骨盤が育たず股関節が変形する障害のため、人工股関節を入れながら5歳児を育てる。本業の業務コンサルタントの傍ら、女性障害者向けのフリーペーパー「Co―CoLife☆女子部」の編集長を務める。
障害の診断は美容師だった23歳の秋。小さな段差から飛び降りて激痛が走る。レントゲン写真を見た医師は「放っておくと歩けなくなる」という。それでも「手術をすれば治る」と思っていたら、障害者手帳が発行された。
左足を手術し3~4カ月寝たきり。さらに2カ月、車いす生活が続いた。右足も手術が必要と聞き、立ち仕事の多い美容師への復帰は断念。大学教員の父の勧めもあり、大学に編入した。夏休みに手術ができるという理由も大きかった。
卒業後は文具メーカーに就職。2年半後に富士通に転職し、営業業務管理のプロセス改善などに携わる。31歳で結婚、32歳で出産。「重い物が持てず、抱っこができない」状態での育児が始まる。
障害者認定から10年の節目に「障害者の立場で何かできることはないか」と考えていると、インターネットで障害者者向けファッションフリーペーパーを知る。「親の反対を押し切ってなった美容師の仕事への未練もあった」。おしゃれ、恋愛など女性の関心が高い分野で、当事者ならではの情報が加わる。障害を持つ女性が社会に一歩踏み出すきっかけを提供する内容に共感し、参加した。2年前からは編集長を務める。
2017年2月、9年半務めた富士通から独立した。出産による負担で股関節がつぶれて人工関節が必要になり、再手術。「もう1人産むのは難しい」。人生を考え、編集長の活動と両立できるフリーコンサルタントの道を選ぶ。現在はコンサル会社を設立し、経営者の顔を持つ。
今後は障害者目線の業務コンサルを視野に入れる。「法定雇用率のために障害者を雇うのではなく、業務プロセスを見直す過程で、障害者の特性を踏まえた人員配置が提案できるはず」
最初の手術で入院した際に知り合った同世代の難病患者は、次々と命を落とした。「自分は生かされている。せっかくなら人のためになることをやろう」との思いが、何足ものわらじを履きながら前進する原動力になっている。
(聞き手は嘉悦健太)
[日本経済新聞朝刊2018年2月26日付]