エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

ヨーロッパの学生たちはあたりまえのように政治や社会についての話をする


https://twitter.com/Kino_Eesti/status/965676867410898945

ポーランド人「ポーランドでは酒が入るときまって政治の話になる」

わたしはエストニアの大学の正規学生ですが、日常においてはエストニア人よりもむしろ他のヨーロッパ諸国からの留学生たちとの交流のほうが多いかもしれません。特に今年度からインターナショナル・クラブのメンバーとしての仕事をしているので、最近いっしょに遊びに出かけるのはもっぱらエラスムス奨学生としてエストニアに留学しているヨーロッパ人学生たちです。

で、昨晩は仲良くしているチェコ人学生の誕生日のお祝いのために、20人くらいでタリン旧市街のバーに集まって深夜まで飲んでいたんですよ。人数が多いのでいくつかテーブルを移動しながら会話を楽しんだのですが、イタリア人女子1人とポーランド人女子4人でなにやら盛り上がっているのを見つけたので、

「楽しそうだけど何の話をしてんの?」

と話しかけたんですね。そうしたら、

「今度イタリアで総選挙があるでしょ? その話をしているの」

という答えが返ってきました。イタリア人女子は現在のイタリアの政治情勢―どの党が左翼でどの党が右翼で、議会勢力はこんな感じで―みたいな話を続けて、一同さらに盛り上がっていました。話が一区切りついたところで、

「こっちに来て気づいたんだけど、ヨーロッパの人たちは学生でも政治や社会の話をするんだよね。日本の大学生の飲み会で選挙の話なんか始めたら頭おかしいと思われるよ(笑)」

と驚いてみせたら、ポーランド人女子の1人がこんなことを言っていました。

「ポーランドだったら、みんな酒が入ったら必ずといっていいほど政治の話になって、それから延々と議論が続くよ(笑)」

この「ヨーロッパの学生たちは政治や社会問題などについての話をごくあたりまえにする」という話は、これまでにもヨーロッパへの留学経験があったり、ヨーロッパの学生と交流したことがある人たちがさんざん指摘してきたことなので、わたしが改めて言うまでもないことかもしれないですけどね。ただ、やはり実際にヨーロッパまで来てみて学生たちと付き合ってみると、政治や社会問題との距離感が日本とは全然違うんだなということを痛感します。

わたしがエストニアで出会ったある日本人留学生も、やはり「こちらの学生はあたりまえのように国際政治なんかの話をしていて、日本とは違うなあと思った」と言っていました。友達からもそういう話を振られることがあるけれど、こんなの日本では考えられないと。「トランプがどうとか、移民問題がどうとか、留学しなかったらそういった話題について考えることもなかっただろうなあ(笑)」という言葉が印象的でした。

ほかにも何人かの日本人学生たちに、日本の政治とか政党などについて軽く質問してみたところ、このような答えが返ってきました。

  • 日本に「自民党」「民進党」「共産党」などの政党があることは知っている
  • ただし、どの政党がどのような主張をしているのかは知らない
  • 「右/左」だとか「保守/革新」だとか言われても、よくわからない

彼らは日本の有名大学に在籍し、英語を問題なく話し、奨学金を勝ち取ってエストニアの国立大学に交換留学に来ている優秀層なのですが、政治や社会問題についての意識となると、ヨーロッパの学生たちとは結構な差が存在するようです。

ナチスも鉤十字も知らない日本人にびっくり

政治や社会の話題というのは必ずしも国内の問題に限りませんよね。インターネットを通じて世界が一体化してしまった今日、国際政治や歴史認識についてあまりに知識が乏しいと、海外の人からも呆れられてしまいます。

前述の誕生日飲み会に行った前日なのですが、エストニア人の友人がフェイスブックで次の動画を紹介しているのを見つけました。

www.youtube.com

彼女は日本への留学経験があって日本語も堪能というエストニア人で、このポストにコメントしていた人の多くも日本についての知識がある人たちのようでしたので、「卍(まんじ)が現在でもめでたいサインとして日本で使われており、それはナチスの鉤十字とは全く関係がない」ことに関してはかなり理解を示してくれているようでした。それよりも、彼らが驚いていたのは、

「自国がかつでナチス・ドイツの同盟国だったことを知らないどころか、ナチスも鉤十字も全く知らない日本人が普通に存在すること」

のようでした。あるエストニア人はこのようなコメントを残していました。

「最初は彼らの無学ぶりに驚いたけれど、これはやはり知識量の問題なのでは? ヨーロッパやアメリカでは日本によるアジアへの残虐行為について教わるから…」

先にことわったとおりこれは歴史認識の話であって、政治への無関心とは少し別の問題かもしれませんが、根底にあるものは同じではないかと思います。

「不満があっても決して政治や社会のせいにしない日本人スゲー!」

…ただ、こういう話を日本の人に向けて話しても、どれだけわかってもらえるのかなあというのはありますね(笑)

冒頭で紹介したわたしのツイートに対して、このようなリプライがありました。

 おそらく、

「ヨーロッパの真似なんかしなくていい! 日本人は確かに政治には無関心だ。だが、それがいいのだ!」

みたいなことを言いたいんだと思います。

(なお、わたしはラトビアには行ったことがありません)

この手の人たちって、

「ヨーロッパの連中は、なんでも政治や社会のせいにして、不満があるとデモをやったりする。1日8時間労働で夏休みもたっぷり取っているくせに、まだ『労働者の権利がー』などと主張する。自分の不満を社会のせいにしたりせず、お国や企業が決めたことに素直に従う日本人のほうが偉い!」

みたいなことをわりと本気で思っていたりしますから。たしかに、為政者や経営者の立場からすれば日本は天国でしょうね。ヨーロッパの人たちと違って、日本人なら手荒く扱っても大して文句は言ってこないわけで。でもそれってそんなに誇るべきことなんでしょうかね?

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(エストニア独立100周年を祝う人々)