数年前・・・・・
家の近所にラーメン屋がオープンした。
『魚のラーメン』がウリらしい。
珍しいので会社帰りに寄ってみた。
入ると30代の女性が、
「らっしゃ~い」と明るく迎えてくれた。
調理場からは40代の男性が
こちらをジッと見つめていた。
どうやら夫婦で経営しているらしい。
店はガラガラ。
私のほかにお客さんはいないようでした・・・
カウンター席に座り。
わたしは迷わずメニュー表の一番上にある、
魚のラーメンを1杯注文しました。
出てきたラーメンは・・・・
『魚の独特な匂い』はあるものの、
なかなか美味しく頂けました。
(なんでお客さんが居ないんだろうか?)
まぁ商売の事はよくわからない。
ラーメンを食べ終わった頃、
さて帰ろうか・・・と思っていると・・・
「今日はもう店じまいだから、
良かったらコレ・・・・」
と突然おかみさんが、
『何か』を差し出してきた。
おそらく店の残り物だろう。
ギョーザ?カラアゲ?チャーハンだろうか?
しかし・・・差し出されたのは・・・
『白米』だった。
なぜだ?
しかもけっこー盛られてる。
えええ・・・・
上目遣いでおかみさんをチラリと見る。
満面の笑みを浮かべている。
あ~良いことをしちゃったなぁ~
そんなことを思っているのだろう。
その笑顔・・断りづらい。
「ありがとうございます!」
もう・・そう言って食べるしか無かった。
食べ終ったラーメン。
その横に、もりもりの白米。
オカズは無い。
別に腹も減っていない・・・・
(どう処理すればいい?)
おかみさんはどういうつもりで、
この白米を出してきたのか?
考えた・・・・・まさか?!
『ラーメンの残り汁に白米を入れて食え』
そういうことなのか?!
下品である。
いや・・家でカップラーメンに、
白米を入れて食べたことは確かにある。
しかし外食先でそれをやるのか・・・?
では逆にラーメンの残り汁を白米にかけるか?
それも汚いだろう。
そもそもラーメンの汁で
食べる白米は美味しいのか・・・・?
・・・私は悩んだ末に、
白米をそのまま胃に流し込みました。
満腹の状態で、
味の無い白米を食べる辛さよ・・
帰りがけに
「また来てくださいね・・」
そう笑顔で声をかけられたので、
私も「へへっ」と
精いっぱいの笑顔を返しました。
・・・その後すぐ、
店は潰れてしまった。
誰も悪くない。
誰も悪くない。
悪いのは『白米』だ。
白米が悪い。
私が白米を断固拒否していれば・・・
あの店は救われたのかもしれない。
・・・そんな妄想をしてしまう。
店の跡地を見かけると思い出す。
おかみさんの笑顔、盛られた白米。
自分の中の何かが痛む・・
痛むのは胸か?胃か?
それは・・わからない。
おわり