福島第1原発は今 3.11 間もなく7年 復興なお遠く
2018年02月28日
中間貯蔵施設の建設地に、幾重にも遮水シートを敷く作業員(福島県大熊町で)
 東京電力福島第1原子力発電所事故の発生から7年となる3月11日を前に、日本記者クラブの共同取材で原発構内と福島県内の帰還困難区域に入った。原発構内は、防護服を着けず行動できるまでに整備が進んだ一方で、原発周囲は震災当時のまま放置され、民家も田畑も荒れ果てていた。核燃料の取り出しと廃炉、除染土壌など放射性廃棄物の最終処分は、いまだに見通しが立っていない。原発災害からの復興は、遠く先にある。(福井達之)
 
第1原発、通称1F(いちえふ)。汚染水を貯蔵する巨大なタンク群が見渡す限りに立ち並び、無数の配管が縦横に走る。放射性物質の飛散を防ぐため、地面までモルタルで固められた“灰色の世界”を、作業員や工事車両が行き交う。事故から7年。今も連日5000人の作業員がここに通い、崩壊した施設の改修と廃炉作業を続けている。
記者たちを乗せたバスが高台に停車すると、目の前に巨大な原子炉建屋が現れた。鉄骨がむき出しになった1号機。眼下に防護服の作業員が動き回る。遠隔操作のクレーンが、建屋内のがれき撤去を進めていた。一行は防護服を着ずに、防じんマスクと軍手だけで100メートルほどの至近に立った。東電の案内役が「構内の95%は一般の服装で作業できます」と繰り返した。
着実に構内の環境整備は進んではいても、課題は山積する。建屋に地下水や雨水が流れ込み、汚染水はなお増え続けている。一時貯留するタンクは構内を埋め尽くし、今も「1日500トンのペースでタンクを増設中」(東電広報)。国の委員会が処理方法を検討するものの、「どの選択肢を取っても“風評”は避けられない」(同)のが現実だ。
年内にも使用済み核燃料の取り出しが始まる。しかし、原子炉内に人は入れず、溶け落ちた核燃料(デブリ)はその状態さえ把握できない。原子炉の解体、廃棄物の最終処分など今後の見通しは立っていない。世界で経験のない大事故とあって、未知の領域は数知れない。30、40年後を目指す廃炉への道は、遠く険しい。
 
作業員が行き交う原発構内の騒がしさをよそに、隣接する大熊、双葉両町の帰還困難区域は荒野と化し、静まり返っていた。田畑にススキや低木が生い茂り、軽トラックにツタが絡み付く。人影のない民家の縁側には、あの日のまま、子どものおもちゃが残されていた。原発事故が、そこに住む人々の日常を奪った。
区域内では、各所で土木工事が進んでいた。中間貯蔵施設の建設だ。高さ10メートルの堤で囲んだ貯蔵地に、ダンプカーが土煙を上げながら出入りする。出入り口に車両を誘導する警備員がマスク姿で立つ。建設予定地では、白い防護服を着た作業員が土木工事を続けていた。
施設一帯を案内した環境省の責任者は「除染された原発構内より、(除染が行き届かない)道端に立つ警備員の方が被ばく量が多いこともある」と説明した。
ここでは、除染土壌などの放射性廃棄物を県内各地の仮置き場から集約し、最終処分するまで30年間を上限に保管する。貯蔵量は、東京ドームの容量の13~18倍に相当する推計1600万~2200万立方メートル。原発周囲の約1600ヘクタールを国が買い取り、分別施設や埋め立て地、廃棄物貯蔵施設を建設する計画だ。
事業を担う同省は、全国へ避難を強いられた2300人を超す地権者を個別に当たり、民有地の6割強に当たる約800ヘクタールで利用の合意を取り付けた。今秋から一部で貯蔵に着手し、東京五輪・パラリンピックが開かれる20年度には、住宅や学校などの身近な場所や、幹線道路沿いの仮置き場からの廃棄物撤去を目指している。
中間貯蔵施設は除染土壌などを「当面の間」管理する場所として原発が立地する大熊、双葉両町の帰還困難区域に設置される。廃棄物は貯蔵開始から30年以内に県外で最終処分することが法で規定されている。しかし「現時点で最終処分の方法を明らかにすることは困難」(同省)なのが実情だ。
人の立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域。周辺は震災前、水田や梨園が広がっていたという。現場を案内した同省の担当者は「きれいな自然の中に、廃棄物の処理場が造られる」とジレンマを隠さない。
かつての田園風景は戻らない。
 
