東洋経済が大変微妙な記事を配信していて、その道に詳しい人からほぼ全否定されるような事態になっており、香ばしい匂いが漂ってきました。書き手は「富増章成・学びエイド鉄人講師」さんだそうです。

(魚拓)恐るべき大器晩成「北条早雲のすごい生き様」
https://megalodon.jp/2018-0304-1351-03/toyokeizai.net/articles/-/210309

 Twitterでもコメント欄でも「恐るべき間違いだらけの記事」とか「最初から最後まですべてが間違っている記事というのも凄い」とまで酷評されていて、なかなか大変だなと思うわけであります。

 で、先日その東洋経済オンラインの編集長山田俊浩さんも、インターネットメディア協会の発起人に名前を連ねておられ、ネットでの記事の信頼性向上のために頑張ろうとしておられたのが印象的です。なぜかこの団体が「フェイクニュース撲滅を目指している」というフェイクニュースが流通した、ってことらしいんですが、世の中いろいろむつかしいですね。

「フェイクニュース対策のための団体設立」が非常に何である件で - やまもといちろう 公式ブログ https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13175249.html
インターネットメディア協会に、賛成する人も反対する人も知っておくべきこと https://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/media-and-journalism-1

 これ、思うんですけど、時事ネタであれ今回のような歴史であれ、あるいは科学、芸術文化からオタク界隈にいたるまで、報じる側のメディアが書き手の専門性を信頼し、デスク業務が事実確認をしないで掲載する事例ってとても多いと感じるんですよ。

 「事実関係ははっきりしていないけど報じる価値のあるものを速報で流すことができるのがネットニュース媒体の売り」であり、速報性で新聞やテレビよりも第一報を流しうる存在として既存メディアを脅かしてきたという側面は間違いないと思うのです。また、商業ベースにはなかなか乗らないようなカルトだけど必要な情報をネットで安価に流すことができるのでネットには玉石混交だけど魅力的な情報が乱舞しているのも事実です。

 そうなると、ネットニュースを媒体として流し、広告を掲載したりセミナーをやって帳尻を合わせているネットニュース媒体社各社は、他よりも優れた媒体力を確保するためにも、速報性のある、刺激的な記事を媒体名という看板に括り付けてネットに放流するためのシステムの巧拙が戦場だ、という話になります。

 そうなると、東洋経済の問題というよりは、記事の校閲をかけたり事実確認の結果、GO/NGを決めるデスク業務がいかに重要か、というあたりじゃないのかなあと思うわけであります。逆に、一日何十本もニュース記事を配信しているメディアが、配信する記事一本一本で事実確認していたら割に合わないだろうとか、編集者の目を通してチェックすることはその編集者があらゆるジャンルに精通していなければならなくなってしまう状況を考える必要があるであろう、と。

 ましてや、今回のような歴史記事に関しては、ある程度常識的な学説を知っている人であれば記事の内容がトンデモに近いことは見抜くことができたであろうし、また編集部がそれなりに著書を出している富増章成さんの専門性に疑問を持つことができるかどうかは試されるところであろうし、むつかしいテーマだと思うんですよ。

 反HPVワクチンやEM菌に関してもいまだにまともに取り上げるメディアがあったり、速報性が必要ないところでもイデオロギーや「べき論」も介在するところでフェイクニュース対策や物事の真贋を見極めるリテラシーが必要と説いたところでどこまできちんとできるようになるんだろうか、と思うわけであります。

 東洋経済もまさかこんなところに地雷が埋まっているとは思っていなかったかもしれませんが、さすがに誤報に近い歴史記事に広告つけてそのまま垂れ流すわけにもいかないでしょうし、どうするんですかねえ… スマホ片手に踏ん張りながら推移を見守りたいと思います。


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