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大久保賢一@畿央大学のブログです。特別支援教育、応用行動分析学(ABA)、日々のつぶやき等。

このツイートに予想以上の反響があり、お気に入りは2万を超え、1万回以上のリツイートがありました。

気になったのは「この情報は親を追いつめる」、「やはり悲観的な親である自分が子どもの問題行動の原因であったか」、「障害のある親が悲観的になるのは当たり前」といった内容のリプライがたくさんついていて、これは説明を加える必要があるなあと思いました。

すでに
カイパパ通信blogにおいて補足記事を書いていただいておりますが(本当にありがとうございました)、私の方でも主に研究の文脈に関する説明を加えたいと思います。

もともとこの研究については、
Handbook of Positive Behavior Supportの第10章「Optimistic parenting: hope and help for parentins with challenging children」を読んでいるときに、その章の著者であるDurandらが著者達自身の研究を引用しているのを発見して、「後でちゃんと読もう」と思い、メモ代わりに元論文のリンクをツイートしたのが発端でした。
(この本はとても素晴らしい本なので、PBSに関心があって英語が読める方は是非)

引用されている元論文「
Future directions for children and adolescents with mental retardation」は、知的障害のある方に対する支援に関するレビュー論文であり、知的障害の定義や診断基準の変遷、生物学的・遺伝学的な介入の可能性と課題、早期介入、カリキュラム、コミュニケーションや社会的スキル、問題行動に対する支援、インクルージョンなどについてこの時点における研究蓄積の概要についてまとめられた内容となっています。

問題の箇所はP644のところで、「3年間に渡る前向き(prospective)研究によって、子どもの将来の問題行動に影響する要因について検討した」、「行動問題がより重篤化することを予測する要因を測定し、3歳から6歳までフォロー」、「驚くことに、3歳の時点における3年後の子どもの行動問題を予測する要因は、子どもの認知的能力や適応行動の程度ではなく親の悲観的態度(pessimism)であった」、「言い換えれば、子どもが3歳になるまでに子どもの行動に影響を与えることを諦めてしまった親は、後に困難な行動問題のある子どもを持つことになるということ」、「親の楽観的態度(optimism)は、子どもに対する保護因子(protective factor)としての役割を果たすかもしれない」と書かれてあります。

実はこの記述もThe California Association for Behavior Analysisという学会の研究発表からの引用で(つまり最初に読んだ本の内容は孫引き)、その研究発表「Preventing behavior problems」に関わる資料は、インターネット上では見つけることはできません。

したがってデータそのものを確認できる状況ではなく、研究デザインやデータ収集方法やデータの信頼性なども検証できないのですが、まあここで重要なのは著者であるDurandたちがこの研究を引用して主張したかったことであると思います。

前述したHandbook of Positive Behavior SupportにおいてDurandらは家族支援の障壁となり得る要因として、家族のストレス、親への高すぎる要求水準、親が介入効果を実感できないこと、セラピストとの関係性、親の社会経済的状況、脆弱なソーシャルサポートなどを指摘していますが、その中の1つとして「親の悲観的態度や自信のなさ」をあげており、そこには付加的な支援が必要であることを主張しています。

(この章では「悲観的思考」の例として、子どもをスーパーマーケットに連れて行くことを取り上げ、実際には買い物の種類や時間の長さによって行動は変わるのに「買い物は何もかも全部ダメ」と考えたり、実際には少しずつ適応的な行動が増えてきているのに「うちの子どもはいつまで経ってもずっとダメ」と信じ込んでいる親をあげています)

Durandらの解説においては、少なくとも「親の悲観的思考や自信のなさ」をスケープゴートにするような意図は感じられず、支援の必要性と支援の可能性を主張している文脈であると読み取れます。

Durandらは「
Helping Parents With Challenging Children: Positive Family Intervention Facilitator Guide」という本において、PBSに認知行動療法的なアプローチを組み合わせたPositive Family Intervention(PFI)というアプローチについて紹介しています。
(私はまだちゃんと読めていませんが、保護者と一緒に機能的アセスメントに基づく子どもの行動支援計画を立案しながら、親の悲観的思考に対しては認知再体制化を組み合わせて実施するようなアプローチのようです)

以上のことを踏まえて、重ねて私から伝えておきたいことは・・・

・「子どもに自閉症や行動障害があって、その結果親が自信を持てず悲観的になると行動障害が悪化する」ということを示している研究ではない
・親になる以前から元々悲観的に物事を捉える傾向のあった人は、親になったときに通常のペアトレなど単独のアプローチではあまり効果が期待できないので付加的なサポートが必要
・「特に悲観的な親に付加的な支援が必要」、「というかそこからやる必要のあるケースもある」という当たり前のことを示している研究である、ということです。


子どもに知的障害や発達障害あって、かつ子どもが問題行動を示していたら、どんな親だって程度の差はあれ自信をなくして悲観的になるのは当たり前です。

重要なのは「悪者さがし」ではなく、家族が置かれている状況や家族メンバーそれぞれの特性に合わせ、家族をエンパワメントして家族のQOLを向上させることです。
「親の悲観的思考と自信のなさ」を「支援ニーズ」と捉え直し、支援のバリエーションを増やすことに繋げなければなりません。




【2018/02/28 09:48】 | 未分類
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