大統領に輸入制限案
【ワシントン清水憲司、北京・赤間清広】米商務省は16日、中国製などの鉄鋼・アルミニウム製品の輸入増加が「国家安全保障上の脅威になる」として、トランプ大統領に輸入制限発動を勧告したと発表した。中国を最大の標的とするが、日本を含む全ての国に関税や輸入上限枠を適用するものなど複数案を提示。これに対し中国は強く反発し、米国が実際に発動すれば対抗措置に踏み切ることを示唆しており、米中貿易摩擦の激化だけでなく、世界の自由貿易体制を揺るがす恐れがある。
商務省が公表した米通商拡大法232条に基づく報告書は、中国の過剰生産で対米輸出が増加した結果、米業界が弱体化して「軍需向け製品供給ができなくなるリスク」を指摘。事態の是正には、国内企業の稼働率を80%以上に高める輸入制限が必要と結論づけた。
具体的には、鉄鋼製品について▽日本を含む全ての国を対象に最低24%の追加関税を適用▽全ての国に2017年比63%水準の輸入上限枠を設定▽中国など12カ国に最低53%の関税を課し、日本などその他の国には17年実績と同水準の上限枠を設定--の3案を示した。アルミについても、全ての国に最低7.7%の追加関税を適用するなど3案を提示した。鉄鋼は4月11日までに、アルミは同19日までにトランプ氏が結論を出す。実際に輸入制限を発動すれば、1982年以来となる。
これに対し、中国商務省の王賀軍・貿易救済調査局長は17日に談話を発表し、「米国の調査結果に根拠はなく、事実と完全に矛盾している」と反論。「各国が米国にならえば、国際貿易秩序に深刻な影響を及ぼしかねない」と強い憂慮を示した。また、「米国の最終決定が中国の利益に影響を与える場合、我々は正当な権利を守るため必要な措置を確実に講じる」として、対抗措置を取ることを示唆した。
日本も輸入制限の対象に含まれており、日本鉄鋼連盟は「内容を十分分析したうえで、対応などを検討したい。大統領の賢明な判断を期待する」とコメントした。