JR西日本の新幹線のぞみの台車に亀裂が入った問題で、同社は28日、川崎重工業が2007年に台車枠を製造した際、底面の鋼材を薄く削ったことが強度不足を引き起こした可能性があると明らかにした。亀裂が確認された新幹線以外に、川重が出荷した146台の台車枠の鋼材が基準未満に削り込まれていたことも判明した。
トラブルの原因が製造時の不備にあった疑いが強まり、高い性能と安全性を誇る新幹線システムの信頼を揺るがしかねない事態となった。
川重の金花芳則社長は28日、神戸市中央区の本社で記者会見し「利用者や関係者に多大なご迷惑、ご心配をおかけして深くおわび申し上げる」と謝罪。金花社長が月額報酬の50%、車両カンパニー担当の小河原誠常務が同30%をいずれも3月から3カ月返上すると発表した。
JR西と川重によると、亀裂が入った台車枠の鋼材は縦約17センチ、横16センチ。中が空洞のロの字型構造になっている。厚さ8ミリの鋼材を使って成型した後、別の部品を溶接した際に底面の一部を削った結果、薄くなった。最も薄い部分は厚さ4.7ミリで、両社が仕様書で取り決めた基準(同7ミリ)を大幅に下回っていた。
底面の一部では、溶接時に生じたとみられる割れも見つかった。溶接部の割れを起点に、長い時間をかけて亀裂が進んだ可能性がある。亀裂の長さは枠の両側面約14センチに及び、残り3センチで最上部に達して台車が破断する恐れがあった。
川重によると、現場の作業員は溶接する際に削ることが許される範囲を誤り、作業班の班長も適切な指示や終了後の確認をしていなかった。小河原常務は「作業員に間違ったことをしているとの認識はなく、管理すべき立場の人も関与していなかった」と説明。亀裂が生じた鋼材の部位は、出荷前の自主検査の対象に含まれていなかったという。
JR西は亀裂が生じた新幹線のほかに、底面の鋼材の厚さが設計仕様に満たない台車を100台、JR東海が46台保有。JR西は台車の交換を順次進めるとし、JR東海も当面は超音波による検査などを続けながら全て交換する方針。川重は台車の製造費用を全額負担するとしている。
国土交通省やJR各社によると、JR東日本、北海道、九州の3社の新幹線でも川重製の台車が使われているが、不備が見つかったものとは構造が異なるため問題はない。「点検を確実に行う」(JR東)としている。
トラブルは17年12月11日に発覚。JR西の博多発東京行きの新幹線のぞみが、台車に亀裂が入った状態で約3時間運転を続けた。運輸安全委員会は新幹線では初めて、重大事故につながる可能性がある重大インシデントに認定した。