東北農政局によると、福島県内で震災と原発事故により営農を休止した農地は約1万8000ヘクタール(11年12月時点)に及ぶ。農地の除染や避難指示の解除が進んだものの、営農再開は16年度で4000ヘクタール強にとどまる。県の農業産出額は16年に2077億円と、震災前の約8割に落ち込んでいる。双葉町、大熊町、浪江町を中心とした帰還困難区域にある農地2400ヘクタールは作付けできず、地域農業復興の足かせとなっている。
    95%防護服不要 構内 廃棄物処理 重く
第1原発、通称1F(いちえふ)。汚染水を貯蔵する巨大なタンク群が見渡す限りに立ち並び、無数の配管が縦横に走る。放射性物質の飛散を防ぐため、地面までモルタルで固められた“灰色の世界”を、作業員や工事車両が行き交う。事故から7年。今も連日5000人の作業員がここに通い、崩壊した施設の改修と廃炉作業を続けている。
記者たちを乗せたバスが高台に停車すると、目の前に巨大な原子炉建屋が現れた。鉄骨がむき出しになった1号機。眼下に防護服の作業員が動き回る。遠隔操作のクレーンが、建屋内のがれき撤去を進めていた。一行は防護服を着ずに、防じんマスクと軍手だけで100メートルほどの至近に立った。東電の案内役が「構内の95%は一般の服装で作業できます」と繰り返した。
着実に構内の環境整備は進んではいても、課題は山積する。建屋に地下水や雨水が流れ込み、汚染水はなお増え続けている。一時貯留するタンクは構内を埋め尽くし、今も「1日500トンのペースでタンクを増設中」(東電広報)。国の委員会が処理方法を検討するものの、「どの選択肢を取っても“風評”は避けられない」(同)のが現実だ。
年内にも使用済み核燃料の取り出しが始まる。しかし、原子炉内に人は入れず、溶け落ちた核燃料(デブリ)はその状態さえ把握できない。原子炉の解体、廃棄物の最終処分など今後の見通しは立っていない。世界で経験のない大事故とあって、未知の領域は数知れない。30、40年後を目指す廃炉への道は、遠く険しい。
周辺地域 ツタ絡む軽トラ 戻らぬ田園風景
作業員が行き交う原発構内の騒がしさをよそに、隣接する大熊、双葉両町の帰還困難区域は荒野と化し、静まり返っていた。田畑にススキや低木が生い茂り、軽トラックにツタが絡み付く。人影のない民家の縁側には、あの日のまま、子どものおもちゃが残されていた。原発事故が、そこに住む人々の日常を奪った。
区域内では、各所で土木工事が進んでいた。中間貯蔵施設の建設だ。高さ10メートルの堤で囲んだ貯蔵地に、ダンプカーが土煙を上げながら出入りする。出入り口に車両を誘導する警備員がマスク姿で立つ。建設予定地では、白い防護服を着た作業員が土木工事を続けていた。
施設一帯を案内した環境省の責任者は「除染された原発構内より、(除染が行き届かない)道端に立つ警備員の方が被ばく量が多いこともある」と説明した。
ここでは、除染土壌などの放射性廃棄物を県内各地の仮置き場から集約し、最終処分するまで30年間を上限に保管する。貯蔵量は、東京ドームの容量の13~18倍に相当する推計1600万~2200万立方メートル。原発周囲の約1600ヘクタールを国が買い取り、分別施設や埋め立て地、廃棄物貯蔵施設を建設する計画だ。
事業を担う同省は、全国へ避難を強いられた2300人を超す地権者を個別に当たり、民有地の6割強に当たる約800ヘクタールで利用の合意を取り付けた。今秋から一部で貯蔵に着手し、東京五輪・パラリンピックが開かれる20年度には、住宅や学校などの身近な場所や、幹線道路沿いの仮置き場からの廃棄物撤去を目指している。
中間貯蔵施設は除染土壌などを「当面の間」管理する場所として原発が立地する大熊、双葉両町の帰還困難区域に設置される。廃棄物は貯蔵開始から30年以内に県外で最終処分することが法で規定されている。しかし「現時点で最終処分の方法を明らかにすることは困難」(同省)なのが実情だ。
人の立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域。周辺は震災前、水田や梨園が広がっていたという。現場を案内した同省の担当者は「きれいな自然の中に、廃棄物の処理場が造られる」とジレンマを隠さない。
かつての田園風景は戻らない。
営農再開2割強
東北農政局によると、福島県内で震災と原発事故により営農を休止した農地は約1万8000ヘクタール(11年12月時点)に及ぶ。農地の除染や避難指示の解除が進んだものの、営農再開は16年度で4000ヘクタール強にとどまる。県の農業産出額は16年に2077億円と、震災前の約8割に落ち込んでいる。双葉町、大熊町、浪江町を中心とした帰還困難区域にある農地2400ヘクタールは作付けできず、地域農業復興の足かせとなっている。
おすすめ記事
                    「富富富」
                     「富富富」。「ふふふ」と読む▼今秋デビューする米どころ富山県の新しい品種である。機会あって試験栽培したのを味わった。口中に広がる、さっぱりとして甘味のあるおいしさ。三つの富である「水、大地、人」を象徴した名は、平仮名にするとなお風情が増す。味にうるさい連れ合いも、一口食べて、「ふ、ふ、ふ」。いつもより食が進み人気を予感した▼全国の産地が売れる米の開発にしのぎを削る。食味や耐病性に優れた品種の育成に加え、消費者の記憶に残るネーミングにも知恵を絞る。年間10近い新品種が登場する。長く王座にいる「コシヒカリ」を超える次代の米が現れるか。生産調整も変わり、本格的な産地間競争が待ち受ける。互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、全体の消費の拡大につながることに期待したい▼都道府県の米の育種や普及を支えてきた主要農作物種子法は4月1日からの廃止が決まった。政府は民間参入を促すためと強調するが、「主食」のタネは公的機関がきちんと責任を持つのが筋だろう。日本で生産される稲の品種は300ともいわれる。大事な遺伝資源が海外に流出しては食料主権を脅かす▼需要に応じた米作りが進む。食味の良さとインパクトのある名称が売れ行きを左右する。ますます競争原理にさらされる時代である。
                     
