五輪二連覇を達成した羽生結弦。なぜ、あれほど心が強いのか。彼のスケートを見た人が抱く疑問だ。普段は少年のようにあどけないのに、競技中の眼差しには炎が宿る。天才スケーターを育んだ羽生家の実像に迫った「週刊現代」2015年1月31日号の記事を公開する。
連覇を達成した2014/2015グランプリファイナル終了後の記者会見で、羽生結弦にこんな質問が飛んだ。
「わが子を羽生選手のように育てたいというお母さんが多いのですが、どうしたら羽生選手のように育つと思いますか」
羽生は少し困ったような表情で考えを巡らせてから、こう答えた。
「僕は『僕』です。人間は一人として同じ人はいない、十人十色です。僕にも悪いところはたくさんあります。でも悪いところだけじゃなくて、いいところを見つめていただければ、(子供は)喜んでもっと成長できるんじゃないかと思います」
逆境に立ち向かう強い精神力、誰に対しても礼儀正しい振る舞い—羽生結弦を見た時、世の母親たちが「子供にあんなふうに育ってほしい」と思う気持ちはよくわかる。
ただ、そこでハタと気づくことがある。
羽生の両親とは一体どんな人物なのか—。
その質問に答えられる人は少ない。なぜなら羽生の両親はこれまで、インタビューに応じたこともなければ、表舞台に登場したことも一度もないからだ。