次々に新たなサービスが登場する一方、勝ち残りに向けた競争も激しいスタートアップ業界。株式上場や大手企業による出資、買収など日々話題は尽きないが、それらほどにはこれまで目立っていなかった事例がある。同じ分野でしのぎを削る、または全く異なる分野で事業を展開してきたスタートアップ同士の経営統合だ。
優秀な人材を集めたり、技術水準を高めたりと、スタートアップが飛躍するために求められるハードルは高い。経営統合はお互いの強みを持ち寄り体制を強化するという点では有効な手段だが、日本では欧米などに比べて一般的ではなかった。しかし、足元ではこうした「業界再編」のメリットに目をつけ、積極的に動く起業家らが徐々に現れてきている。
「2社が一緒になることで、日本のEC(電子商取引)分野において様々な挑戦ができる」。こう強調するのは、ネット広告サービス、フリークアウト・ホールディングスの佐藤裕介取締役。2社とは、2月1日付で経営統合した、決済サービスを手掛けるコイニー(東京・渋谷)と、ECサイト構築支援サービスのストアーズ・ドット・ジェーピー(旧ブラケット、同)だ。
コイニーとストアーズは共に2012年にサービスを開始した、EC業界の有力スタートアップ。しかし、事業領域はこれまで大きく異なっていた。コイニーは、中小の小売店や飲食店向けに、スマートフォンを使ってカード決済の受付ができる決済端末を提供するサービスで、ストアーズは中小企業や個人が無料でネット通販サイトを運用できるサービスを展開している。
ビジネスモデルの違う2社の経営統合を主導したのは、グーグル出身で1月31日までフリークアウトの社長を務めていた佐藤氏である。
双方の経営陣と個人的なつながりのあった佐藤氏は、兼ねてから2社のビジネスモデルに着目していた。オンラインとオフラインの垣根がなくなり、購買行動も多様化する中、中小企業や個人のECビジネスを支援する事業はさらに需要が拡大すると予測。一方、スタートアップが持つ経営資源には限りもあり、いかに迅速に事業を拡大するかもカギとなる。
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