松本人志にめちゃくちゃウケた三又又三の秘芸 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』 (2)

2018年03月02日 三又又三 松本人志 水道橋博士 町山智浩 藝人春秋 言霊USA 週刊文春

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(前回より)
http://tablo.jp/culture/news002945.html


「小倉智昭さんには暗喩としてのヅラしか書いていない」(水道橋博士)


博士:連載の第1回目が掲載された時に、能町(みね子)さんが、この文章はどれだけ仕掛けがあるんだ? ってtwitterで呟いていて。橋下徹の一回目。掛詞や韻、ギャグの数とか。これは一回目のときだけでも、本当に入れてるんですよ。これはこういう風にかかってくし、ここには韻を踏んで意味を持つとか。

町山:そうそう。そういう意味では一番分かりやすいのは小倉さんのところ。小倉智昭さんについて書いている文章が凝りまくりでね。下巻のP24。ちょっと読むね。

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 平成のテレビ界のもはや重鎮である小倉は、もともと帝国石油の技術者を父に持つ、生まれながらの毛並みの良さを誇るサラブレッドだ。

 ただし、毛を以って馬を相すことなかれ、家柄に恵まれたからといってヌクヌクと育ったわけではない。その人生には人知れず、小倉の頭を悩ませた数々の挫折も待ち構えていた。

 今でこそ、フジテレビの朝の顔として長年親しまれているが、決してフジ「生え抜き」のアナウンサーではなく、就活時代には同局の最終選考まで残りながら最後の最後でツルッとすべり落ち、吠えヅラをかかされた因縁もある。

 すべり止めで受けた東京12チャンネル(現・テレビ東京)で晴れて局アナとなるも、大橋巨泉に誘われてフリーに転身。電気ガス水道を止められるほどの食えないどん底生活を経て、やがて大ブレーク。局アナからフリーで成功するというキャリアパスのパイオニア的存在ともなった。

 もちろん、司会業のみならず飲食店経営など、実業家として二毛作で稼ぐ手腕も有名である。

......とかね。全部毛についての言葉だけで説明してある(笑)。

博士:暗喩としての「ヅラ」っていうことしか書いていない。でも、ストーリーとテーマ性を保っている。

町山:どんだけしつこいんだ()。でもね、どこにもヅラとは書いてない。毛のことわざとかが並んでいるだけなんですよ。全編これだから、凝りすぎだよね。

博士:凝りすぎと言うより、カブせすぎなんだけど(笑)。驚いたのは、小倉さんはこの連載を読んでいたんですよ。『たかじんNOマネー』で、ボクが生放送を降板する事件っていうがあって、この本、下巻にその真相を書いてますけど。
 その時、事件を起こした翌日に小倉さんが司会の『とくダネ』が取材に来たんですよ。ニッポン放送の青山さんとの特番、(『青山繁晴・水道橋博士のニッポンを考えナイト』)を終えて出てきたところでマイクを向けられて、「博士どうだったんですか!?」って、俺、事務所から「絶対無言で行き過ぎてください」って言われてたから、無視して通りすぎるだけなんですよ。
 で、『とくダネ』でどういう風にあれを報道するのかなって翌日テレビを見てたら、小倉さんが、俺の映像を見ながら「いや、ワタシは水道橋博士の本や連載は読んでます」って言われた、そん時の俺の驚きぶり。シャッポを脱ぐとはこういうことかと(笑)。申し訳ございません!! と。
「彼はコメンテーターというより文章家ですよ」って言ったんですよ。「え、読んでんだ~!」って言うのが一番驚きじゃないですか。それでスタッフルームかなんかに、これみよがしに、オヅラ話しか書いていない、この『週刊文春』が置いてたらどうしようって......

