言いたいことはタイトルで全部言ってしまってますが、以下細かい内容を。
scivolaさんのQiita などの技術系の記事で残念に思うポイントに触発されて、普段から思っていたことを書いてみました。
まず「暗号化」とは何か。これを説明する時には以下のような図が使われます。
暗号化
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平文 暗号
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???
元になる「平文」があって、それを「暗号」「にする」から「暗号化」ですね。
じゃあ「暗号化」の逆の操作をする、上の図の「???」の部分はなんと言えばいいのでしょうか。
平文にするから「平文化」? 流石にこんな言い方をする人は見たことないですね。
元になる単語が「encrypt / decrypt」で"en"と"de"が対になるためか、「復号」という訳語が当てられたようです。
でも結構なところで「復号化」と書いている人を見かけます1。「暗号化」「復号化」と並んでるとなんか字数的に合ってるような感じがするのでこう書いてしまうのでしょうか。
でも正しくは「復号」です。「化」はいりません。「復号化」した結果の「復号」というものが存在するわけではなく、「復号」した結果平文になるのです。
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たまに「複合化」と書いているのも見かけます。そっ閉じ案件です。 ↩
「復号化」という誤った用語が使われてしまう背景に以下のようなことがあると思っています。
[1] 釣り合い
ご指摘のように「暗号化」に対して「復号化」の形だと対称性がよく,釣り合いが取れて見えます。
逆に「暗号化/復号」の対だと,ちょっと落ち着きが悪く感じます。言葉遣いにゆるぎない自信がなければ,不安を感じてしまうのでしょう。
[2] 「復号」の馴染みのなさ
「暗号」は誰でも知っていますが,「復号」は暗号理論を学ばない限り見聞きする機会がありません。
「複合」は日常的にも使いますし,「複号」なら高校数学で「複号同順」の形で出てきますが。
馴染みのなさがうろ覚え,自信のなさにつながり,一見しっくりくる「復号化」を選ばせてしまうのかもしれません。
[3] 過剰な「化」の流行
「加速化」のような過剰な「化」が流行っています。こうしたことも「復号化」の普及を後押ししているかもしれません。
「加速」は速度を増すことであり,すでに変化の含意があるのに,そこにさらに「化」を付けると変ですが,役人から総理大臣に至るまで好んで使っています。
もっとも,定速状態から加速状態へ変化させるという意味でなら「加速化」はありうるわけですが,使っている人はそこまで考えていないでしょう。ただの誤用です。
もっとも,私の印象では,過剰な「化」が目立つようになるずっと前から「復号化」は使われてきたように思います。
ファイルの復号ソフト販売サイトや、セキュリティ用語事典を公開しているサイトで「復号(復号化)」という記載例があります。
彼ら自身も用語をきちんと理解していないためか、二種類で書いているのかもしれませんね(あるいは、過去の記載に縛られて「復号化」表記を残しているのかもしれません)。
ユーザでなく、専門家の方ではとくに用語の記載については気を付けて欲しいと思います。間違いはどんどん伝播していきます。