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【政治】

裁量労働制 データ不備で追い込まれ

<解説> 政府が今国会での裁量労働制の対象拡大を断念したのは、労働時間を巡る不適切なデータ問題への批判で追い込まれた結果だ。残業時間の罰則付き上限規制を導入する労働規制の強化に、経営者の視点に立った規制緩和を抱き合わせる手法にも無理があった。

 厚生労働省による労働時間実態調査は、裁量労働制の方が労働時間が短くなると印象付けるために、データを改ざんしたとの批判を免れない。結果として、裁量労働制は長時間労働を助長するとの懸念が世論に強まった。新たな調査で正確な実態を把握し、問題点を洗い出すのは当然だ。

 多岐にわたる制度変更を盛った八本の法案を一本に束ねて提出しようとする手法も疑問だ。そもそも裁量労働制の拡大は経済界の要請で労基法改正案に盛り込まれたが、二〇一五年に国会提出されて以降、野党の反発で一度も審議できなかった。今回、労働界の悲願である残業時間の上限規制とセットにして成立を目指したが、矛盾が露呈した。

 「働き方」法案は、残業時間規制のほか、非正規の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」など、労働者の利益になり得る要素が含まれている。与野党は誰もが安心して働ける環境をつくるために、国会で審議を尽くすべきだ。 (木谷孝洋)

 

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