世界にはさまざまな事情から適切な形で十分な教育を受けられない子どもがいるが、そんな環境でもなんとか彼らに基礎的な知識を与えようと奮闘する教師もいる。
農村地帯で情報通信にまつわる科目を教えるこちらの教師もその中の一人だ。なんと彼はパソコンが1台もない学校で、生徒にMicrosoftのWordを教えていた。
チョークを駆使し、Wordの画面をそっくりそのまま黒板に描いて授業をすすめるガーナの教師。
この画像は先月半ばにシェアされて以来、ネット上で大きな反響や議論を呼んでおり、善意の人の寄付も相次いでいるという。
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パソコン無しでソフトウェアの授業だと?
Word文書を学ぶのであれば、まずパソコンがあるのが前提だ。欲を言えば生徒1人が1台ずつのパソコンに向かっていればもっと良いだろう。
しかし、設備や資源が足らない農村にあるその学校にはパソコンがなかった。
そこで教師のオウラ・クワドォさんはビジュアルアートを学んだ経験を生かし、黒板で画面を再現。今年2月15日フェイスブック上にその様子を投稿した。
ここで教えるICT(情報通技術)はとても面白い。黒板を使うんだよ。私は生徒たちが好きだ。だからその内容を理解できるようにしなければならない
image credit:facebook
先生グッジョブ!でもこれじゃ授業進まないよ!!憤る人々も
彼の投稿はガーナに議論を巻き起こした。
多くはクワドォさんの熱意や工夫を讃えていたが、2018年にもなって学校に教育用PCがないんてありえない!と怒り、彼が授業でこんな手間をかけなければならない状況に憤る人もいた。
image credit:facebook
だがこれは特殊な事例ではなく、ガーナ北部のある小学校を含め、地方の学校の大半にはこの学科の試験や教材が無い。
中にはかつて善意の人からノートパソコンを1台寄付してもらったが、2年前から使用できなくなっている学校もあるという。
こうした地域ではこの分野の教師がいても授業用のパソコンが無い、という理不尽な状況が珍しくないのだ。
善意の寄付で足らなかった機器が充実!
しかし幸いにもこの画像がきっかけとなり、注目を集めた学校には善意の人からノートパソコンやプロジェクターが届けられるようになった。
これは現地でも大きなニュースとなり、学校も大喜び。クワドォさんは生徒により良い経験を与えられるようになったと感謝しており、その一部を同じ問題を抱える学校に寄付するという。
都市部はまだしも地方は改善が進まず
途上国の教育現場では政府がカバーできない格差を埋める教師が未だに求められている。ガーナが世界を視野にいれれば、次世代への教育は欠かせない課題となるに違いない。
生徒は黒板の「画面」をノートに書き写して学ぶ
image credit:facebook
とはいえクワドォさんによると、政府もこの科目の向上を目指しており、クマシ市のような大都市では現状も改善されつつあるという。
都会ならまだまし、と語るクマシ市出身のクワドォ先生
image credit:boredpanda
だが、今回の学校のように地方の農村などは明らかに取り残されているため、設備が整ったインフラや教育、学習支援はもちろん、教育を中心とした政府が必要だと彼は語る。
やはり政府による教育そのものの見直しが進まない限り、都市部から遠く離れた場所ではこうした状況が続いてしまうのだろうか。
地方で受ける熱心な教育が変革をもたらすか?
なお、今回の授業についてクワドォさんは「すべての教師は自分の担当科目を生徒に示す手段を持っている。これは私のやり方です」と話している。
彼は農村の子どもたちが自分の授業をめいっぱい楽しみ、効果的に学ぶよう心がけている。また、生徒が席を離れる前に、授業内容をすべて理解しているかどうか確かめるようにしている。
こうした指導法は今のところうまくいっているそうだ。
現状に屈せず、そこにあるものだけで楽しく身になる授業を目指し、生徒のために奮闘するクワドォさん。彼の真摯な授業に触れた子どもたちが、この国の学びの現場に本当の変革をもたらすのかもしれない。
References:citifmonline / ghanacelebrities / boredpandaなど /written by D/ edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
芸術を感じる
パソコンは高価だから盗まれやすいんだろうな
2. 匿名処理班
こういうないならないでできる限りのことをやるっていうっていうのがすごくカッコいい
そしてクオリティが高い
3. 匿名処理班
ただただ頭が下がる。
もちろんこんな手間を取らせないで済むのが理想だけど、何としても教えようという情熱の有難いこと。
4. 匿名処理班
モノが無い けど諦めない
この教師の背中を生徒は大人になっても忘れることはないだろう
5. 匿名処理班
これ教育カリキュラム作ったの中央のお役人だろ。
実物のコンピューターに触れることもできない状況下で小さい子供に実務教育を施すことにモヤモヤが止まらない。
国語や数学のような基礎教科とは訳が違う。
ワードなんて実際にパソコン手に入れられるようになってからじゃないと本当に意味ないし、それからでも遅くないのに
貧しいのなら、貧しいからこそもっと他に教えるべきことがあるんじゃないのか?
