いよいよ3月、春ですね。チョコご紹介もひと段落、ここは心機一転、
心うきうき、午後のティータイムにぴったりの、フランス伝統クッキーはないかな〜〜
「ショコラ・モワルー」はおなじみ、とろけるガナッシュが特徴のチョコレート菓子です。パティシエでお菓子歴史家のピエール・ラカン氏の古い文献には「マカロン・モワルー」という言葉が出てくるほど。
ん?マカロンのモワルー(柔らかくって、しっとりとして、とろけるような)ってなんでしょう?
調べてみたら「ヴィジタンディーヌ」という初めて聞くお菓子が。今日はこちらを紹介させていただきますね。
舞台は、なんとロレーヌ地方の都市ナントです。こちらの伝統菓子、アーモンドと焦がしバターの風味たっぷりの、可愛らしい、素朴な焼き菓子です。
たいていは、舟型、または、小さなクグロフ型(王冠の形)で焼き上げます。
このお菓子が生まれた背景は、どうやら卵にあるよう。
もともとフランスのパティスリーでは、カスタードクリームや、ムースのベースになるクレーム・アングレーズなど、卵黄を使うお菓子が多いため、卵白のみが余ってしまいました。そこで、卵白を使った、マカロン、メレンゲなどが発明された訳なのですが、「ヴィジタンディーヌ」もご多聞にもれず、その一つ、と言われているのですって。
さて、このお菓子、見た目も作り方も私たちのよく知るフィナンシェとそっくりではありませんか?
ヴィジタンディーヌは、砂糖、焦がしバター、小麦粉、卵白が原料。
対して、パリ生まれのフィナンシェ、「金融家」という面白い意味のお菓子は、四角い型で焼きますが、材料は全く一緒です。
違いといったら、フィナンシェが生地の卵白に合わせるのに対し、ヴィジタンディーヌは、卵白を泡立てて混ぜるところでしょうか。
食感としては、フィナンシェは、しっとりはしていますが生地感の強い噛み応えがあります。焼いた翌日以降、しっとり感が増します。
対して、ヴィジタンディーヌは、表面はカリっと揚げたように香ばしく 中はしっとりとしていて、焼きたてに勝るものはありません。
まったく同じ材料でも、作り方と型が違うだけで、ふたつのお菓子と物語、歴史が存在します。
フィナンシェは100年前にパリで、ヴィジタンディーヌは中世ごろと言われていますから、ヴィジタンディーヌの方が先輩だったのですね。
今ではフィナンシェのほうが市民権を得ている形でしょうか。ヘーゼルナッツを加えることも定番になってきました。
ヴィジタンディーヌの故郷ナンシーでも、今日、伝統を守り続けているお店はだんだんと少なくなっているそうです。
焦がしバターとアーモンド、バニラの香りが素敵なヴィジタンディーヌ。
手作りの際のポイントとしてはーーー
こんがり焼けた外側はしっかり、中はしっとりとした食感がなにより命ですから、素材のおいしさを最大限に引き出すことが、もっとも重要ですね。
バターをしっかりと焦がし、適切な温度、そして良質な素材、の勝負です。
バニラビーンズはオーガニック、またアーモンド選びにもたっぷりと時間をかけてください。少々値が張りますが、シチリア産のものはおすすめです。
Amandes Siciliennes Calibro 34/36
風味も食感もできたてほくほくのうち、お召し上がりあれ。
焼きっぱなしのヴィジタンディーヌは、焼き菓子の中でもシンプルな部類です。でも、お口に入れた瞬間、ふんわりと漂うしあわせの香♪
〜〜どうぞあなたも大切な人と、午後の紅茶時間、お楽しみください。
【kotorioからのひとこと】
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