571/571
可愛らしいところがある方だと思う
的当てに続いてシロさんとやって来たのは、リリウッドさんと一緒に回った植物……花の巨大迷路。そのアトラクションは人気があったみたいで、的当てとは違ってガイドブックにも記載されていた。
「着きましたね」
「着きました。では、快人さん」
「はい?」
「『迷ってください』」
「……え?」
おっと、いきなり妙なことを言い始めたぞ。まぁ、シロさんと回っていて平穏無事に済むと思っていたわけではないが……迷ってくれとはまた……う~ん、流石シロさん。常人とは考え方が違う。
「褒められました」
「いや、褒めてはないです」
「なるほど……では、迷ってください」
「えっと、ちなみに理由は?」
「六王祭の最中にこの迷路に挑戦した快人さんはかなり迷いました」
「え、ええ、そうですね」
「なので、私の時も迷ってくれないと『不公平』です」
「なるほ……うん?」
不公平……なのか? 駄目だ、俺のほうも混乱してきた。というか、迷路でわざと迷うっていうのも難しい気がする。
この花の迷路が以前体験したのと同じだとしたら、完全には覚えていないまでも、割とサクサク進めてゴールしてしまいそうだ。
「普通に挑戦してもらって大丈夫です。快人さんなら、迷ってくれると信じています」
「嫌な信頼……いやいや、そんなに何度も迷いませんよ」
「……」
「ぐぬぬ……」
無表情なはずなのに、俺なら絶対に迷うと確信しているかのような目……くっそ、見てろよ。こうなったら、サクッとクリアしてやる。
意気込んで花の迷路に挑戦して……30分が経過した。現在俺の前には、視界をふさぐ花の壁……つまり、
行き止まりがあった。
「……シロさん、どう思います?」
「『七つ前』の曲がり角まで戻ったほうが良いと思います」
「……はい」
なんだろうこの敗北感……おかしいな、入り口から入ったばかりのころは、リリウッドさんと一緒に来た時と同じ花の構成だったから、道順も同じ感じだと思ったのに……。
なんか、中盤以降は正しいと思う順路に進んでいるにもかかわらず、連続で行き止まりにぶつかってしまっていた。
リリウッドさんに教わって花の種類で道順をある程度理解していたはずなのに……。
「……シロさん、ひとつ聞きたいんですが」
「なんですか?」
「……『分かれ道にある花の種類を入れ替えましたか?』」
「……さて、戻りましょう」
「……」
やっぱり犯人は貴女か!? そこまでして、俺を迷わせたいの?」
「はい」
「……なんて迷いのない返答……」
どうして、そこまで俺を迷わせたいんだろうか? シロさんのことだから、ただの意地悪とは考え辛い。となるとなにかしら目的があるはずだけど……。
「快人さんはずいぶん苦戦しているみたいですね」
「誰のせいですか、誰の……」
「さぁ?」
「……」
「ですが、快人さんにはこの迷路を簡単に突破できる方法があるはずです」
「……うん?」
「『誰か頼りになる相手に聞けばいい』と思います」
あっ、いま唐突に理解した。なんでシロさんが俺を迷わせようとしていたのかを……つまり、この方は……。
「それが、誰かは分かりません。不思議です。どこかにいるのでしょうか? 迷路の答えを知っていて、頼りになる相手が……」
「……」
なんという白々しいアピール。しかも、状況的にほぼマッチポンプである。そ、そこまで、頼られたいんですか?
「はい。快人さんは中々私を頼ってくれません。私は、とても不満です」
「えっと……し、シロさん……助けてください」
「仕方ありませんね。他ならぬ快人さんの頼みです。私が導いてあげましょう」
完全に仕組まれた流れではあるが、俺が諦めてシロさんに助けを求めると……シロさんは相変わらずの抑揚のない声で返答してくる。
しかし、その顔は微かに……数ミリ程度ではあるが上を向いており、なんとなくドヤ顔してるような気がした。
「私が導く限り、もう快人さんが行き止まりにぶつかることはありません」
「は、はぁ……えっと、その、頼りになります」
「これからも、困ったときはドンドン私を頼りにしてください。私が喜びます」
「……」
なんかウキウキしてる気がするし、気のせいかいつもより口数も多いような……そ、そんなに頼られたかったのか……。
「はい」
ここでも、一切の迷いもない返答である。
「快人さんは私を後回しにしています」
「い、いや、別にそんなことは……」
「快人さんは私を後回しにしています」
「……分かりました。今後は、もう少し頼りにします」
「任せてください」
心なしか胸を張っている気がする。う、う~ん、なんだかんだでシロさんも世話焼きと言えるのかもしれない。見た目からは想像もできないが、性格は意外と子供っぽい。
なんというか、良くも悪くも己の感情に素直というか……なんだかんだで、それがシロさんの一番の魅力なのかもしれない。
少なくとも、俺の表情が自然と苦笑を浮かべているあたり、シロさんと過ごす時間を悪くないと感じているのは明白だ。
拝啓、母さん、父さん――この世界の創造神様は、表情が読み取り辛いわりには素直で、ちょっとワガママで……なんというか、すごく――可愛らしいところがある方だと思う。
???「え? シリアス先輩? めーおー煉獄殺喰らって、あっちに転がってますよ。いや~惜しい人を亡くしました」
シリアス先輩「死んでないからね!?」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
この小説をブックマークしている人はこんな小説も読んでいます!
