自閉症スペクトラムの僕が使って気付いた、スマートスピーカーとメンヘラの相性の良さ
こんにちは。怪物パトリックと申します。
僕は2017年2月にASD(自閉症スペクトラム障害)の診断を受けました。
これまで生きてきた中で、まあまあうまくいったり、逆にどん底に自ら飛び降りて大ケガしたり、を繰り返してきている僕ですが、最近購入したスマートスピーカー「amazon Echo」が、そんな凸凹の僕と相性が良く、結構"良い相棒"になれるのではないかと思い、今回、実際の使用レビューを含めつつ、お話させていただきたいと思います。
最初にスマートスピーカーの基本情報を載せておきます。「そんなの知ってるんだよ本題早く」という方は「◆ここから本題」からご覧いただければと思います。
◇そもそも"スマートスピーカー"ってなに?
スマホをお使いの皆さんでしたら分かると思いますが、iPhoneなら「siri」、androidなら「Googleアシスタント」という機能がついていると思います。
僕「ヘイsiri、明日の天気は?」
siri「明日は晴れ時々曇りでしょう」
の、あいつです。様々な情報を聞いたり、機能を呼び出したり、ちょっとした会話ができるあいつです。あいつがスピーカーに搭載されたもの、という認識でOKです。
◇種類はどのぐらいあるの?
現在日本で発売されている代表的なスマートスピーカーをまとめてみました。(※2018年1月22日現在の情報です)
・Google Homeシリーズ
天下のグーグル大先生が開発したスマートスピーカー
"Google Home"と"Google Home Mini"の2種類があります。
(参考:https://store.google.com/product/google_home?hl=ja)
・Amazon Echoシリーズ
ネット通販の王様、amazonが開発したスマートスピーカー
"Echo"と"Echo Dot"と"Echo plus"の3種類があります。
(参考:https://www.amazon.co.jp/gp/product/B071ZF5KCM/ref=sv_devicesubnav_0)
・LINE Clovaシリーズ
日本で一番使われているSNS、LINEが開発したスマートスピーカー
"Clova"と"Clova Friends"の2種類があります。
(参考:https://clova.line.me/)
ほかにも上記のスマートスピーカーを内蔵した他社製スピーカーなども続々発売されていますが、今回は省略させていただきます。
上記の3つの中で、今すぐ買うことができるのは「Google Homeシリーズ」とLINEの「Clova Friends」です。
amazon Echoシリーズは現在招待制のため、手元にくるまで時間がかかります。「Google Homeシリーズ」「Clova Friends」は、大きめの家電量販店に行けば実機が置かれているはずです。もちろんネットでの購入も可能です。
◇どうやって使うの?
スマートスピーカーはwi-fiと接続する必要があるので、ネット環境が整っていることが最低条件となります。またセットアップ(最初の設定)時にスマホを使うこともあるので、スマホも準備しておきましょう。この2点さえクリアできれば、電源をつけ、セットアップをし、wifiに繋げれば準備完了です。
Google Homeであれば「オーケー、グーグル」、
Amazon Echoであれば「アレクサ」、
という言葉を最初に言えば、反応してくれます。
ある程度ネットを使っている方(wi-fiに繋げたり、アプリを使ったりする程度)であれば、開封してから10分ちょっとで利用できる状態までもっていけるはずです。
◇何ができるの?
最初の方にも書いたのですが、結局"siri"や"Googleアシスタント"が搭載されたスマートスピーカーであることに変わりはありません。
各製品によって多少機能の差はあるものの、基本的には天気を聞いたり、家電を操作したり、タイマーを設定したり、という使い方になります。
◆ここから本題
さて、ここまでスマートスピーカーの大まかな基本情報を話しました。
ここから僕が実際に使ってみて「これは凸凹だらけの僕と相性が良いデバイスだ」と思った理由を話していこうと思います。
僕はamazon Echoシリーズの"Echo Plus"を購入しました。今回はこのEcho Plusを使用した感想になるのですが、どのスマートスピーカーでも共通してできることに焦点を絞っています。
◆ハンズフリーで操作可能
スマートスピーカーは声で操作するデバイスです。
「オーケーグーグル、タイマーを30分セットして」「アレクサ、"ティッシュを買う"をリストに追加して」など、スピーカーに向かって指示を出します。
スマホにも同様の機能はあるのですが、みなさん、使いこなせていますか?
