「名医」「トップドクター」の存在は知っている。だが、伝手もなければコネもない一般の人は、どうしたら彼らの診療を受けることができるのか?医師がこっそり教えてくれたテクニックを明かそう。
慶應大医学部教授の北川雄光氏といえば、胃がん・食道がん治療の世界的名医として知られる。昨年8月からは慶應大病院の院長も務めている。
千葉県在住の藤井耕一氏(仮名・50歳)は、正月以降、食欲が落ち、どうも酒が旨くない。胃は張っているようだし、胸のむかつきが続く。市販の胃薬を飲んだが効果はない。
家系を振り返ると、多くががんで亡くなっている。今まで病院嫌いで、健康診断もほとんど受けてこなかった。
ひょっとしたら自分はがんではないか?ネットで検索すると、「胃がんといえば北川氏」といった記事が続々と出てくる。NHKにも出演しているらしいし、いかにもスーパードクターという感じだ。
この北川氏に、すぐに診てもらえないだろうか?藤井氏は考えた。
「名医ランキング」や「名医のいる病院」といったタイトルの記事は多い。だが問題は、どうすればその「名医」を簡単に受診できるかである。
今回明かす方法は、病院があまり大っぴらに明かしたくないものだ。理由は簡単。名医を求めて患者が病院に殺到するのを防ぐためだ。読者だけのために、知られざる秘策を伝授しよう。
そもそも前提として、「名医」が在籍するような大病院を、いきなり受診してはいけない。
まず、カネが無駄になる。現在、高度医療を提供する大病院を、紹介状なしで受診すれば、「選定療養費」が徴収される。たとえば慶應大病院では、5400円の実費(保険適用外)が、初診料とは別にかかるのだ。
だが、近所のクリニックで病院への紹介状を書いてもらう場合、かかるカネは、初診料込みで1596円(3割負担の被保険者)。紹介状なしで大病院に行くと、差額の約3800円をまるまる損してしまうことになる。
さらに時間も無駄になる。都内の大学病院に勤務する医師が言う。
「紹介状なしの初診患者は、予約枠のなかでももっとも後回しになります。さらに、仮に『名医』の教授の外来日があったとしても、その枠にわざわざ回すことは稀です。必ず、『初診担当医』の若手医師が診ることになる」
カネと時間を無駄にするだけで、名医など、夢のまた夢というわけだ。
それでは、どうしたら名医の診療を迅速に受けられるのか。
「目当ての医師への紹介状を、かかりつけ医に書いてもらうことです」と語るのは、
皮膚がんの権威である都立駒込病院医師の吉野公二氏だ。
「ネットや書籍で、目的の医師を調べる。過去に医師本人が書いた記事も含めてチェックし、本当に自分の疾患の専門かどうかを精査します。かかりつけ医に、該当の記事を持っていき、紹介状を書いてもらうのです」