                        2018年02月24日
                                    
            
                    循環型農業の試み 価値高め一石三鳥も 早稲田大学公共経営大学院教授 片山善博
                     このところ、廃棄物を有効活用して地域振興に役立てる事例をよく耳にする。これまで捨てていた物が創意と工夫によって有価物に変わる。廃棄のコストを削減できるだけでなく、新たに商品価値を有する物が生まれるのだから一石二鳥である。
 
町ぐるみ肥料化
 これは日本農業新聞でも取り上げられた岡山県の事例だが、養殖から出る大量のカキ殻を処理して田の肥料にする。ミネラルが豊富だから品質のいい米ができるという。漁業者はカキ殻の廃棄コストが不要になり、農家では肥料代が減るだけでなく収穫した米がより高く販売できれば、一石三鳥になる。
 先日大雪の中、京都府与謝野町を訪れた。ここはビール原料のホップ栽培のことが本紙に取り上げられていたのが記憶に新しい。その与謝野町の山添藤真町長から伺ったのが、町内で製造する天然素材の有機肥料のことである。
 豆腐工場から出るおから、それに米ぬかと魚のあらを混ぜて肥料にして、農家に供給している。おからと米ぬかはともかく、魚のあらはそれまで廃棄されていたもので、それが良質の肥料になる。
 その肥料で育てた小松菜から作ったドレッシングは栄養豊富でとてもおいしい。その上、肥料の由来まで知れば、感慨ひとしおである。
 実は、筆者も個人的に食品廃棄物を有効活用している。もっぱらコーヒーとお茶の出し殻で、わが家ではこれらをごみ収集に出すことなく、全て「ベランダ農園」のプランターに還元する。
 それ以外に、ブドウやかんきつ類の皮、卵の殻、砕いた貝殻、それに米のとぎ汁など食物残さが肥料になる。
 昨年栽培した作物は、青ジソ、トマト、シシトウ、トウガラシ「鷹(たか)の爪」、ナス、それにヤマイモである。子どもの頃、農業をやっていた祖母から野菜作りの手ほどきを受けていたので、それを思い出しながらの試行錯誤だが、いずれも隆々と元気に育ってくれた。
 青ジソは、毎朝数枚を摘み取って食卓に上る。終盤にヨトウムシの被害に悩まされたが、農薬を使わないのだからやむを得ない。トマトは、こんなにおいしいのは他にないと自慢できるほどの出来栄えだった。
 「鷹の爪」は多年生の木に成長し、赤い実が鈴なりである。知り合いに配ってあげると喜ばれる。ヤマイモの生い茂った葉は夏の日よけになる。もちろん芋の味は格別である。
 
工夫の余地多く
 コーヒーの出し殻だけを厚く敷き詰めたプランターにきのこがニョキニョキと生えてきた。
 ちょうどきのこを夏休みの自由研究のテーマにしていた中学生の孫娘が写真を専門家に見せたところ、ヒトヨタケの仲間で食用になるとのことだった。それなら、コーヒーの出し殻は菌床になるのではと、素人の夢は膨らむ。
 ともあれ、これまで無造作に捨てていた食物由来廃棄物をできるだけ肥料として有効活用してみてはどうか。それが土地を介して循環し、良質な農産物に生まれ変わるし、ごみの減量化にもつながる。
 実際の農業でも家庭菜園でも、またベランダ農園でも、それぞれの領域で工夫の余地は大いにあるように思う。
<プロフィル> かたやま・よしひろ
 1951年岡山市生まれ。東京大学法学部卒、自治省に入省し、固定資産税課長などを経て、鳥取県知事、総務相を歴任。慶應義塾大学教授を経て2017年4月から現職。『民主主義を立て直す 日本を診る2』(岩波書店)など。                    
                        2018年02月26日
                                    
