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 「特定労働者派遣(特定派遣)事業」制度が、およそ半年後の2018年9月29日に廃止となる。この変化は中小のITベンダーを直撃する。中小ITベンダーが大手ITベンダーやユーザー企業にIT技術者を派遣する際、本制度を利用する場合が多いからだ。厚生労働省の発表資料によると、2016年6月1日時点の情報処理・通信技術者の派遣労働者は12万5237人。その過半を占める6万7199人が特定派遣だ。

 もともと、派遣制度には2種類があった。1つは一般労働者派遣(一般派遣)で、登録した労働者を派遣する。一般派遣は開業の条件が厳しいうえ、労働局の許可を取得する必要がある。多くの読者がイメージする「派遣会社」はこちらだろう。

 もう1つの派遣の形態が特定派遣で、派遣会社が事実上期間の定めなく雇用(常用雇用)する労働者を派遣する。事業開始の条件が緩く、労働局に届け出るだけで開業できた。中小ITベンダーに都合のよい制度であり、多く利用されてきた。半面、行政の監視が不十分で、派遣されるIT技術者がスキルアップできない、使い捨てにされてしまうといった問題も起こっていた。

 派遣労働の問題が積み重なり、2015年に労働者派遣法の改正が決定。改正の1つとして特定派遣の廃止が決まった。改正法は施行済み。現在は移行措置として特定派遣事業を継続可能だが、9月末には完全廃止となる。特定派遣事業を中心にしていた中小ITベンダーは、許可制の労働者派遣(従来の一般派遣)に切り替えるか、IT技術者派遣事業を取りやめるかのどちらかを選択しなければならない。

 派遣会社の動向に詳しいマッチングッドの齋藤康輔代表取締役は「特定派遣を事業の柱にしていた中小ITベンダーは市場による選別にさらされる。強みとなる特徴を持っているITベンダー以外には、いばらの道が待っているのではないか」と話す。

マッチングッドの齋藤康輔代表取締役
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