町山:ひゃっひゃっひゃ(笑)。いや、これだけ凝ってて、仕掛けがすごいあって、しかもほとんど、上巻で振ったネタが下巻で回収されたりするのもすごいですよね。

博士:上下巻にすることによって、上巻で振ってるものを下巻で回収するっていうのを、しつこくやってますが、これは長い映画を見せるときにインターミッションっていうのも上巻の終わりに設けているほど、映画のイメージがあるんですよ。エンターテインメント、後半は『藝人春秋』の『1』の時も、「冬」に向かって「死」を扱っているからだんだんとトーンが暗くなっていったけど、これもそういう意味じゃ、『007』を見たときの最後のどんでん返しの驚きを味あわせたいっていう気持ちで作って、色んな仕掛けがあるんで、順番通りに読んでラストを最後に読んで欲しいんですよね。
 ずっとラストシーンは「袋とじ」でやりたい、って企画を進行させていたんですけど、値段上の問題で出来ませんでした。

町山:博士が文藝春秋に呼ばれて、最初にミッションを命じられて芸能界の調査に行く、という流れになってて、この設定が徹底的に凝ってるんだけれど、それでも三又又三のくだらなさには勝てないよね。(本を捲りながら)これが笑ったんだ。エア・セックス......言っちゃうけど、三又さんが、エア・セックスをみんなの前でやらなきゃいけなくなってね。

博士:松本(人志)さんの前でね。

町山:それで、イク時に、なぜか三又さんが、「調子悪りぃ」って言うんですって。
 で、「調子悪りぃって何?」って聞いたら、

「あっすみません。エア・セックスとはいえ、完全に入り込んで、自分がセックスする気になっちゃったんで、いつも言ってる調子悪りぃが出ちゃったんです」

「どうしていつも調子悪いって言ってるの」

「早漏気味なんでいつも調子悪いって言い訳してるから」

 って。つまり三又さんは、狙って言ったわけじゃない。いつも言ってるから、エア・セックスしたら思わずいつもの言い訳が出たっていう(笑)。

博士:杉作J太郎さんもエア・セックスの大家で、何回か大会で優勝してるんですけど、三又は、杉作J太郎さんとかも知らないから、『あまちゃん』に出演するのに、脚本家の宮藤官九郎ですら、まるで知らないっていうね。

町山:彼、全然、自意識がない。

博士:いや、自意識が自分にしか向かってない。どこまでも、うぬぼれ鏡でしかない。

町山:で、ダウンタウンの松本さんに、めちゃくちゃ、受けた三又さんの芸というか......(笑)。言っていいのかな?

博士:ええ、ええ。どうぞ。

町山:話しにくいね、これね。

博士:いいですよ、言って言って。

町山:三又さんのタマキンをゴムに結び付けて、ゴムを引っぱって、ドアのノブにつけて、料亭でそのまま仲居さんを呼ぶと、仲居さんが知らずにドアを引き開けるから、タマキンがぎゅーーーーーっと引っぱられて...(笑)。それ芸なのか! 芸って違う方の、ゲイじゃないの!(笑)

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博士:ちなみに三又には「ゲイ」疑惑もあるんです。それは「1」で書いています。この話を聞いたとき、日テレの『ナカイの窓』に一緒に出たときに楽屋で聞いたんだけど、本当にひっくりかえって笑いましたもん。このキンタマ引っ張るだけの隠し芸が、毎年松本人志さんの忘年会で、5年連続行われてるっていう。しかも、宮川大輔がコンビになっていて、SMの関係で、大輔は三又又三のキンタマを引っぱる役っていうだけの芸なんです。

町山:で、宮川さんが三又さんに「お願いしますから今年も引っぱらせてください」って頼むという(笑)。なにこのバカな世界。

博士:それで、だんだんエスカレートしていって、キンタマ引っ張るだけなのに『必殺』みたいな複雑な仕掛けになっていくから。

町山:そうそう。ピタゴラスイッチみたいな複雑な仕掛けになって、誰がひっぱるかって(笑)。

博士:連載のときは、これは明らかに世間では通用しない芸人だけの世界の「パワハラ」を笑いにしたものだから、連載で松本さんに迷惑かかったら申し訳ないので、結構ぼやかして書いたんですよ。
 だけどこれは本当に三又に聞いた話を全部テープに録ってるから。本当に行われた話ですから。もう、書いていても、俺、爆笑しながら......(笑)。