            
                    [緊急インタビュー 針路を問う 5] 元農相 鹿野道彦氏 農を国政の中心に 農水省“現場”はどこか
                     農水省が今、農水省の役目を果たしていない。生産現場の声を抜きにして政策が決まっている。何かあった時に農家を守るのは、政府内に農水省と農相しかいないんだ。農相時代の部下に「国益とは地域を守ること」と言った男もいた。今は一体、何を守ろうとしているの。首相官邸か? 農水省の言う“現場”は今、官邸にあるのか?
 「攻めの農政」との言葉を初めて使ったのは安倍晋三首相の父・晋太郎先生が農相だった時だ。私はさらに踏み込んで「攻撃型農政」と言ったが、その根底にあり、農政で一番大事なのは現場主義、御用聞きだ。政治家や役人、学者が農業をするわけじゃないんだから。
 なのに農水省はこのありさまで、規制改革推進会議の主要メンバーは偏っている。現場の声より、もっと大きな声を聞いている。資本主義では、恵まれる者が我慢せず、恵まれない者が我慢する。これを是正するのが政治じゃないのか。
 自民党の農林族も、黙って見ているだけなのかね。寂しいですよ。私が自民党にいた頃の農林部会なんて150人ぐらい集まって、がんがん議論した。ハマコー(故・浜田幸一元衆院議員)とかが怒鳴るし、めちゃくちゃな要求もあった。大蔵省の主計官で一番骨っぽい男が農林担当。でないと、務まらなかった。
 農林族の幹部はひな壇に座り、泥をかぶりながらうまく調整していた。羽田孜さんとか、江藤隆美さんとかね。そういう人が今はいないだろうし、必要もないんじゃないの。官邸の方針であれば「そうですか」。議員が物を言わないから。
 加藤紘一さん以降、真の農林族はいなくなったのかもな。山形県選出の議員同士、やるかやられるかのけんかをしてきた仲だけど、腹の中ではお互い何を考えているか分かっていた。環太平洋連携協定(TPP)反対の象徴でもあった。私は民主党での農相当時、TPPに慎重な姿勢だったが、彼の存在は心強かった。
 農林族だけじゃない。自民党全体が物を言わず、行動もしない。総裁選で「禅譲」なんて過去に例がないのに、安倍さんから分捕る気概がある人はいない。そんな所からは活力も知恵も出ない。
 野党も野党だ。どことくっつくとか、自民党の批判だけしても、国民に理解されない。国会での質問時間が足らないと言う前に、国民から「もっと野党に質問させろ」と言われるくらいの質問をしなきゃ。
 国会の代表質問や予算委員会で、農業の質問が少な過ぎるんだ。問題が起きた時に騒ぐだけ。政府や国会ばかりじゃない。国民全体が第1次産業の大事さを知らずに、恩恵だけ享受している。
 私はいつも、農政を国政の真ん中に据えるべきだと言ってきた。他産業は海外に移転できても、農業は移転できない。6次産業化を進めれば地域に雇用が生まれる。一方で、一度やめてしまったら元に戻すのは難しい。農業の危機は地域の危機、日本の危機なんだ。(聞き手・岡部孝典)(おわり)
<プロフィル> かの・みちひこ
 1942年山形市生まれ。学習院大卒。76年衆院選で自民党から出馬し初当選。2012年まで11期務めた。89年に40代で農相で初入閣し、将来の総裁候補ともいわれたが94年に離党。民主党政権でも農相を務めた。通算在任期間は、旧農林省から農水省に改称後としては歴代2位。76歳。                    
                        2018年03月01日
                                    
            
                    18年産水田転作動向 備蓄米減少目立つ 輸出用増も規模小さく
                     農水省が1月末現在でまとめた、2018年産の転作作物の作付け動向によると、前年実績と比べて、政府備蓄米を減少傾向とする産地が目立った。18年産から備蓄米への助成金がなくなったこともあり、価格が回復基調の主食用米に切り替える動きが進んでいるとみられる。一方、政府がてこ入れする輸出用米は多くの産地で増加傾向となった。だが、規模は依然小さく、いかに本格軌道に乗せるかが課題になる。
                     
                        2018年02月28日
                                    
            
                    熟成が必要なのは
                     熟成が必要なのは酒やチーズに限らない。知識もしかりである▼詰め込み過ぎは身に付くものではない。試験前の一夜漬けはその最たるもの。試験が終わると、すっかり忘れてしまう。それだと、新しいものを作り出す“知の土壌”とはならない。言語学者の外山滋比古さんは『思考の整理学』(ちくま文庫)で「頭の中の醸造所で、時間をかける」ことの重要性を説く▼大事なのは余裕。漢字の忙は、頭の中にいろいろと入り過ぎて混乱し、落ち着かない状況を指す。これでは、新しい発想など出っこない。人工知能(AI)の発達で、より高度な発想が求められる時代である。考える時間が持てるような働き方改革が必要となる▼新聞の「首相動静」を見て、安倍晋三首相の面会の多さに驚く。重要案件が多いこともあるが、あの量を記憶にとどめることは至難だろう。「働き方改革」一括法案で国会答弁を撤回するなどは、役人が用意したずさんなデータで作られた答弁書の“棒読み”による墓穴ではないか。何となく言葉に重みが感じられなくなった首相に必要なのは、知の熟成なのかもしれない▼英国の哲学者ホワイトヘッドが残した言葉は至言である。「あまりに多くのことを教えるなかれ。しかし、教えるべきことは徹底的に教えるべし」                    
                        2018年02月27日
                                    
            地域の新着記事
                    福島第1原発は今 3.11 間もなく7年 復興なお遠く
                     東京電力福島第1原子力発電所事故の発生から7年となる3月11日を前に、日本記者クラブの共同取材で原発構内と福島県内の帰還困難区域に入った。原発構内は、防護服を着けず行動できるまでに整備が進んだ一方で、原発周囲は震災当時のまま放置され、民家も田畑も荒れ果てていた。核燃料の取り出しと廃炉、除染土壌など放射性廃棄物の最終処分は、いまだに見通しが立っていない。原発災害からの復興は、遠く先にある。(福井達之)
 