無職転生 - 異世界行ったら本気だす -
34歳職歴無し住所不定無職童貞のニートは、ある日家を追い出され、人生を後悔している間にトラックに轢かれて死んでしまう。目覚めた時、彼は赤ん坊になっていた。どうや//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
完結済(全286部分)
- 14466 user
-
最終掲載日:2015/04/03 23:00
失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~
とある世界に魔法戦闘を極め、『賢者』とまで呼ばれた者がいた。
彼は最強の戦術を求め、世界に存在するあらゆる魔法、戦術を研究し尽くした。
そうして導き出された//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全177部分)
- 14847 user
-
最終掲載日:2018/02/22 03:06
異世界迷宮で奴隷ハーレムを
ゲームだと思っていたら異世界に飛び込んでしまった男の物語。迷宮のあるゲーム的な世界でチートな設定を使ってがんばります。そこは、身分差があり、奴隷もいる社会。とな//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全221部分)
- 13835 user
-
最終掲載日:2017/11/30 20:07
ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント-
世界最強のエージェントと呼ばれた男は、引退を機に後進を育てる教育者となった。
弟子を育て、六十を過ぎた頃、上の陰謀により受けた作戦によって命を落とすが、記憶を持//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全179部分)
- 14727 user
-
最終掲載日:2018/02/01 04:25
魔王様の街づくり!~最強のダンジョンは近代都市~
書籍化決定しました。GAノベル様から三巻まで発売中!
魔王は自らが生み出した迷宮に人を誘い込みその絶望を食らい糧とする
だが、創造の魔王プロケルは絶望では//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全218部分)
- 15567 user
-
最終掲載日:2018/02/23 18:43
転生したらスライムだった件
突然路上で通り魔に刺されて死んでしまった、37歳のナイスガイ。意識が戻って自分の身体を確かめたら、スライムになっていた!
え?…え?何でスライムなんだよ!!!な//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
完結済(全303部分)
- 16172 user
-
最終掲載日:2016/01/01 00:00
八男って、それはないでしょう!
平凡な若手商社員である一宮信吾二十五歳は、明日も仕事だと思いながらベッドに入る。だが、目が覚めるとそこは自宅マンションの寝室ではなくて……。僻地に領地を持つ貧乏//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
完結済(全205部分)
- 16870 user
-
最終掲載日:2017/03/25 10:00
デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )
◆カドカワBOOKSより、書籍版12巻+EX巻、コミカライズ版6巻発売中! アニメ放送は2018年1月11日より放映開始です。【【【アニメ版の感想は活動報告の方//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全568部分)
- 20246 user
-
最終掲載日:2018/02/25 21:39
蜘蛛ですが、なにか?
勇者と魔王が争い続ける世界。勇者と魔王の壮絶な魔法は、世界を超えてとある高校の教室で爆発してしまう。その爆発で死んでしまった生徒たちは、異世界で転生することにな//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全537部分)
- 14447 user
-
最終掲載日:2018/02/03 23:34
とんでもスキルで異世界放浪メシ
※タイトルが変更になります。
「とんでもスキルが本当にとんでもない威力を発揮した件について」→「とんでもスキルで異世界放浪メシ」
異世界召喚に巻き込まれた俺、向//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全406部分)
- 20963 user
-
最終掲載日:2018/02/27 00:04
フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~
※作者多忙につき、当面は三週ごとの更新とさせていただきます。
※2016年2月27日、本編完結しました。
ゲームをしていたヘタレ男と美少女は、悪質なバグに引//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全229部分)
- 13932 user
-
最終掲載日:2018/02/24 07:00
再召喚された勇者は一般人として生きていく?
