飯田泰之(明治大学政治経済学部准教授)
2月16日、日本銀行の次期執行部について、4月8日に任期満了となる黒田東彦総裁の再任、3月19日任期満了の2人の副総裁の後任に若田部昌澄・早稲田大大学院教授と雨宮正佳・日銀理事を充てる人事案が提出された。
意外性に乏しい今次の提案に「リスクを恐れた臆病な選択」と評される側面もあろう。市場の反応も薄く、各種報道に反応しての新たな動きは見られない。それでもなお今次の選択が日本経済において現実的な選択肢の中では妥当なものであったと筆者は考えている。その理由を語るとともに、新執行部への期待を述べたい。
(斎藤良雄撮影)
まずは総裁人事からみてみよう。日銀総裁の再任は山際正道(1956-64年在任)以来であり、現行の日銀法の下では初めてのことだ。異例であることのみをもって今回の再任を批判する議論もあるようだが、他の事情はさておき、再任があり得るとの前例ができたことは望ましい。
近年、金融政策に関する将来予想や政策姿勢・レジームといった数字だけではとらえられない要因が経済に大きな影響を与えるようになっている。総裁任期が5年に限定されるものではない、より長期になり得ることが明確になったことは、今後の総裁・執行部にとって小さくない財産となる。現任期を超えた長期的な政策を打ち出しやすくなるからだ。
一方で、2013年4月の現体制発足時に掲げられた「2年を目安に2%のインフレ率を達成する」との当初目標の未達をもって、その責任を取るべきであるとの議論も根強い。この目標未達は、日銀現執行部の二つの見通しの甘さに起因すると、以前筆者がiRONNAでも指摘した通りだ。2013年時点の日銀は、消費増税の景気へのダメージ、労働力プール(国内における働く意思と能力ある労働者の数)をともに過小評価していた。そのため、2013年の急速な資産価格・雇用、さらには物価上昇率の改善をもって「労働市場の逼迫(ひっぱく)による賃上げの本格化は目前であり、一時的な消費増税ショックを財政出動で支えれば、目標の達成はそう遠いことではない」と判断した。これが誤りであったことは言をまたない。
なお、公平を期すために付記すると、筆者も雇用者数が350万人以上増加し、非正規社員以上に正社員数が増加してもなお雇用改善のペースが鈍らないとは予想していなかった。