町山:で、当然、伸ばされ続けたキンタマがボロボロになって病院に行くんですけど、医者が不思議がって、「どんなプレイをしたんですか」って(笑)。

博士:流石に、三又又三も正月から医者や看護婦の前でそのプレイを説明できない。だって、複雑すぎるでしょ。仕掛けが(笑)。しかも、まともな人間のやることじゃないよ(笑)

町山:これには一生懸命作りこんだ文章も勝てないよね。

博士:いや~でも、この話を聴いた時は、スクープだって興奮したの。だから三又は1作目も出てるけど2作目もこれだけ出てるのに、その後、借金事件とか起こして、松本さんから絶縁されているし、もしかしたら本でもカットになるかなって。松本人志さんをしくじってるっていうのは、我々の一門からすると大変良くないことなんですよ。特にお金のトラブルはね。それをオープンに出来るか出来ないかっていうのは、これ本に残るか残らないかっていう、ギリギリのところでしたよ。

町山:あと照英さんも面白かった!

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博士:照英さんは何がすごいかっていうと、今は、もう日本にいるけど、昔、『水戸黄門』で役をやって以来、自分の自意識の中で、小さな世界に自分は居てはならないってことに駆られて一年中、世界中の秘境を冒険しているという......。特に北極クマとの死闘は見ものですね(笑)

町山:『水戸黄門』のレギュラーを蹴ったんでしょ~。

博士:そうです。町山さんはお気づきかもしれないけど、実はこの本のベースの中にあるのは開高健なんです。
 まず開高健の本を全部読んで、前半、照英さんは『オーパ!』の躁的な冒険の世界。最後の方は開高健さんの『闇』シリーズの鬱々とした世界を再現していて。表現や描写のトーン全体もそこから引用してるんだけど。正直、開高健に捧ぐって気持ちです。
 これは偶然なんだけど、今、いとうせいこうさんが「国境なき医師団」について世界中を取材しているんだけど、それが不思議でね。
 この本を書いているときに、東京体育館で『いとうせいこうフェス』って大規模フェスがあって、ボクも漫談で出演したんですけど、そこに向けて、せいこうさんの人生を解き明かす20万字年表を作ったから(笑)。

町山:迷惑だよ(笑)。

博士:本人の了解を得てやったの(笑)。それこそ、『藝人春秋2』を書きながら、一方で『メルマ旬報』の年表仲間と、いとうせいこうさんの年表をずっとやりつづけたから。
 で、せいこうさんに聞いたの、「仕事でもないのに、あの国境なき医師団に随行するのは何のための行為ですか?」って。そしたら「開高健だよ!」って。最近の作家が外に飛び出していかないっていうことに対して反発していて、その行為自体は開高さんへのオマージュでやってる、って。『オーパ!』とかベトナム戦争に従軍した頃の開高さんの世界なの。
 だから、この本は、せいこうさんの影響も強くて、それで、町山さんと並んで、いとうせいこうもスペシャルサンクスで入っている。

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町山:もーまったく。博士は興信所みたいな人だからね。

博士:そうそう。基本的には対象に向かって調査、下調べを繰り返す。マメだけど、やはり人としての器が小さいんですよ。

町山:本家のジェームス・ボンドなんて全然調査とかしないですよ。敵の基地にいきなり行って、「名前は?」って聞かれて「ボンド、ジェームス・ボンド」って本名言っちゃう。全然スパイでもなんでもないですよ。

博士:「ボンド、ジェームス・ボンド」って、あれ、映画で必ず言うじゃないですか。

町山:定番。本名を言うスパイなんているか(笑)