95%防護服不要 構内 廃棄物処理 重く
 第1原発、通称1F(いちえふ)。汚染水を貯蔵する巨大なタンク群が見渡す限りに立ち並び、無数の配管が縦横に走る。放射性物質の飛散を防ぐため、地面までモルタルで固められた“灰色の世界”を、作業員や工事車両が行き交う。事故から7年。今も連日5000人の作業員がここに通い、崩壊した施設の改修と廃炉作業を続けている。
 記者たちを乗せたバスが高台に停車すると、目の前に巨大な原子炉建屋が現れた。鉄骨がむき出しになった1号機。眼下に防護服の作業員が動き回る。遠隔操作のクレーンが、建屋内のがれき撤去を進めていた。一行は防護服を着ずに、防じんマスクと軍手だけで100メートルほどの至近に立った。東電の案内役が「構内の95%は一般の服装で作業できます」と繰り返した。
 着実に構内の環境整備は進んではいても、課題は山積する。建屋に地下水や雨水が流れ込み、汚染水はなお増え続けている。一時貯留するタンクは構内を埋め尽くし、今も「1日500トンのペースでタンクを増設中」(東電広報)。国の委員会が処理方法を検討するものの、「どの選択肢を取っても“風評”は避けられない」(同)のが現実だ。
 年内にも使用済み核燃料の取り出しが始まる。しかし、原子炉内に人は入れず、溶け落ちた核燃料(デブリ)はその状態さえ把握できない。原子炉の解体、廃棄物の最終処分など今後の見通しは立っていない。世界で経験のない大事故とあって、未知の領域は数知れない。30、40年後を目指す廃炉への道は、遠く険しい。
 
周辺地域 ツタ絡む軽トラ 戻らぬ田園風景
 作業員が行き交う原発構内の騒がしさをよそに、隣接する大熊、双葉両町の帰還困難区域は荒野と化し、静まり返っていた。田畑にススキや低木が生い茂り、軽トラックにツタが絡み付く。人影のない民家の縁側には、あの日のまま、子どものおもちゃが残されていた。原発事故が、そこに住む人々の日常を奪った。
 区域内では、各所で土木工事が進んでいた。中間貯蔵施設の建設だ。高さ10メートルの堤で囲んだ貯蔵地に、ダンプカーが土煙を上げながら出入りする。出入り口に車両を誘導する警備員がマスク姿で立つ。建設予定地では、白い防護服を着た作業員が土木工事を続けていた。
 施設一帯を案内した環境省の責任者は「除染された原発構内より、(除染が行き届かない)道端に立つ警備員の方が被ばく量が多いこともある」と説明した。
 ここでは、除染土壌などの放射性廃棄物を県内各地の仮置き場から集約し、最終処分するまで30年間を上限に保管する。貯蔵量は、東京ドームの容量の13~18倍に相当する推計1600万~2200万立方メートル。原発周囲の約1600ヘクタールを国が買い取り、分別施設や埋め立て地、廃棄物貯蔵施設を建設する計画だ。
 事業を担う同省は、全国へ避難を強いられた2300人を超す地権者を個別に当たり、民有地の6割強に当たる約800ヘクタールで利用の合意を取り付けた。今秋から一部で貯蔵に着手し、東京五輪・パラリンピックが開かれる20年度には、住宅や学校などの身近な場所や、幹線道路沿いの仮置き場からの廃棄物撤去を目指している。
 中間貯蔵施設は除染土壌などを「当面の間」管理する場所として原発が立地する大熊、双葉両町の帰還困難区域に設置される。廃棄物は貯蔵開始から30年以内に県外で最終処分することが法で規定されている。しかし「現時点で最終処分の方法を明らかにすることは困難」(同省)なのが実情だ。
 人の立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域。周辺は震災前、水田や梨園が広がっていたという。現場を案内した同省の担当者は「きれいな自然の中に、廃棄物の処理場が造られる」とジレンマを隠さない。
 かつての田園風景は戻らない。
 
営農再開2割強
 東北農政局によると、福島県内で震災と原発事故により営農を休止した農地は約1万8000ヘクタール(11年12月時点)に及ぶ。農地の除染や避難指示の解除が進んだものの、営農再開は16年度で4000ヘクタール強にとどまる。県の農業産出額は16年に2077億円と、震災前の約8割に落ち込んでいる。双葉町、大熊町、浪江町を中心とした帰還困難区域にある農地2400ヘクタールは作付けできず、地域農業復興の足かせとなっている。                    
                        2018年02月28日
                                    
            
                    ビル街に “春だより”
                     高層ビルの谷間に花畑出現──。JR大阪駅(大阪市北区)近くの庭園「うめきたガーデン」で、「真冬のチューリップ祭」が開かれており、赤やピンクのじゅうたんを敷き詰めたような光景が広がっている。
 目玉の「アイスチューリップ」は球根を冷蔵し通常より2カ月ほど開花時期を早めており、来場者は一足早い春の訪れを感じていた。75アールの広い園内にはスイセンやクリスマスローズ、ノースポールなど約100種類、12万本余りが咲き誇っている。
 友人と記念撮影を楽しんでいた大阪府在住の会社員、堀越優奈さん(20)は「きれいなチューリップを撮りSNS(インターネット交流サイト)にアップし、みんなに見てもらいたい」と顔をほころばせた。3月18日まで。2万~3万人の来場を見込む。(前田大介)                     
                        2018年02月25日
                                    
