世界一のキャッシュレス社会、ATMから現金引き出せなくなるのか
Hanna Hoikkala、Amanda Billner-
ATMなどインフラ基盤、コスト増で崩壊の恐れも
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決済システムの管理が民間に移行することを中銀総裁が強く懸念
世界で最もキャッシュレス化が進んでいるスウェーデンの国民は、紙幣や硬貨を手にしようとしても現金自動預払機(ATM)から引き出せないリスクに直面している。
そうした極端なシナリオを回避しようと現金輸送会社のルーミスは、当局に対し銀行や小売店で現金の受け入れを義務付けるよう求めている。現金利用の急減を懸念する中央銀行も同じような呼び掛けをしている。これだけ速いペースでキャッシュレス化が進めば最終的に紙幣・硬貨の利用に必要なインフラ基盤が崩壊し、安全かつ効率的な決済システムを推進するとの中銀の責務を脅かされる恐れがあるためだ。
ルーミスのパトリック・アンデション最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「輸送車や金庫など所有しなければならず、こうしたインフラ維持のためには、一定量の現金利用が必要だ」と説明。「危機時においてキャッシュは重要だ。そうした危機で生じる事態を理解する洞察力に欠けているのかもしれず、それが社会全体に広がっている」と述べた。
Disappearing Cash
Amount of Swedish notes and coins in circulation has dropped to lowest level since 1990
Source: Statistics Sweden
スウェーデン中銀のイングベス総裁は日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルに寄稿し、「公共決済手段を民間の事業体が管理する」状況にスウェーデンは向かっており、「特に危機時に問題となる可能性」があると主張、中銀による決済制度管理を守るための法改正を訴えた。
現金利用が減る一方で、店舗や飲食店、銀行が負担する現金取り扱いコストは膨らんでいる。複数のスウェーデン大手銀行が出資し国内ATMの現金の大半を扱うバンコマットのニナ・ベンニングCEOは、「銀行が支払うATM1台当たりのコストはこの数年間、かなり劇的に増えつつある」と語った。
原題:Swedes Now at Risk of Losing Access to Cash in Parts of Country(抜粋)