(cache)失格紋の最強賢者　～世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました～

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第１７７話　最強賢者、鎧を外させる

◇

依頼を受けてから、およそ一時間後。
俺達は、テストラ平原に向かって出発すべく、門の近くに集まっていた。
だが、ここで一つ問題が起きた。

「……何だその装備は」

最後に来た試験官を見て、俺はそう呟いた。
試験官が、鉄製の重い鎧を身につけてきたのだ。

「何だと言われても……防具だが」

「いや、逆効果だろ……。その防具なら、着ない方がマシだと思うぞ」

確かに、魔法金属などで強化した鎧を身につければ、高い防御力を得られる。
だが試験官が身につけているのは、ただの鉄の鎧だ。

これでは、大した防御力は得られない。
それどころか、機動力が落ちて攻撃を受けやすくなるため、かえって逆効果だ。
何より、歩くたびに鎧がガシャガシャと金属音を立てるせいで、見つかりやすいことこの上ない。

「だが、今から行くのは死人の沢山出ている危険地帯だ。生半可な装備では生き残れない」

ああ、防御力が高ければ安全だと思っているタイプか。
上位のパーティーが軒並み全滅するような状態では、半端に防御を固めたところで無意味なのだが……理解させるのは難しそうだな。
ここは、もっと軽くて頑丈な装備でも提案するか。

「あー……ルリイ、適当な防具強化の魔道具でも作ってくれ。既存の服に後付けするタイプで」

「えっと……こんな感じですか？」

ルリイは俺の言葉を聞いて、すぐに俺の意図を理解したようだ。
数秒悩んだあとで、ルリイは手元にあった魔石に魔法陣を刻んだ。

刻まれた魔法陣は、俺が期待した以上の仕上がりだった。
この程度の魔法陣なら、もうルリイは自分で組めるな。

「できました！」

「ああ。上出来だ」

そう言って俺はルリイから魔道具となった魔石を受け取り、手近な布を対象として、魔道具を起動する。

「アルマ、その辺の適当な木を、射ってみてくれ」

「分かった！　……魔法なしで矢を射るのって、なんか久しぶりだね」

そう言いながら、アルマが布に向かって矢を放つ。
矢は鋭い音と飛び、木に深々と突き刺さった。

「すごい威力の矢だな……化け物と言われるだけのことはある」

そう言って試験官が、刺さった矢を見つめる。
それを横目に見ながら俺は、魔道具で強化してある布を、木にかける。

「了解！」

アルマが、さっきと同じくらいの威力の矢を、布のかかった木に放つ。
今度の矢は、木に刺さらなかった。
矢は布に少し傷をつけたものの、貫通せずに弾かれたのだ。

「なっ……今の矢、手加減したとかじゃないのか？」

それを見て試験官が、驚きの声を上げる。

「手加減したように見えたかな？」

「……いや、見えなかった」

試験官は、そう即答した。
やや臆病だとはいっても、ギルドの昇格試験を任されるだけのことはあって、矢の威力の区別くらいはついているようだ。

「この魔道具を使えば、普通の服をそれだけの強度にできる。……その上で聞くが、わざわざ重い鎧を着る意味はあるか？」

「……ないな」

そう言って試験官は、鎧を脱いだ。
防御魔法で強化した服は、ルリイやアルマが着ている防具に比べれば弱いが、ただの鉄の防具に比べれば、はるかに防御力が高い。

せいぜい厚さ数ミリの鉄などが、魔法に勝てる訳がないのだ。
……まあ、アルマが魔法で矢を強化すれば、この程度は簡単に貫けてしまうことに変わりはないし、『重くてもいいから防御力の高い装備を作れ』ということなら、これよりはるかに硬いものは作れるのだが。
そんなことを考えながら、俺はルリイが作った魔道具で試験官の服を強化する。

「よし、出発だ」

――こうして俺達は、テストラ平原へと出発した。

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