            
                    [活写] 立派に実って
                     福島県伊達市の果樹農家、加藤和雄さん(69)方でハウス栽培の桃の花が満開となり、授粉作業が進んでいる。加藤さんはJAふくしま未来管内で唯一、桃のハウス栽培に取り組む。5アールのビニールハウスで早生の「はつひめ」など4品種、15本をボイラーで加温。露地物より1カ月半早い5月中旬に収穫を始める。
 ほぼ例年通りの今月10日に開花し、妻のみつ子さん(67)と2人で、梵天(ぼんてん)で花に花粉を付ける作業に打ち込んでいる。授粉は今週末までに終える予定。加藤さんは「今年は均等に花が咲いた。立派に実ってほしい」と期待する。(木村泰之)                    
                        2018年02月23日
                                    
            
                    「報道されない福井の現状」 動画再生50万回超 豪雪に苦しむ「今」発信 農業系人気ユーチューバー
                     インターネット動画サイト「ユーチューブ」に動画を投稿する福井市の“農業系”ユーチューバー、勝村和央(愛称=カズ)さん(34)が、雪害の様子とふるさと納税を呼び掛けた動画を投稿、15~19日の再生回数は50万回を超えた。37年ぶりの記録的豪雪で被害を受けた福井市などのふるさと納税件数の増加の一助となっている。
 
ふるさと納税件数倍増 
 カズさんは約130万人を上回るチャンネル登録者数を持つ、国内屈指の人気ユーチューバーだ。飾らない人柄と福井弁が特徴で、これまで農作業や農村での小民家再生、DIY(日曜大工)の様子などを投稿。ナスやジャガイモなどの栽培にも取り組む。
 動画は、雪害の爪跡が残る福井の今を伝えようと、13日に撮影。「テレビで放映されなくなった福井の現状」と題し、11分39秒でまとめた。内容は、道路や歩道の除雪が滞っている状況や、食料品店やガソリンスタンドが復旧し始めた様子など、カズさんが雪の中を自ら歩きレポート、ふるさと納税の方法を周知し締めくくる。
 カズさんは「福井の現状と合わせて、あまり自分の懐を痛めず、ピンポイントで納税できる方法を知ってほしかった」と投稿した狙いを話す。
 雪害復旧支援に充てるため、県内の9自治体(福井県、福井市、勝山市、鯖江市、あわら市、越前市、坂井市、南越前町、永平寺町)は9~14日に、インターネットサイトなどを通じふるさと納税を開始した。
 このうち、福井市に納税した人が書き込める応援メッセージには「カズさんの動画を見て寄付しました」といった同様の書き込みが、15~19日で18件あり、全体の6分の1を占めた。
 それに伴い 納税件数も増加。15~19日に1日平均約70件で、11~14日の1日平均と 比べ倍近く伸びた。納税額も同様で、15日以降(19日まで)は、11~14日の1日平均より20万円余り増えた。21日現在の同市の納税額は約800万円、9自治体合計は約2500万円となった。
 市まち未来創造室は「『カズさんの動画を見た』との書き込みが目立ち、納税者も増えている。市としてはありがたい限りだ。この動画で支援の輪が一層広がってほしい」と期待を寄せる。
 カズさんは「五輪期間中の今、福井豪雪に対する報道が少なくなるのは仕方ない。これ以上関心が薄れないよう、できる範囲で福井の現状を伝えたい」と意気込む。 (前田大介)                    
                        2018年02月22日
                                    
            
                    復旧阻む 雪雪雪・・・福井
                     記録的な大雪に見舞われた福井県では、農道や細い道路の除雪が追い付かず、降り始めから10日以上たった16日も、被害を受けたビニールハウスなどに近づくことさえできない状況だ。果菜類の定植や水稲の育苗などを控えるハウスも多い中、先の見通しがつかない。昨秋の台風や1月の大雪による影響も尾を引いており、経営に追い打ちをかけかねない。今後も被害拡大が見込まれ、人手や資材の確保ができるのか。農家は不安を募らせている。
 
ハウス近づけぬ 園芸産地に打撃
 一面雪に覆われた丘陵地が広がる同県あわら市。5日から降り積もった雪は、高さ約3メートルのハウスの屋根近くまでを埋め尽くす。475戸が所属する花咲ふくい園芸組織協議会の上出儀作会長は「50年以上農業を続けてきたが、こんな雪は初めて。24時間で1メートル以上積もり、雨でいえば集中豪雨のような雪だった」と振り返る。自身のハウスの一部でも被害があった。周辺の積雪で近づくこともできないという。
 県内最大の園芸地帯を抱える地元のJA花咲ふくいでは、確認できた園芸用のハウスだけで約200棟がほぼ全壊。3月以降にはメロンなどの定植作業が控えるが、倒壊したハウスの再建を間に合わせるのは難しい状況だ。昨年10月の台風でも、65棟の倒壊を含む計312棟で被害が出た。その復旧半ばで、被害が重なった。
 上出会長は「年間計画が狂えば、産地全体の問題になる。高齢の農家の離農にもつながりかねない」と懸念し、ハウスの撤去にかかる人手や資材などの支援の必要性を強調する。JAは「露地品目に転換してもらうなどして何とか所得を確保したい。まずは状況を確認し、見舞金などの支援を検討していく」(園芸振興課)とする。
 
