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裁量労働制は、働かないおっさん対策にもなるはずなのに~変わらない日本の封建的労働環境~ - 山本 一郎

 人手不足も深刻化してくると、活況になるのは転職市場であります。

 利益なき繁忙というか、景気回復の実感がこれと言ってない人にとっては、たいして手取りも増えない割に社会保障費だけはガッツリと取られる昨今は、嘆くしかない状況ではないかと思うんですよね。そういう人に限って高値でビットコイン買って暴落して売るに売れない状況になって、だから真面目に働いておけば損しないですんだのに、っていう局面に陥ってるみたいですね。ご愁傷様でーーす^^


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ベンチャー企業までもがプロパー信仰する日本の病

 まあ終身雇用なんて、そもそも日本の戦後には言うほど無かったわけですし、今では最初入った会社で定年まで勤め上げるなんて話はかなりの少数派になってきています。確かに一つの会社で最後まで、というのはある種の日本人の美徳みたいに言われ、中国の「二君に仕えず」みたいな武将忠誠度のような、転職を悪とする文化がずっと続いていたようにも思います。昇進するのにその人の能力ではなく「生え抜き社員であるかどうか」というプロパー信仰があったり、その会社の中だけで通用する生き字引が各種意志決定を行う調整役として重宝されるのは、いわゆる大企業の宿痾です。

 なのに、最近では中堅企業や、場合によってはベンチャー企業までもが、中途採用を下に見る姿勢を公言して憚らない事例が多くあります。お前ら創業時点では数人しかいなかったのに、初期に企業に合流した古株社員ばかりを重用する風潮は、若くして成人病になる生活習慣の悪い能無しのようです。

「中途採用でもいい人材を採用できます」

 さらには、そういうところに人材を紹介する会社が広告で平然と「中途採用でもいい人材を採用できます」というクソみたいなコピーを掲げて、あたかも中途採用は新卒採用に劣るかのような宣伝もしておるわけです。中途採用を売り込みたい業者の都合という意味では分からなくはないけれど、ここまでくるとやはり戦後の日本の組織と、日本人の働き方は早々に変えていかないといつまでも幕藩体制下の武士のような封建制度から抜け切れないんじゃないかと思うわけですよ。

 何しろ、大河ドラマはその性質上、日本の歴史を扱うわけでして、戦国時代や幕末を繰り返し題材とするのが当然である以上、みんな喜んで観るのが日本の中世の物語にならざるを得ないわけですよ。そこへ、きちんとした時代考証を経た、歴史的になるだけ正しい物語を実現しようとするほど、古き良き日本の文化とされるものが、プロジェクトXも真っ青の立身出世と組織への献身、苦労への無原則な挑戦を美とする、実に不思議な価値観を社会に醸成することになるのではないかとすら思います。そろそろ大河ドラマも太平洋戦争や鄭成功を扱うべきだと感じるんですけどね。


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裁量労働制の話が、実労働時間の議論になっている残念さ

 国会に目を転じると、10年越しで裁量労働制の話をしています。どこかの組織に属して下働きをしてサラリーを得る生活をしていない私でさえ、時給で働く個人の切実な生活の問題は気になるので、国会論戦の中身を見て一喜一憂しています。もちろんデータのミスはいかんだろという大前提のもとで、労働組合も頑張り方がもっとエレガントであってほしいし、働き方改革は賃金の払い方だけでなく、フリーランスや高給専門職、必要だけど人気のない介護職などなど多くのものを同時に満足させられる統一的な労働政策にまでもっていかざるを得ず、全員の合意で進められる性質のものでもないよなあと感じます。

 立命館大学教授の上久保誠人せんせが喝破しておられたように、本当は量よりも質であるべき裁量労働制の話が、実労働時間がどうであるかの論戦に費やされ、与党は出鱈目で野党は硬直化しているという「いつもの我が国の国会」になっているようであるのは残念であります。

裁量労働制の国会論戦は与野党ともに論点がずれている | 上久保誠人のクリティカル・アナリティクス | ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/161336


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高給取りだけど働かない既得権益層が残る現実

 一方で、働き方改革の目線からは思い切り外れている派遣労働の現場では、空前の人手不足であるはずが、労働者の賃金はむしろ下がるという整合性のない事実があります。まあ、簡単に言えば払われるべき賃金がどこかに消えているわけですよ。巷で転職サイトや派遣、バイトの宣伝が数多く乱舞するのは「人手不足なので、むしろ安く人を仕入れられる企業ほど競争上有利になる」というブラック化圧力みたいなものがあるんじゃないかとすら思うんですよね。

人手不足でも派遣時給の下落続く 16カ月連続前年割れ:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27257040S8A220C1X11000/


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 経営陣が「もっと人を解雇しやすくして、流動性を増やしながら職業訓練を充実させてほしい」という希望を持つ一方、労働組合や左派は正規雇用死守、その争いの結果により、派遣社員や若年層労働者の非正規化が固定されてしまい、多少労働環境が悪くてブラックでも正社員での働き口があればそこで我慢する傾向が強くなって若年層の低賃金化が進む、という実に残念な構造になっておるのでしょう。そこには、高給取りだけど働かない中高年が既得権益層になってしまい、民間も役職定年制を設けたり割増退職金を支払ったりして頑張って追い出そうとしているという残念な日本の現実もあります。

 そして、結局今回もまとまらないことでしょう。労働時間を争点にしたら、異常データをもとに戦うしかないでしょうからね。せめて、職業の範囲や年収をきちんと切って、これは高給取りの働かないおっさん対策とフリーランスや高給専門職のための制度ですよ、って説明していれば、左派が何か言っても「あれ? 金持ちの肩持つんですか? 労働貴族は豪放でございますねえ」と煽って終わる話だったんですけどね。

(山本 一郎)

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