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北朝鮮情勢「最終局面」Xデーへのカウントダウンが始まった

米朝どちらも絶対に妥協はしないなら

「次は手荒に」が既定路線か

米国と北朝鮮の駆け引きが激しさを増している。トランプ大統領が会見で「制裁の効果がなければ、次は手荒なものになる」と言い切ると、北朝鮮側は「米国との対話」カードを切ってきた。この後、どうなるのか。

平昌五輪の閉会式に出席するため韓国を訪問した北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談で「米国と対話する十分な用意がある」と表明した。

その後の韓国高官との会談でも、金氏は同様の発言を繰り返している。対話の中身や結論は別にして「対話の意思を伝えたい」のは本気と受け止めていいだろう。だが、肝心の非核化については一切、応じる構えを見せていない。

これに対して、米国は「非核化について話し合う気があるのかどうか、様子を見る」という姿勢だ(https://www.washingtonpost.com/world/national-security/white-house-will-see-if-north-korea-is-serious-about-talks/2018/02/25/d13162a8-1a52-11e8-98f5-ceecfa8741b6_story.html?utm_term=.30dd2dbbf0ba)。トランプ氏は2月26日、ホワイトハウスの会合で「適切な環境の下でなら、我々も対話を望んでいる。そうでなければ対話しない」と語った。

「適切な環境」とは「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」の意思を北朝鮮側が示すことだ。大統領の発言は「非核化の約束がなければ、対話に応じない」姿勢をあらためて明確にした形である。

 

北朝鮮はここへきて、従来の米国非難一辺倒から一見、軟化したかのような変化球を2球続けて投げている。1球目は、平昌五輪の開会式に出席した金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の長女、金与正(キム・ヨジョン)氏が韓国の文大統領に提案した「平壌での南北首脳会談」だった。

これに文氏は「環境を整えて実現しよう」と前のめりで答えてしまった。後になって「性急な感じがする」と軌道修正したが、もともと時間稼ぎが狙いの北朝鮮からすれば、ゆっくり考えてもらえば時間が過ぎていくだけなので、思惑通りの展開である。

一方、米国は首脳会談提案を意に介さず、逆に海運会社など27社、船舶28隻、1個人を狙い撃ちした「史上最大規模」の独自制裁で応じた。

それにとどまらない。冒頭で触れたように、トランプ氏は2月23日の記者会見で「制裁が効かないなら、我々は第2段階に進む。それは非常に手荒で、世界に不幸なものになるだろう」と直截な言い方で圧力をかけた。ずばり「軍事攻撃」を示唆したのだ。

この会見には、オーストラリアのターンブル首相が同席していた。ターンブル氏が大統領の「手荒発言」に驚いた様子をみじんも見せなかった点は注目に値する。2人の首脳の間では強硬方針が完全に共有されている証拠である。

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