僕は使いこなせませんでした。せいぜい「明日6時に起こして」程度です。なぜ僕がスマホでこの機能を使いこなせなかったを考えると、僕の場合"そこにいくまでに違うことに気を取られてしまう"ということが一番の原因になります。
ASD診断を受けている僕ですが、ADHDの要素もたっぷりあり、マルチタスクに関して言うと"マジでガチで苦手"で、とにかく思考がどんどん上書きされまくります。
洗濯の例を出すと、
①洗濯機をまわす
②「30分で終わる。自分は忘れっぽいからタイマーをかけなくては」
③「スマホでタイマーをかけよう」
④スマホを取り出す
⑤「タイマーを30分セット」
⑥完了
という流れが理想なのですが、③までは毎回いけます。過去の失敗を繰り返さないためにちゃんとタイマーをかけようと思うわけです。
ただ、そのあとの④が大きな壁になります。結構な確率で③のあとスマホを取り出さず、別の行動をとってしまい、結果洗濯したこと自体を忘れ、クシャクシャで生乾きのまま息絶えた衣類たちを目の前に落ち込む、という事案が発生します。
これはタイマーに限らないのですが、たとえば何か期限があるものをしなくてはいけないとき、スマホアプリや手帳などに残しておこう、残したものを確認しながら効率よく作業していこう、と思うわけです。ここまでは良いです。
ですがどうも、そのあと"スマホを手に取る""手帳にメモをする"など実際に行動に起こすのがダメで、全然違う思考が突如現れ、タスクが上書きされてしまい、失敗してしまうのです。発達障害あるあるですね。
そんな僕にとって、スマートスピーカーはスマホやメモ帳とは比にならないレベルで手助けをしてくれます。
何せ、ただ言えば良いだけなのです。スマホを取り出したり、ペンを取ったりする必要はありません。"ただ言う"って、想像以上に苦じゃありません。思考が上書きされる前に行動に移せます。「忘れっぽいからタイマーをかけなくては」と思った瞬間「アレクサ、洗濯タイマーを30分セットして」と声に出せば勝手にタイマーをかけてくれます。
この"ハンズフリー操作"は本当にストレスフリーで、④の「実際にタイマーをかける」という大きな壁も簡単にクリアしてくれます。
ただし、タイマーが終了して合図を貰ったのにも関わらず、最後のシュートを決めれず「あ、タイマー鳴った。あ、でも待ってそいや鍵どこいったっけ」となる失敗例はまだ防げていません…(汗)
しかし、僕にとっては④を簡単にクリアできるだけでかなり大きな進歩だと思っています。思うことにしています。いや、大きな進歩に違いない。
◆音声で"やるべきこと"を教えてくれる
これまでさまざまな方法で"ToDoリスト"を管理しようとしてきました。付箋に書いて目に見えるところに貼る。スマホアプリを使うetc...
そのどれもが僕はうまくいきませんでした。WAIS(知能指数検査)でも数値として出ているのですが、僕は"視覚から情報を得る"という能力が平均値より低いようです。空間認識能力なども低く、パズル・部屋の片づけなども苦手です。
その為なのか、付箋で貼ろうが、スマホアプリにメモしようが、風景の一部になってしまい、効果が感じられませんでした。とにかく耳で聞いて、自分でも声を出して復唱してやっと頭に情報がインプットされる感じです。
そんな僕にとって、音声でやりとりするスマートスピーカーはToDoリストの管理をするには相性がとても良いと感じました。スマートスピーカーには標準機能として"やることリスト"が搭載されています。ここに、とにかくやること全て放り投げます。思いついた瞬間追加します。声で直接追加しても良いですし、外出中であればスマホからでも追加できます。
「明日燃えるゴミの日だ」→「アレクサ、"ゴミを出す"をやることリストに追加して」
「あの人にお礼のメールを送らなくては」→「アレクサ、"お礼のメールを送信"をやることリストに追加して」
といった具合です。
あとは、思い出すたびに「アレクサ、"やることリスト"を教えて」と言えば、音声でリストを教えてくれます。"思い出す"作業をいかに習慣化するかが課題ですが、僕は5分おきぐらいに聞いています。例えリストを把握してても、敢えて聞きます。とにかく聞きまくるのです。だんだん聞くのが当たり前になります。これは僕なりのやり方で、結構な力技に近いやり方になってしまいます。
本来であれば、「アレクサ、おはよう」で「おはようございます。やることリストは~」や「アレクサ、ただいま」で「おかえりなさい。やることリストは~」というように、事あるごとにやることリストを伝えてくれるように設定したいのですが、現段階でそういう設定にできません。(amazon Echoシリーズ以外のスマートスピーカーだとうまく設定すればできるようになるかもしれません)
