「貧困層」が急拡大している欧州のリアル

「ベーシックインカム」では解決できない

イタリアではこの10年で貧困層が3倍に膨らんだ(写真:Alessandro Bianchi/ロイター)

先進国において貧困層が選挙結果を左右することはあまりない。だが、3月4日に総選挙を控えたイタリアでは貧困層が草刈り場になっている。中道右派政党「フォルツァ・イタリア」を率いるシルビオ・ベルルスコーニ元首相(公職禁止の有罪判決を受けている)と、コメディアンでポピュリスト政党「五つ星運動」の党首、ベッペ・グリッロ氏が共にベーシックインカム導入を唱えているのだ。

貧困層に毎月、気前よくおカネを支給することになるこの公約は、制度設計からしてまゆつばものだ。とはいえ、少なくともこれによって急速に深刻化する欧州の貧困問題に光が当たったのは事実だ。

イタリアでは貧困層が10年で3倍に

もちろん、貧困層の全員が悲惨な生活を送っているわけではない。が、多くは困窮しており、イタリアでは貧困層が選挙結果に与える影響は無視できないものになった。全人口の約8%、500万人近くが生活必需品すら買う余裕がなく苦しんでいる。しかも、こうした貧困層の数は、わずか10年で3倍近くに膨れ上がっているのだ。

欧州全体の状況も、同様に深刻だ。欧州連合(EU)では1億1750万人、域内人口のおよそ4人に1人が貧困層に転落するか社会的に疎外される危機にさらされている。その人数は2008年以降、イタリア、スペイン、ギリシャにおいて600万人近く押し上げられている。フランスやドイツでも、貧困層が人口に占める割合は20%近辺で高止まりしたままだ。

2008年のリーマンショック以降、貧困層転落のリスクは全般に高まったが、その傾向は若者において顕著だ。年金を除く社会保障給付がカットされたのに加え、既存従業員の雇用を守るために新規採用を犠牲にする労働市場のあり方にも原因がある。2007〜2015年に欧州では18〜29歳の若者が貧困化するリスクは19%から24%に上昇したが、65歳以上の高齢者については逆に19%から14%に低下した。

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  • NO NAME70c1b8f1d7d4
    >欧州の各国政府は、老齢年金をカットし、貧困層や失業者・若者への配分を増やすべきである。

    日本もですね。

    欧州同様、日本もこれをもっと堂々と主張しましょう。
    up30
    down6
    2018/3/3 15:52
  • NO NAME5b037de7d0c6
    一部の富裕層にお金が集まるシステムが顕著になり過ぎていると思います。

    普通は水などでも高い所から低い所に行くが、お金は低所得層から高所得層に行く。
    これを是正するのは、規制や税であり、政治の役割である。

    日本、欧州と世界的にもお金の流れを考えて、全人類の生活の保障などをしていく必要があると思います。
    up22
    down5
    2018/3/3 16:48
  • NO NAME51ac5c62483b
    日本でも明らかになるといいね
    貧困に苦しむ層がなくて、みんな安心して働いて暮らせる国ってどんなんだろうな
    up17
    down1
    2018/3/3 15:55
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