除雪や状況調査 県、JA懸命に
 影響を最小限に食い止めようと、県内の各JAや行政の職員らは、被害状況の調査や除雪支援などを懸命に続けている。約130センチの積雪を記録した越前市では、2年前に建てたばかりという耐雪性のハウスも押しつぶされた。急激に降り積もった影響で雪がやんだ後もハウスに近づけず、重みを増した雪で数日たってから倒壊する例も多いという。
 鯖江市や越前市などを管内とする丹南農林総合事務所とJAたんなん、JA越前たけふなどは、合同チームをつくり、9日から休日を返上して、作業に徹している。ただ、農道に降り積もった雪が被害状況の確認や復旧作業を阻んでいる。
 農水省によると、県内の園芸施設共済の加入率は51・8%(2016年度)だが、共済金の支払いには、まず現地での被害状況の確認が必要となる。
 
全半壊654棟 堆肥舎も
 県によると、農業被害(15日午後5時現在)がパイプハウスの全半壊で654棟、堆肥舎の倒壊で1棟確認されているが、今後も被害件数は拡大する見込みだ。農業生産や組合員の生活の再建に向け、JA福井県五連の雪害対策本部は、被害状況の把握と、人手や資材の確保など、必要な支援に努めていく構えだ。(斯波希)                    
                        2018年02月17日
                                    
            
                    ハウス被害1500件超 2月の大雪 農作物にも
                     今月4日からの大雪で、農水省は14日、同日午後3時現在、農業用ハウスの倒壊などの被害が1508件に上ることを明らかにした。昨年からの雪による一連の被害件数の5割以上を占めており、記録的な大雪で、急激に被害が膨らんでいる状況だ。
 4日以降の大雪による被害はその他、野菜や果樹など農作物などで22ヘクタールに上る他、畜舎などでも9件の被害が出ている。一部の県では依然調査中で、さらに被害が広がる可能性がある。
 4日以降の雪も含め、昨年からの雪による被害状況は、農業用ハウスなどは北陸や北海道など20都道府県で2786件、農作物などの被害は253ヘクタール、畜舎などは25件、果樹の枝折れなど樹体の被害は33ヘクタールに上った。
 被害額では農業全体で9億5000万円に上るが、4日以降の雪による被害額は集計中。
 4日以降の大雪によって、北陸で水稲の育苗ハウス、北海道でピーマンをはじめとする園芸作物のハウスなどで被害が広がっている。
                     
                        2018年02月15日
                                    
            
                    大雪の農業被害甚大 6道県ハウス全半壊1300棟超 本紙調べ 
                     日本海側を中心とした2月の記録的な大雪が、甚大な農業被害を及ぼしている。日本農業新聞が13日、聞き取り調査をした結果、倒壊や半損壊など農業用ハウスの被害は6道県で1300棟を超えた。雪が降り続いている地域は、調査が進んでいないため、被害はさらに拡大しそうだ。
 被害が最も大きいのが福井県。ハウスの倒壊だけで479棟(12日午後5時現在)に上った。育苗ハウスの損壊もあり、春からの水稲栽培に影響が出そうだ。北海道は、日高地方でハウスの被害が530棟。ピーマンやミニトマトなどの園芸作物のハウスに被害が出ている。
 北陸では石川県でもハウス232棟で被害を確認、富山県でも51棟が全半壊した。東北や中四国、九州などでは、被害状況を調査中としており、今後明らかになりそうだ。全国各地でハウスだけでなく、農業施設にも影響が出ている。                    
                        2018年02月14日
                                    
            
                    農学系コース新設 農家、行政と連携し実習 愛知大学
                     愛知大学は2018年度、地域政策学部内に農学系「食農環境コース」を新設する。同学部のキャンパスがある東三河地域は農業地帯だが、農学を学べる大学がなかった。地域の行政や住民からの声を受け、文系学部専門の大学ではあるが設置した。農業地帯の愛知、静岡県での農家実習や加工体験といった現場学習に力を入れ、地域農業の課題に対応できる人材の育成を進める。
 地域政策学部は地域課題を探り、活性化に貢献する人材育成を目指す。愛知県豊橋市にキャンパスがある。同市を含む東三河地域や、隣接する静岡県の遠州地域は日本有数の農業地帯だが、同大学を含め農学を学べる大学がない。以前から地域からは設置を求める声があった。地元に根付き地域農業を引っ張る人材を育てたいと、大学初の理系コースとして同学部内に設置した。
 コースでは理系、文系両方の講義を受けられる。現場学習に重点を置き、農業地帯に近い立地を生かして農家や行政と連携したフィールド実習もする。食品安全や加工販売、流通に関する授業をする。食品加工などの試験ができるよう、実験室の整備も進める計画だ。
 同学部の岩崎正弥学部長は「学生が現場に足を運ぶ機会を多くつくる。生産と消費をつないで地域農業を支える人材を育てたい」と意気込む。
 静岡県JAとぴあ浜松の鈴木和俊会長は「経営感覚やマーケティング知識を生かし、付加価値を生み出せる人の育成が急務。学生には新たな食文化創造の担い手として活躍してほしい」と期待のコメントを寄せている。
 初年度の18年度は25人を募集する計画だ。                    
                        2018年02月10日
                                    
            
                    平昌五輪きょう開幕 滑れ! 跳べ 農家育ち栄光の舞台へ JA組合員町挙げ応援
                     9日から韓国で平昌冬季五輪が開幕する。農家出身の選手が出場するとあって、故郷の選手の家族や仲間がエールを送っている。小さな頃から取れたての新鮮な農産物を食べ、農業が育んだ健康な体と精神力を武器に、世界との決戦に臨む。
 北海道美幌町のJAびほろ管内からは、組合員の家族が日本代表として3人出場する。期間中は、家族だけでなく、町など関係者ら20人以上が応援に駆け付ける。
 