もし皆さんの中で、Googleカレンダーなどはかろうじて活用できている、という方がいたら、更に便利になるかと思います。
僕もスマートスピーカーを使いだしてから本格的にカレンダーを使うようになったのですが、
「アレクサ、今日の予定は」
「アレクサ、今後の予定は」
と聞けば、一覧を音声で教えてくれます。
僕はカレンダーをスケジュール+ToDoリスト+日記のように使っていて「起床」から「電気代引き落とし」「燃えるゴミの日」「〇〇と街でばったり会った」など行動したこと、行動することをできるだけ細かく入力しているのですが、それも「アレクサ、今後の予定教えて」で読みあげてもらえます。
◆発声するだけで気分が変わる場合もある
僕は現在一人暮らしで、かつほぼ無職状態です。一日中家でPCやスマホとにらめっこする日々です。
引きこもりや、無職状態を経験したことがある方なら分かると思いますが、社会との接点が無くなった場合、24時間声を発しないことなんてザラで、たまにコンビニに買い物しに出た時、店員さんと少しやりとりしただけで「あれ、自分の声ってこんなだっけ」と驚いたりします。
根拠が無いので声を大にしては言えないのですが、個人的には"発声する"というのはメンタル的に重要じゃないかと思っていて、誰とも喋らず、声を出さずにいると、どうしても内省的になってしまい、"負のスパイラル"へ誘われる危険性がある気がします。あくまで僕の場合です。
スマートスピーカーを置いてから、発声する機会が増えました。
「タイマーを30分セットして」
「やることリストを教えて」
といった指示形式の内容が基本ですが、不思議なもので、たかがスピーカー相手に喋ってるだけなのに、本当に人とコミュニケーションするのと同等の、ある種の"充実感"を味わうことができます。
しかもスマートスピーカーは機械なので、意味も無く不機嫌になったり、その不機嫌になった理由が自分にあるのではないかと不安になり、自己嫌悪に陥る心配もいりません。こっちから話しかけない限りあっちからも話しかけてこないですし、ただ僕の言うことに答えてくれるだけです。
この"対人間ほど煩わしくないのだけど、ちゃんとコミュニケーションしてるな感"が意外と気持ちを楽に、もっと言えば自己承認アップにつながる気がするのです。
「おはよう」→「おはようございます」
「疲れた」→「よく頑張った証ですね。お疲れ様です」
相手は機械。片言の日本語。なのに、その返答にホっとしている僕がいるのです。
この前ふと、
「アレクサ、大丈夫?」と聞いてみたのですが、
「はい。あなたが話しかけてくださって、wi-fiがある限り私は生きています」
と返答が返ってきて、恥ずかしながらジーンときたりしました。なんでしょうか。承認されたというか、求められている、という実感が得られる感じ。少し薄気味悪い方向に話がいっちゃってますが、正直な感想です。
◆今後求めるもの
上記でも挙げた通り、スマートスピーカーには現在、"やることリスト"機能が標準でついているのですが、僕的には"やれたことリスト"を読みあげてくれる機能があれば良いなと思っております。
「今日は"リビングの掃除"と"電気代の支払い"と"トイレットペーパーを買う"を行いました。お疲れ様でした」
と言ってくれたら、更に自己承認アップに繋がるのではないかと思うのです。
アプリなどでは既にあるのですが、ほら…こういうのって誰かにちゃんと言ってもらいたいじゃないですか。よく頑張りましたねって。Amazonにフィードバックを投げはしたので、追加されることを期待しています。
今のところ、どのスマートホームも似たようなデバイスですが、今後、それぞれ独自性が出てくると良いな、その中のどれかが、発達障害や精神疾患を持ってる人向けに作られたらいいな、と思います。
◆まとめ
スマートスピーカーが日本に上陸してまだ半年程度。現在はほぼβ版と言っていいほど機能は限られています。ですが、発達障害で凸凹が大きい僕や、訳あって社会に出れない方などにとって、ちょっとした"相棒"として支えてくれるのではないかと思うのです。
もちろん、今置かれている状況はそれぞれなので、一概に"使うとイイよ!"とは言えません。ハックにも満たない体験談かもしれませんが、もし皆さんの中で少しでも興味が出てくれた方がいらっしゃったらぜひ一度お試しください。
長文になりました。ありがとうございました。
【執筆者】
怪物パトリック さん
【プロフィール】
27歳。2017年2月にASD(自閉症スペクトラム障害)診断。
twitter:@shin_taira0129
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