(cache)自分のクローンを大量に作るザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」 | ギズモード・ジャパン
自分のクローンを大量に作るザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」
Image: Armacus/Shutterstock.com

自分のクローンを大量に作るザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」

うじゃうじゃ。

ミステリークレイフィッシュというザリガニをご存知でしょうか。別名マーブルクレイフィッシュと呼ばれるザリガニの何がミステリーなのかというと、メス単体でクローン繁殖(単為生殖)できるのです。

今回、イリノイ州立大学の神経科学者であるウォルフガング・スタインさんの研究チームがミステリークレイフィッシュのゲノム塩基配列を解読し、調べた11体すべてのゲノムが同じであることを突き止めました。これは、このザリガニはオスと交配せず繁殖していることを意味しています。また、ほとんどの生物が2組の染色体を持ついっぽう、ミステリークレイフィッシュは3組の染色体を持つことも発見したそうです。

Video: Igor Kanshyn/YouTube

このザリガニは、元々1995年にフロリダのエバーグレーズで捕獲されたスラウクレイフィッシュで、ドイツに渡り飼育されていたところ、交尾する相手がいないにも関わらず繁殖し始めたんだとか。

爆発的に増えたミステリークレイフィッシュを持て余した飼い主は、ペットショップに持ち込み、その後ほかの愛好者の手に渡りました。この単為生殖ザリガニは、1年に2、3回クローンを作ることがわかっており、The New York Timesによると、今やヨーロッパとマダガスカルで鼠算式、もといミステリークレイフィッシュ算式に数を増やし、特にマダガスカルでは強力な侵入種となって問題視されているそう。

「1匹飼えば、1年で数百匹になる」というのはドイツがんリサーチセンターで後成遺伝学部門を統括するフランク・リコ氏。繁殖力抜群な上に、酸性、アルカリ性、汚い水、綺麗な水といった、どこでも生きられる適応力もあります。川や池、湖といった水辺に放されてしまったら被害は計り知れません。

実はこのミステリークレイフィッシュ、去年の3月にすでに日本の愛媛県でも発見されています。今やインターネットで簡単に生き物を取引する時代、少し検索するとお手頃価格でこのザリガニを見つけることができます。すでに卵胞状態で届けられる個体もあるらしく、興味本位で手にした愛好者が持て余してしまうことは想像に難くありません。

私もザリガニ好きで、今も川で捕まえてきた1匹(ごく普通の交尾タイプ)を飼育していますが、その成長の早さと食欲旺盛っぷりには驚かされるばかり。ひとたびミステリークレイフィッシュが自然界に放されれば、その脅威的な繁殖力と適応能力で水辺の生態系を瞬く間に変化させてしまうでしょう。

想像するだけで恐ろしくなりますが、ミステリークレイフィッシュの存在はマイナスばかりではありません。というのも、彼女らの遺伝子構造を研究すれば、ガンの研究に役立つだろうと期待されているのです。治療薬ができるというわけではないようですが、腫瘍への理解を深めるのに一役買うかもしれないようです。

Image: Armacus/Shutterstock.com
Source: nature, The New York Times, 朝日新聞
Beth Elderkin- io9[原文

中川真知子