クロカン 石田正子 北海道美幌町
 クロスカントリーで注目の石田正子選手(37)は、オフシーズンの4、5月には畑作物23ヘクタールを栽培する実家で、タマネギの苗運びや、テンサイの定植などの作業をこなす。父・博之さん(71)は「体力があるから農作業もできる。優勝を勝ち取ってほしい」とエールを送った。
 
スピードスケート 一戸誠太郎 北海道美幌町
 スピードスケートに出場する一戸誠太郎選手(22)の父で、畑作物66ヘクタールを栽培する農業法人の代表を務める猛導さん(52)は「自分の滑りをして、少しでも世界との差を縮めてほしい」と期待する。大学在学中の一戸さんは、春休みにテンサイの播種(はしゅ)などに励む。「農作業で鍛えられた部分もある」(猛導さん)と話す。
 
バイアスロン 三橋李奈選手 北海道美幌町
 クロスカントリーとライフル射撃を合わせた「バイアスロン」に出場する三橋李奈選手(27)の父・鈴木三喜夫さん(59)は「いろいろな人の支援があり、今の娘がある」と感謝を口にする。前回のソチ五輪でリレーのアンカーを務めたが、周回遅れで規定により競技を終え、悔し涙を流しただけに「悔いのないように頑張ってほしい」と見送った。
 
スノボ大回転 斯波正樹選手 山形市 食にこだわり鍛錬
 男子スノーボードパラレル大回転の斯波正樹選手(31)は、山形市の農家出身。父の久一郎さん(67)は水稲60アール、レタスやキャベツなどの野菜20アールを栽培するJAやまがたの組合員だ。
 幼少期は東京で暮らしたが、9歳で父の実家がある同市に転居。両親は農業の傍ら、冬場は近くの蔵王温泉スキー場でレンタルショップを経営しており、9歳の時にスノーボードを始めた。
 両親の作った米や野菜を食べて育った。久一郎さんによると「食へのこだわりが強く、栽培が難しいキヌアを作ってほしいと言われた時は困った」。高校生の時も、自ら畑にリラックス効果のあるハーブのレモングラスを植え、茶にして飲み始めた。母の郁子さん(58)は、自家産農産物を使った料理を提供する飲食店を営み、「息子が作りました」とPRしてハーブティーを提供する。
 大会中、レンタルスキー店は休み、飲食店は従業員に任せて現地に応援に駆け付ける。郁子さんは「思い通りのパフォーマンスを見せてほしい」とエールを送る。
 
スキージャンプ 伊東大貴・小林潤志郎選手 雪印メグ 「カツゲン」原動力に
 農業関連企業でも、所属選手を仲間たちが応援する。70年を超える歴史を持つ雪印メグミルクスキー部は、スキージャンプの伊東大貴選手(32)と小林潤志郎選手(26)の2人を送り出す。
 伊東選手は北海道下川町出身。前回のソチ五輪では、葛西紀明選手と共に団体ラージヒルで銅メダルに輝いた。今シーズンは右肩を負傷するアクシデントに見舞われたが、トリノから4回連続となる五輪出場経験を生かし、大舞台に臨む。
 小林選手は岩手県八幡平市出身。昨季までは成績が低迷することも多かったが、今季は努力が実を結んで急成長を遂げ、昨年11月にワールドカップ初優勝を飾るなど、勢いに乗る新エースだ。
 1月に同部の原田雅彦監督らは、同社の「酪農と乳の歴史館」に設置されている「勝源神社」で必勝祈願を行ったという。
 北海道限定で販売されている乳酸菌飲料「ソフトカツゲン」が、受験生やスポーツ選手の間で験担ぎに愛飲されていることから、2005年につくられた神社で祈願。同社は「代表として全力を尽くし、カツゲンを飲んで勝利を目指してほしい」と力を込める。(猪塚麻紀子、川崎勇、塩崎恵)                    
                        2018年02月09日
                                    
            
                    列島襲う寒気 ハウス300棟倒壊 大雪で北海道日高地方
                     強い寒気の影響で日本列島を襲った大雪は7日、各地に大きな被害をもたらした。北海道日高地方では、ピーマンやミニトマトのハウスが約300棟倒壊。北陸地方でもハウスが倒壊するなど、大きな影響が出た。
 7日現在(道調べ)、大雪の影響から新ひだか町、新冠町で農業用ハウス約380棟が被害を受け、約300棟が倒壊した。その他はビニールが破損などとなっている。まだ報告が上がっていない町や現地に入れない場所もあり、被害状況の把握には時間がかかる見込み。新冠町の川越利也さん(52)は、ピーマンのハウス14棟が被害を受けた。「こんな被害は初めて。とにかく雪を除雪して、少しでも元のハウスに戻して何とか使いたい」と話した。
 北陸では福井市が37年ぶりの積雪となるなど、7日も雪が降り続けた。福井県坂井市のJAはるえ管内では、トマトやホウレンソウなどのハウスが倒壊。各地で道路の通行止めや鉄道が運休となるなどの影響が出た。                    
                        2018年02月08日