以前のエントリー「石川氏は小保方氏が若山夫人のES細胞を盗み、STAP細胞を捏造したと告発していた」で、若山夫人が盗まれたとするES細胞は、「129/GFP ES」だと書いた。

      石川氏を納得させ、告発に踏み切らせたとすれば、同じアクロシン入りの129B6F1のES細胞を若山夫人が持っていたことが前提になるからだ。

      それが何なのか分からなかったが、大田論文を調べていくなかで、これだろうというES細胞にたどり着いた。

      若山夫人が2004年8月に「Biology of Reproduction」に投稿した論文に「Establishment of Male and Female Nuclear Transfer Embryonic Stem Cell Lines from Different Mouse Strains and Tissues」がある。

      この論文には7つの異なるオスとメスマウスの遺伝子型と3つの細胞型(卵丘細胞核、雌尾先端細胞核、セルトリ細胞核)を核ドナーとして核移植ES細胞を作り、その樹立効率を調べたことが書かれている。

      この7つの核移植ドナーになったのは①B6D2F1 (C57BL/6 × DBA/2)、②B6C3F1 (C57BL/6 × C3H/He)、③C57BL/6 、④C3H/He、⑤DBA/2、⑥GFP入りB6D2F1 、⑦GFP入り129B6F1のマウスである。従って、出来たES細胞はそれら7種の核移植ES細胞だったことになる。

      一方、大田氏は2005年3月、同じ「Biology of Reproduction」に出生直後に死亡したクローンマウスの精巣細胞を取り出し、免疫不全マウスの精巣に移植して、成長させた精子を使って卵細胞質内精子注入法(ICSI:卵細胞に精子を注入)で子どもを作ったという論文を投稿している。

      クローンマウスは未受精卵を取り出して核を除去、替りにドナーの体細胞の核を移植(受精卵もどきになる)し、疑似妊娠させたマウスの子宮に戻して作る。その過程で胚盤胞を取り出し、培養したのが核移植ES細胞である。

      大田氏は論文でクローンマウスのドナーに129+Terマウスと岡部B6マウス(アクロシンGFP入り)を掛け合わせた129B6F1マウスセルトリ細胞を使ったと書いている。

      若山夫人の論文の第二著者は大田氏である。おそらく、若山夫人の論文に書かれたこの⑦はそのクローンマウスを作る過程で大田氏が作った核移植ES細胞だったと思われる。

      それなら、「⑦GFP入り129B6F1」のGFPとはアクロシンGFPである。

      石川氏が「若山研のスタッフから詳細な説明を受け、膨大な証拠を手に入れた」とあるのは、おそらくそのことだろう。石川氏は、それが小保方研にあった「129/GFP ES」の正体だと思い、自信満々で告発したものと思われる。

      それを警察は氏名不詳に変更させ受理した。警察が石川氏の告発を受理したのは、盗まれたとする若山夫人のES細胞がSTAP細胞の捏造に使われたと告発したからである。それが無関係なES細胞であったのなら、受付さえしてもらえなかったはずである。

      しかし、実際には、⑦は白色マウスの129X1ではなく茶色の129+Terマウスで、受精卵ES細胞ではなく核移植ES細胞で、「129/GFP ES」とは全く関係のないしろものであった。そのため、神戸地検が「事件の発生自体が疑わしい」として幕を引いたということだろう。





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      2016.09.08 Thu l STAP細胞事件 l コメント (4) トラックバック (0) l top

      コメント

      Re: 眞葛原さんとのTwitter
      ちょっと誤解があるようです。
      日経サイエンスの記事は、「若山氏が使っているのはSLC社の白いマウス129X1で、大田氏が好んで用いてたのはクレア社の茶色マウス129+Terだ。論文に書かれていたのはクレア社の129+Terだったが・・・・」です。この「論文」は大田氏の論文を指しています。論文では129+Terと書かれていたが、実際に調べると129X1だったという話です。STAP論文に書かれているのは129/Svでこれは129X1のことです。
      2016.09.09 Fri l wamoga. URL l 編集
      眞葛原さんとのTwitter
       STAP論文に書かれていたのは『クレア社の129+Ter』でしたが,理研の遠藤さんはSTAP論文のNGSデ -タから,『FLSの親マウスは129XIである』と予測しました。この129XIマウスにはゲノムの所々に『B6の黒マウスの配列』が紛れ込んであり,『そのパターンがアクロシンプロモ―タ-のあるSTAP幹細胞やFI幹細胞とよく似ていた』から。
       129XIマウスのル―ツを遡って調べたところ,20年以上前に,このマウス集団を飼っていた米ジャクソン研究所で【B6マ ウスが紛れ込む事故があったこと】が判明したから。ー (日経サイエンスより)

      2016.09.09 Fri l KK. URL l 編集
      Re: No title
      名誉棄損の告訴期間はとっくに過ぎているので告訴できないですが、民法上の損害賠償はできるので、その裁判で調書の内容が明らかになる可能性はあると思います。分かると今度は、虚偽の風雪を流した信用棄損罪でということになるのでしょうね。
      2016.09.09 Fri l wamoga. URL l 編集
      No title
      和モガさんの仮説が正しいかどうかは、警察の調書等が公開されるまではわからないと思うのですが、今後BPOでの審査が終わった段階で、小保方さん側が名誉毀損で訴えることによりその調書の内容が明らかになることはあるとお考えですか。
      2016.09.08 Thu l G. URL l 編集

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