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フェルプス「神の手」で7冠目/競泳

金メダルを胸に笑顔のフェルプス(撮影・田崎高広)
金メダルを胸に笑顔のフェルプス(撮影・田崎高広)

<北京五輪:競泳>◇16日◇男子100メートルバタフライ決勝

 マイケル・フェルプス(23=米国)が「神の手」で1大会最多タイとなる7冠を達成した。男子100メートルバタフライ決勝で50秒58の五輪新で優勝。前半7位で折り返したものの、後半は猛追し、わずか100分の1秒のタッチ差で制し、今大会7個目の金メダルを獲得した。72年ミュンヘン大会のマーク・スピッツ(米国)以来、36年ぶりの7冠を達成。17日の400メートルメドレーリレーで、前人未到の8冠に挑む。

 フェルプスは執念の「神の手」で7冠目をつかんだ。タッチ勝負、わずか100分の1秒差だった。表彰台で、珍しく目を潤ませた。「興奮、安堵(あんど)、解放。いろんな気持ちが入り乱れた」。精密機械のように泳ぐ怪物も、興奮を隠せなかった。

 奇跡的な大逆転だった。隣のレーンのカビッチ(セルビア)が世界記録を上回るペースで飛ばす。前半50メートルは0秒62遅れの7位。体半分の差をつけられて折り返し、ここから猛烈な追い上げを開始。ラスト10メートル、5メートル、1メートルでも負けていたが、あきらめない。「無理だと言われても、思いを込めれば実現できる。それを証明したかった」。タッチが流れたカビッチとは対照的に、最後の1ストロークを小さくし、執念でタッチ板をたたいた。

 見た目では、カビッチが先着したように映った。だが、電光掲示板の数字はフェルプスの優勝を示した。レース後、カビッチ陣営から抗議の声が上がり、国際水連がビデオ検証したほどきわどかった。90年代のトップスイマーのポポフ氏(ロシア)は「カビッチは柔らかくタッチするミスを犯し、フェルプスはハードにたたいた」と解説。タッチ板に触れるだけではなく、ある程度圧力がかからないと計測は反応しない。そこに逆転劇の鍵があることを示唆した。

 フェルプスは「最後のひとかきをするかしないかが、勝負の分かれ目だった」と振り返る。最後にひとかきせず、カビッチのように手を伸ばしただけなら、負けていた可能性は大きい。

 幼少の時、ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断された。水泳の練習に打ち込むことで集中力を養った。「技術力以上に、ここ一番の集中力がフェルプスの強み」とボーマン・コーチ。土壇場での一瞬の判断が、36年ぶりの7冠をたぐり寄せた。

 スピッツの7冠に並び、17日の400メートルメドレーリレーで、史上初の8冠を狙う。「オーストラリアも強いので、接戦になると思うが、最後もいいレースをしたい」。神まで味方につけた「水の怪物」に死角はない。

 [2008年8月17日9時10分 紙面から]


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