異世界へと召喚され世界を平和に導いた勇者「ソータ=コノエ」当時中学三年生。
だが魔王を討伐した瞬間彼は送還魔法をかけられ、何もわからず地球へと戻されてしまった//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全409部分)
- 13737 user
-
最終掲載日:2018/02/25 11:00
賢者の孫
あらゆる魔法を極め、幾度も人類を災禍から救い、世界中から『賢者』と呼ばれる老人に拾われた、前世の記憶を持つ少年シン。
世俗を離れ隠居生活を送っていた賢者に孫//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全127部分)
- 16338 user
-
最終掲載日:2018/02/03 03:49
ありふれた職業で世界最強
クラスごと異世界に召喚され、他のクラスメイトがチートなスペックと“天職”を有する中、一人平凡を地で行く主人公南雲ハジメ。彼の“天職”は“錬成師”、言い換えればた//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全306部分)
- 19982 user
-
最終掲載日:2018/02/17 18:00
異世界はスマートフォンとともに。
神様の手違いで死んでしまった主人公は、異世界で第二の人生をスタートさせる。彼にあるのは神様から底上げしてもらった身体と、異世界でも使用可能にしてもらったスマー//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全462部分)
- 14522 user
-
最終掲載日:2018/02/14 22:33
境界迷宮と異界の魔術師
主人公テオドールが異母兄弟によって水路に突き落されて目を覚ました時、唐突に前世の記憶が蘇る。しかしその前世の記憶とは日本人、霧島景久の物であり、しかも「テオド//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全1397部分)
- 13308 user
-
最終掲載日:2018/02/28 00:00
進化の実~知らないうちに勝ち組人生~
柊誠一は、不細工・気持ち悪い・汚い・臭い・デブといった、罵倒する言葉が次々と浮かんでくるほどの容姿の持ち主だった。そんな誠一が何時も通りに学校で虐められ、何とか//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全116部分)
- 14028 user
-
最終掲載日:2018/01/09 00:01
二度目の人生を異世界で
唐突に現れた神様を名乗る幼女に告げられた一言。
「功刀 蓮弥さん、貴方はお亡くなりになりました!。」
これは、どうも前の人生はきっちり大往生したらしい主人公が、//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全394部分)
- 15968 user
-
最終掲載日:2018/02/26 12:00
異世界のんびり農家
●KADOKAWA/エンターブレイン様より書籍化されました。
【一巻 2017/10/30 発売中】
【二巻 2018/03/05 発売予定】
●コミッ//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全383部分)
- 14952 user
-
最終掲載日:2018/02/28 19:27
ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた
◆書籍⑧巻まで、漫画版連載中です◆ ニートの山野マサル(23)は、ハロワに行って面白そうな求人を見つける。【剣と魔法のファンタジー世界でテストプレイ。長期間、//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全194部分)
- 13022 user
-
最終掲載日:2018/02/24 21:00
アラフォー賢者の異世界生活日記
VRRPG『ソード・アンド・ソーサリス』をプレイしていた大迫聡は、そのゲーム内に封印されていた邪神を倒してしまい、呪詛を受けて死亡する。
そんな彼が目覚めた//
-
ローファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全151部分)
- 13585 user
-
最終掲載日:2018/02/27 12:00
レジェンド
東北の田舎町に住んでいた佐伯玲二は夏休み中に事故によりその命を散らす。……だが、気が付くと白い世界に存在しており、目の前には得体の知れない光球が。その光球は異世//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全1656部分)
- 15052 user
-
最終掲載日:2018/02/28 18:00
聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~
地球の運命神と異世界ガルダルディアの主神が、ある日、賭け事をした。
運命神は賭けに負け、十の凡庸な魂を見繕い、異世界ガルダルディアの主神へ渡した。
その凡庸な魂//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全363部分)
- 15078 user
-
最終掲載日:2018/01/07 20:00
金色の文字使い ~勇者四人に巻き込まれたユニークチート~
『金色の文字使い』は「コンジキのワードマスター」と読んで下さい。
あらすじ ある日、主人公である丘村日色は異世界へと飛ばされた。四人の勇者に巻き込まれて召喚//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全824部分)
- 14367 user
-
最終掲載日:2017/12/24 00:00
黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~
記憶を無くした主人公が召喚術を駆使し、成り上がっていく異世界転生物語。主人公は名前をケルヴィンと変えて転生し、コツコツとレベルを上げ、スキルを会得し配下を増や//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全510部分)
- 13661 user
-
最終掲載日:2018/02/27 18:00
私、能力は平均値でって言ったよね!
アスカム子爵家長女、アデル・フォン・アスカムは、10歳になったある日、強烈な頭痛と共に全てを思い出した。
自分が以前、栗原海里(くりはらみさと)という名の18//
-
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
-
連載(全268部分)
- 14281 user
-
最終掲載日:2018/02/27 00:00