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人月商売のITベンダー、特に下請けITベンダーに入社した若手技術者は、自分に与えられた肩書きを見て悩むという。「SE、システムエンジニアって何?」というわけだ。上司の説明を聞いても、抽象的な言葉の羅列しか返って来ないので要領を得ない。上司から「まあ、実際に働いてみれば分かるようになる」と言われ、納得できないまま引き下がらざるを得ないとのことだ。
自分で「SEとは何か」を調べようとする人もいるが、やがて衝撃を受ける。例えばITスキル標準(ITSS)を調べる。プログラマー、アーキテクト、インフラエンジニア、プロジェクトマネジャーなどが列挙されており、その役割や必要なスキルが定義されている。ところがSEについては何も書かれていない。そのために「ヘンだ。私はいったい何者なのか」と真剣に悩んだ人もいると聞く。
私もそんなに多くはないが、ITベンダーの若手技術者から「何がSEの仕事なんでしょう」と聞かれたことがある。だが、その質問に答えるのは難しい。尋ねてきた技術者が所属するITベンダーの社名を聞けば、(その人の会社における)SEとは何者かを答えられもする。だが、まさか面と向かって「SEとは手配師」「SEとはコーダー」「SEとはコボラー」などとは言えない。
要は人月商売、多重下請け構造の日本のIT業界においては、SEは「何でも屋」なのだ。技術者の頭数と期間で見積もり額を決めて、後は多重下請け構造をフル活用して様々なITベンダーから技術者をかき集めてくる。そんな商売をしている元請けのITベンダー、つまりSIerにとっては、スキルの差、経験の差にかかわらず誰もが「SE」であったほうが何かと好都合なわけだ。
だが、おのれの不明を恥じるばかりだ。日本におけるSEの明確な定義が存在したのだ。しかも、これ以上ないぐらいの公式な形で。不勉強であった。それなぜ気付いたかというと、国会で繰り広げられた例の「裁量労働制の拡大」のドタバタ劇があったからだ。裁量労働制を巡る不適切データの問題にはあきれてしまったが、そのおかげでSEの明確な定義にたどり着けた。