。もちろん、それには将来的な企業価値、浮動株数の見極め、借り株の予測など、銘柄選択が重要ですが、それらは海外に行くまで父親の傍で運転手をしながら直に学んだようです。現在の彼の“敵”は、外資系の投資銀行やファンドなどで資金は無限といっていいほど膨大です。山田氏の資金量は数百億円以上で潤沢ですが、まだ時価総額の大きな企業でがっぷり四つ、というわけにはいきません。その結果、選んだのが『杉村倉庫』であり、今、手がけている『ニチダイ』なのです」
これまで外資による売り崩しによって、仕手はもちろん一般投資家も散々、泣かされてきた。
それに立ち向かい、借り株に誘って買い進め、踏み上げさせるのが山田氏の二代続きの手法であり、また、安く仕込んで一般投資家の買いにぶつけるようなせせこましいやり方は、好むところではないという。
「今、45歳ですが、学生時代には柔道に打ち込み、身長190センチ、体重130キロ。まるで奈良の大仏さんのような巨躯が物語るように小細工を弄するタイプではありません」(前出の経営者)
証券取引等監視委員会が、年々、ルールを厳しくし、監視を強めていることもあり、相場を張るのが難しくなった。
「是銀」の愛称で親しまれた故是川銀蔵翁が、1981年、「住友金属鉱山」の株式を買い占め200億円の利益を得、83年の長者番付で1位になったことがある。
以降、是銀のような個人が総力を挙げて買い進むような相場は、監督官庁の相次ぐ規制や証券界の自主ルール、外資主導の相場環境の変化もあって成り立たなくなり、是銀が「最後の相場師」といわれる所以である。
「ニチダイ」にも「売り」の外資のカゲがチラつくなか、山田氏は自らのスタイルを貫き、“平成の是銀”の道を歩めるのか。――久々に株式市場に現れた“正攻法の相場師”の行方を見定めたい。【丑】
- 2018.03.05 Monday
- 経済
- 12:55
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- by polestar0510