博士:だけど、その口調は本でも引用していて、俺が登場するところから「博士、水道橋博士です」って言うんですけど、すごい唐突なんですよ。

町山:ははは。

博士:だから校閲さんも「何でこうなってんですか?」って。それはジェームス・ボンドの名台詞だから必要なんですって、いちいちパロディを説明してさー(笑)。

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町山:誰にも伝わらない。一生懸命考えて、すごい緻密にやってるんですけどね。それに対して照英さんは本当に何も考えてない。博士が照英さんのことを『週刊文春』に書いたら、照英さんから電話が来て、こう言うんです。


「いや~、『週刊文春』を毎週読んでますよ。僕、『週刊文春』っていう雑誌があること知らなくて、この年になって初めて知りました」 (爆笑)

 すごいですよねこれ。週刊文春の人、本当死にたくなったと思いますよ。電車乗ってるとき車内つり広告も見たことなかったんですね。

博士:今はスキャンダル雑誌で『文春砲』なんて言われて、日本で一番売れてるみたいでいるけど。

町山:照英さん、知らないんだから。

博士:そうそう。女の子なんかも記事を知ってるだけで、具体的に『週刊文春』の連載の執筆陣の誰かを追ってるってことはないと思うんですよね。だから町山さんもよく、「文春で書いてることの反響なんか、ツイッターで書いてる反響に比べたら無い」って言いますよね。

町山:僕が文春に何か書いても、全然バズらない。でも、まったく同じことをツイッターでちょっと書くと何千もリツイートされる。ちょっと悲しいですね。

博士:それは作家としての悲しさだし、それでも俺は、諦めずに、もう一度、文章で反響を起こそうよって言ってることだし、読書人、今日こうやって観客として来てくれる人たちは読書人だと思うんです。でも読書人が追いやられるっていうか、要は無教養主義になっていく世の中が広がっていて......。無教養主義っていうのは、ボクは大きく言えばリベラルじゃなくなるっていうところだと思ってるんですね。津田大介さんなんかが、「ネット上の争いでは、リベラルは99%負ける」と言うけど、「待ってよ、まだ1%あるじゃん! 勝ち目あり!」っていうのが、俺の思いですよ。

町山:だけどね。勝ち負けで言うと、リベラルって勝つこと自体が権力的だと思ってるから勝てない、それは。だからリベラルなんかどうでもいいから、とにかく勝てばいいと思ったほうが勝てますよ。それは俺はいつも思ってる。

博士:その勝ち負けを俺は言論界でやってるわけじゃないし、あくまで、お笑いだから、俺は権力者、政治家、偉そうな人は、とにかく、からかうのよ。職業的な使命はそこですよ。

町山:博士が自分は芸能界の内部にいないと感じるのはそういうところなんですか。

博士:でもそれは町山さんが教えてくれたと思いますよ。たけし軍団は、そもそもパワハラとセクハラを中心とした愚直な芸能ですから。本当に。80年代的な。

町山:言えないもんね、何があったか。

博士:パワハラの「ガンバルマン」の延長と、井手らっきょさんみたいにフルチンになって騒いでるセクハラだけですよ。本質は、でも、ボクを含めてそういう芸をやりたくて入ってきたし、そのなかで育ってきたし、その芸人の世界で成長したから。
 それこそTBSラジオ『ストリーム』で町山さんのコーナー「コラムの花道」を聴くようになってからじゃない。世界の中にこういう笑いの観念があるとかさ、差別意識やポリコレみたいな概念とか、そういうことがわかるようになったのは。

町山:そうなんですか?

博士:本当にそうなんですよ。それまで必死でしたよ。芸人のサバイバルゲームに。日々、やっていることは三又と変わってなかったですよ。リアクションしなきゃとかね。一日全裸で過ごすとか、そんなことばっかやってましたよ。主に鬼軍曹だったダンカンさんと一緒に、最終的には人間サイコロで腰を壊して、椎間板ヘルニアで歩けなくなって、今じゃ、軍団の傷痍軍人になっちゃってますけど(笑)。(三回へと続く)

(20171130日〈文春トークライブ 20回〉
町山智浩×水道橋博士『言霊USAvs.『藝人春秋』より)

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