6. 匿名処理班
情熱に満ち溢れた、いい先生だな。
7. 匿名処理班
絵が上手いこともすごいが、何よりわかりやすいところがさらにスゴイ。
右側に書きだしてあるような機能カテゴリの名称は、実際にパソコンを使って教えているとあまり気を使わないんだけど、こんな風に細かく書いておいてもらえると、習ってる最中もどこを使うかの検討がついて習得には良いかもしれない。
工夫した結果、生徒にとってもより分かりやすくなる。見習いたい。
8. 匿名処理班
この板書をノートに写すだけでスキルアップしますよ。
9. 匿名処理班
※5
貧しい国っていっても現代なんだし、PCのこと学んだって事実があるか無いかで仕事の選択肢広がるんじゃないかな
10. 匿名処理班
サボテンのTシャツどこで売ってるの?
11. 匿名処理班
紙マニュアルの時代にクォークだのフォトショだの覚えたクチだから現物なくても書籍やハードコピーで相当覚えられるのは経験してる。年少のうちに板書だけでも見た経験あれば後に実物を前にしたときの理解速度はぜんぜん違うと思う。てかホントに板書すごいですね。MOSエキスパートでもそうは描けないのでは。
パソコンなくても「そういうものがある」「そういった教育を君たちに手渡そうという国の思いはある、できることなら都市部と足並みもそろえたい」のだとこういう板書の形ででも示していくのは大きな意味ありそう。
都市部の小学校(外務省が公開してる写真みると設備差ありすぎ)とは違って「屋根と机と先生だけ(黒板あるとラッキー)」みたいな地域だと、こういった挑戦を試みる先生たちそれぞれの熱意が支えなのかな。でないとこどもたちも親も「これカカオ畑やマーケットの売り子で働いてた方がよくね?」って考えに引っ張られそう。
12. 匿名処理班
※5
別に一日中そればかりやっているわけではない
それにこの世には より便利なものがあると知ることは無駄ではない
この場面だけを見て全体を判断するのは間違っている
13. 匿名処理班
日本が無批判に国連に払い続けた分担金の幾らかでも現地に適切に届いていれば
せめてPC1台位は教師の元に在る筈なんだよ・・・
14. 匿名処理班
おしゃれなイケメン先生だなあ。ガーナというとガーナ野球チームを思い出す。
15. 匿名処理班
多分この授業の内容・・・つまりワードの使い方を覚えるという行為自体には
大して意味はないのだろうけど、
田舎の子供達が外の世界に興味を持つ事に大いに役に立っていると思う
この子供たちがこの授業をきっかけに外の世界に飛び出して、成長して戻ってきて、
将来の村の発展に役立ってくれるんだろうなと思う
16. 匿名処理班
先生、イケメン。心意気も見た目も。
17.
18. 匿名処理班
殺せんせーみたいな人だ
19. 匿名処理班
※10
それw凄く気になるし、ぶっちゃけ欲しいw
20. 匿名処理班
別の報道で見た情報だとガーナの高校進学には情報処理資格が必要で、これはその資格取得のための授業だそうだ。
頑張るこの先生の背中は美しい。そこには人間の力強さがある。でもさ、やっぱり苦労は少ないにこしたことないよな。届いた道具で楽に学べるといいな。きっとこの先生なら、モノがあればもっといい授業してくれると思うんだ。違う場所で同じ報道見てるはずなのに差別や苦労賛美してるの見ちゃってモヤモヤしてたけど、カラパイア※欄はいつも通りあったかくてホッとする。
21. 匿名処理班
デジタルをアナログで教えるといはシニカルだねえ
22.
23. 匿名処理班
先生、絵うっめーな!