ITmedia NEWS > STUDIO > 世界中の若者が熱狂 自撮りは“口パク動画”の時代...

“日本が知らない”海外のIT:世界中の若者が熱狂 自撮りは“口パク動画”の時代へ

» 2018年03月02日 09時00分 公開
[行武温ITmedia]

 動画共有サービスのVineやSnapchatの流行で人気に火がついたショートムービーは、InstagramやFacebookにも「ストーリー機能」として導入され、多くのユーザーに愛されている。

 中でも、数年前からZ世代(ミレニアル世代の次にあたる1990年代中盤〜2000年代中盤生まれの若者)に人気を集めているのが「リップシンク動画」、つまり「口パク動画」だ。

 音楽に合わせてダンスや口パクする様子を自撮りするリップシンク動画は、セルフィーさえ恥ずかしい人には衝撃かもしれない。

連載:“日本が知らない”海外のIT

日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。

ユーザー数は2億超、リップシンク動画アプリの代表格「Musical.ly」

リップシンク 2014年にローンチされ、世界2億人超のユーザーを獲得している「Musical.ly」(同社のWebサイトより)

 誰でも部屋に1人でいるときに、お気に入りの曲に合わせて歌ったことはあるだろう。その様子を動画に収め、他のユーザーとシェアして楽しむのが、上海発のリップシンクアプリ「Musical.ly」だ。

 動画の撮影・編集・加工・シェア、全てがアプリ内で完結し、作成した動画はMusical.ly以外のソーシャルメディアやメッセンジャーアプリでもシェアできる。

 動画の長さは15秒に設定されているため、シェアされる動画のほとんどは楽曲のサビ部分や特徴的な箇所のみを切り取ったもの。早送りやループ再生といった効果をうまく使った中毒性のあるコンテンツが話題になり、2017年にはユーザー数が2億人を突破した。

 YouTubeやInstagram同様、Musical.lyにもインフルエンサーが存在する。彼らはコメントやハッシュタグを使ってファンと交流している他、YouTuberが音楽動画投稿用にMusical.lyを利用するケースもあるようだ。

 さらに、17年にローンチされたデュエット機能を使えば、自分の動画を他のユーザーの動画と組み合わせ、あたかもデュエットしているかのような動画を作れる。

 歌手のブルーノ・マーズはこの機能を活用し、新曲発表時に「#DanceWithBruno(ブルーノと踊ろう)」というキャンペーンを実施。30万本もの動画が投稿されるなど、アーティストとファンの新しい交流の形として注目を集めた。

音楽 Musical.lyによる「#DanceWithBruno」キャンペーン(Musical.lyのWebサイトより)

映画やドラマ、アニメのワンシーンも口パク

 Musical.lyに類似したアプリには、YouTubeに表示される「ウザい広告」が話題になった、中国発の「Tik Tok」、K-POPアイドルが使い始めたことで人気に火がついた、こちらも中国発の「Kwai」、Musical.lyと同時期にリリースされ、海外セレブの投稿で一気に名前が知れ渡ったドイツ発の「Dubsmash」などがある。機能面では、そこまで大きな違いがないように見える。

 しかし中身を見てみると、例えばDubsmashであれば、あくまで音楽が中心のMusical.lyとは対照的に、ハリウッド映画やNetflixなどで放送されているドラマの音声もデフォルトで用意されている。

口パク Dubsmashでは人気セレブが映画やドラマのいち場面を口パクしている様子も(Dubsmashより)

 一方、Tik TokやKwaiはアジア人のユーザーが多いこともあり、韓流ドラマのワンシーンが音声リストに並んでいる。

 つまり、Musical.lyは「音楽」という大きな括りでターゲットを集めようとする中、他のアプリはユーザーの「共通のバックグラウンド」や「シェアしたくなる欲求」に訴求することで、熱狂的なファンを生み出そうとしていることが伺える。

 リップシンクアプリに限らず、動画プラットフォームの乱立により、クリエイターの獲得戦争が激化していることが背景にあると考えられる。

コミュニティーはますます細分化、ビジネスの非中央集権化も

 以前は、動画を投稿するサイトといえばYouTubeと決まっていた。しかし今では、動画の内容や作成する目的、届けたい相手によって変わってくる。リップシンクアプリもその1つとしての地位を確立しつつある。

 地位が確立されれば、ユーザーコミュニティーがどんどん形成され、その結果、新たなインフルエンサーが生まれていく。実際、Miscal.lyの人気ユーザーは2000万人を超えるフォロワーを獲得しており、人気YouTuberに劣らない収益を稼ぎ出しているようだ。

 今後、もしこの傾向が続けば、新しい人気アプリが登場するたびにコミュニティーはますます細分化していくだろう。だとすれば、広告やモノ・サービスの販売チャネルなど「ビジネスの非中央集権化」も進行していくかもしれない。

執筆:行武温

編集:岡徳之(Livit

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

- PR -

“日本が知らない”海外のIT 連載一覧

次回の掲載をメールで受け取る

日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。

Special

- PR -

「AIは万能だ」──間違った知識を身に付けていませんか? AIの現状をいち早く知ることで、他社に差を付けるチャンスを掴めるかも。ビジネス活用の今がここに

マネジメント経験はないけど、年収を上げるには管理職を目指すしか……そう思っているエンジニアが20~30代のうちに考えておくべきことは?

「2020年までにクラウドでナンバーワンになる」は本当ですか? Oracle Cloudの「強み」「違い」をユーザー視点で聞いてみた。【Shift, Cloud】

ThinkPadの2018年法人向けモデルは、「働き方改革」がテーマだ。基本スペックを強化したほか、スマートオフィス向け製品の新ブランド「ThinkSmart」も登場した

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)に聞いたサイバー攻撃の脅威とは? ビジネス/技術/人の3視点でデジタルトランスフォーメーション【DX】を総力特集

7年ぶりにフルモデルチェンジした新型「日産リーフ」をデーブ・スペクターさんが体験。100%EVならではの加速感や自動運転技術に驚き! 試乗中の動画も必見です

高性能なイメージセンサーとAIが出合うと何が起きるのか。ソニーの裏面照射型CMOSの生みの親と、伊藤穣一氏がAI×イメージセンサーの未来を語った

仮想通貨に投資する投資家が増えている。何が魅力なのか――DMM Bitcoinの社長は「法定通貨と同じ役割を持つ将来」への期待だという。どのような将来だろうか。

楽譜も読めない初心者が、最新電子ピアノで「あの名曲」に挑戦してみた。40代の今からピアノを始めて、いったいどこまで弾けるようになる?

Special

- PR -