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 アメリカ言語学会の最新情報によれば、地球上にある人間の言語は7000種近くが記載されている。

 長大なリストに思えるが、人類学者や言語学者らは引き続き新しい言葉に遭遇しており、最近でもまたマレー半島北部の村で新たな発見があった。

 スウェーデン、ルンド大学の研究チームは「タングス・オブ・ザ・セマン(セマン族の言葉)」というプロジェクトの最中に今回の発見をした。

 小さな村の280名が話すその言語は「ジェデク語(Jedek)」と命名された。

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狩猟採集民コミュニティの280名が話すジェデク語(Jedek)


セマン族の言語調査で判明


 プロジェクトは、セマン族の村で彼らの言語(オーストロアジア語族アスリ諸語)データの収集・文書化を進めることが目的だった。

 しかし、ある村でジャハイ語(Jahai)と呼ばれる言葉を調査していたところ、その話者が誰もいないことが明らかになった。

 「我々は村の大部分で別の言葉が話されていることに気がついた。村人はジャハイ語にはない単語、音素、文法構造を使っていた」と『Linguist Typology』に掲載された論文で述べられている。

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image credit:Jedek speakers (Niclas Burenhult)

 「これら単語のいくつかは、マレー半島の遠方にある別の地域で話されている他のアスリ諸語との繋がりを示唆していた。」

 それは「ジェデク語(Jedek)」と命名され、280名ほどが話す。ジェデク語の話者グループは、かつてペルガウ川沿いで暮らしていたが、その後マレーシア北部に移住した狩猟採集民コミュニティの一部だ。


予想外の発見に驚く研究者


 論文の主執筆者であるジョアンナ・イェガー(Joanne Yager)博士はインタビューで、素晴らしいのはまったく意図されていない発見だったことだと語っている。

 以前ジェデク語が話されている村が調査された時には、この言語の存在に誰も気がつかなかった。「それが存在するなんてちっとも知らなかった。未記載の言語であっても、ほとんどは存在自体は知られているのが普通だ」とイェガー博士は話す。


ジェデク語はボキャブラリーに生活環境が大きく反映


 その言葉がこれまで見過ごされてきた理由の1つは、正式名称がなかったことかもしれない。そこで、その言語でよく使用されている用語に基づき「ジェデク」と研究チームは呼ぶことにした。

 プレスリリースによると、この新言語はそれが使われている社会の文化を反映しているという。

 例えば、「盗む」「買う」「売る」といった所有権に関連する単語はないが、「共有」や「交換」に関する豊富なボキャブラリーがある。

 それというのも、村に暴力沙汰はほとんどなく、子供同士の競争はたしなめられるし、法律や裁判所、職業といったものもないからだ。代わりに誰もが皆、狩猟採集民として必要な同じ技術を習得することが期待されている。


Unknown language discovered in Southeast Asia

近年発見された新言語


 近年、ジェデク語以外にも新しい言語が発見されている。

 2013年、インド、アルナーチャル・プラデーシュ州では800人によって話される「コロ語(Koro)」という未知のチベット・ビルマ語派言語が発見された。

 さらに同年、オーストラリアの僻地にあるラジャマヌに住む350人の住人が、彼らが「ライト・ワルピリ語(Light Warlpiri)」と呼ぶ、英語と2種の方言の混合言語を話すことが明らかとなった。

 これは最近登場したようで、話者のほとんどは40歳未満である。コミュニティの労働者が英語に触れる機会が益々増える一方、彼らが牧場で作業しながら新しい単語を家族に伝える。このようにして、ここ数十年で発達したことが窺える。

References:eurekalert / smithsonianmag/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 11:20
  • ID:9becwSmy0 #
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goodbad+3
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>例えば、「盗む」「買う」「売る」といった所有権に関連する単語はないが、
>「共有」や「交換」に関する豊富なボキャブラリーがある。

なんか感動してしまった。

2

2. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 11:24
  • ID:hyTW3ICw0 #
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ジョアンナ・イェガー博士はこの地域で言語だけでなく怪獣調査も行っている。(フェイクニュース)

3

3. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 11:42
  • ID:Bku6KL180 #
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goodbad+2
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こういう記事見るたびにいつも思うんだが、ある言語からの派生言語と方言との違いって何?

例えば日本だと津軽弁とか沖縄弁とかは標準語からかけ離れすぎて別言語って言っても良いレベルだと思うけど、違いがわからん

このコメントへの意見(2件): ※6 ※13
4

4. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 11:45
  • ID:p3Pdz3kl0 #
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この記事、ものすごく興味深い
「翻訳できない世界のことば」って言う絵本が大好きなんだけど
ジュデグ語の翻訳ってどんな感じになるんだろう

>誰もが皆、狩猟採集民として必要な同じ技術を習得することが期待されている。
の下り、ほんのりとスパルタ教育っぽく感じるのは考え過ぎだろうか

このコメントへの意見(1件): ※9
5

5. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 12:09
  • ID:LQRf1qJv0 #
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昔マレーシアで石器時代から進化していない部族が発見されたけど結局誰かのでっち上げだったっていう事件があったのを思い出した。今回のは壮大な釣りじゃないといいね。

6

6. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 12:27
  • ID:oEd8of8q0 #
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※3
よく知らない自分には学術的に方言と言語の線引を提示してほしいところだね

しかし、原始共産制が色濃く残るコミュニティだなあ

7

7. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 12:34
  • ID:.9.GmrW40 #
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SFやファンタジーの映画やドラマで使う新しい言語を用意するのは
それほど難しくないって聞いたことある
共演者は普通にその作られた言語で日常会話ができるようになるらしい
問題は発音かな

8

8. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 12:48
  • ID:R8wfeiR60 #
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うーん、方言とは違うのかな。近隣で話される言語と、まったく別の言語体系なんだろうか。

9

9. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 13:27
  • ID:QimFM28K0 #
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※4
>>誰もが皆、狩猟採集民として必要な同じ技術を習得することが期待されている。

職業が分化してない社会では普通のこと。無理やり分化したりしたら社会自体が成り立たたなくなる。

10

10. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 14:10
  • ID:LU1iHdDb0 #
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文法とか単語を細かく調べると、彼等のルーツも分かるかも知れないですね。
単なる派生言語では無く、それまでの言語と全く異なる
文法や単語を用いて会話をする人達の中に入っていける学者さん達も凄い勇気が有るよね。

11

11. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 14:18
  • ID:h.lXYBvW0 #
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彼らをこのままにしておいて欲しい

12

12. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 14:26
  • ID:CbLMQDwZ0 #
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厨ニ病をこじらせた奴って言葉や文字作るよな

13

13. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 14:30
  • ID:WuIzHnA30 #
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※3
母音や子音が、変化しただけなんで、言語としては同じ。
ちょっとググったら、こんなのが

eがiに変化した例
 手 te(東京)  ti:(那覇)
 米 kome(東京) kume(那覇)
 酒 sake(東京) saki(那覇)

oがuに変化した例
 星 hosi(東京)  husi(那覇)
 夜 yoru(東京)  yuru(那覇)
 心 kokoro(東京) kukuru(那覇)

14

14. 匿名処理班

  • 2018年03月02日 14:35
  • ID:ad.HEP.z0 #
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最近テレビで見たけどピジン語とかどんどん派生して言語は増え続けているとか
発見以前に発明のほうが多ければ収拾付かなくない?

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