2008年2月29日に韓国で制定された法律に「日帝下日本軍慰安婦被害者に対する生活安定支援及び記念事業に関する法律」というのがあります。
内容については日弁連による日本語仮訳がありますので興味があれば参照してください(「日帝下日本軍慰安婦被害者に対する生活安定支援及び記念事業に関する法律」(日弁連仮訳・PDF))。
第1条は2008年12月19日に全文改正されているとのこと。
第 1 条(目的)
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/sengohosho/horei_08.pdf
この法は日帝により強制動員され慰安婦としての生活を強要された被害者を保護及び支援し、日本軍慰安婦被害者の名誉回復と真相究明のための記念事業を遂行することにより被害者の生活安定と福祉増進を図り国民の正しい歴史観定立と人権増進に寄与することを目的とする。
韓国語での法律名は「일제하 일본군위안부 피해자에 대한 생활안정지원 및 기념사업 등에 관한 법률」で第1条はこう。
제1조(목적)
http://elaw.klri.re.kr/eng_service/lawView.do?hseq=38399&lang=ENG
이 법은 일제에 의하여 강제로 동원되어 위안부로서의 생활을 강요당한 피해자를 보호ㆍ지원하고, 일본군위안부 피해자의 명예 회복과 진상 규명을 위한 기념사업을 수행함으로써 이들의 생활 안정과 복지 증진을 꾀하고 국민의 올바른 역사관 정립과 인권 증진에 이바지함을 목적으로 한다.
これを見ると「日本軍慰安婦(일본군위안부)」というのが韓国での公式な名称であることがわかりますね。
面白いのは、この法律の英語表記です。
法律名は“ACT ON LIVELIHOOD STABILITY AND MEMORIAL SERVICES, ETC. FOR SEXUAL SLAVERY VICTIMS FOR THE JAPANESE IMPERIAL ARMY”、日本語に直訳するなら“日本帝国軍のための性的奴隷制被害者に対する生活安定支援と記念事業に関する法律”となるでしょうか。
つまり、日本軍慰安婦の韓国語での公式名称は「일본군위안부」ですが、英語訳では「SEXUAL SLAVERY VICTIMS」だということです。少なくとも2008年から。
そしてこの法律何回か改正されていますが、2012年や2013年の改正で法律相談や保護施設などの規定を強化しています。
2015年9月、韓国政府はこの日本軍慰安婦被害者支援法の改正について言及した報告書(CEDAW/C/KOR/8)を国連女性差別撤廃委員会に提出しています。
http://docstore.ohchr.org/SelfServices/FilesHandler.ashx?enc=6QkG1d%2fPPRiCAqhKb7yhsglff%2fiazrVw%2bcyfdY9GxZ75V2l78zbTpI96zmY9owBH%2fAhnPxWTwFX1YBFXHB30j8NGNEshq3WXk9xXlmLHh1aS%2bXhrMtxGdl%2bCPdMEkJ7eAct on Livelihood Stability and Memorial Services, etc. for Sexual Slavery Victims for the Japanese Imperial Army
42.The Act on Livelihood Stability and Memorial Services, etc. for Sexual Slavery Victims for the Japanese Imperial Army (revised on 18 December 2012) provides a legal basis for the state to provide victims of sexual slavery by the Japanese Imperial Army with legal consultations and representation. Through a revision on 28 May 2013, central/local governments and social welfare foundations are allowed to operate shelters for sexual slavery victims of the Japanese Imperial Army.
これに基づくやり取りが、2018年の国連女子差別撤廃委員会で行なわれました。
Committee on the Elimination of Discrimination against Women considers the report of the Republic of Korea
これが鄭鉉栢女性家族部長官が「性奴隷」表現を使ったと日本政府・日本社会が大騒ぎした2018年2月22日の委員会です。
日韓政府間合意成立以前の2015年9月に朴政権が国連に投げ込んだ「SEXUAL SLAVERY VICTIMS」と明記された法律に言及した報告書を基に、文政権閣僚が国連委員会で「性奴隷」発言をして、日本政府が「合意違反だ!」と騒ぎ立てた、と。
ピタゴラ感を覚えるちょっとした話題でした。