「裁量労働制」批判だけしても何も解決しない

生産性についての本質的な議論を見逃すな

「労働の成果=労働時間」という文化を改めるべき時代に来ている(写真:miko315/iStock)

裁量労働制の不適切データをめぐる首相の答弁が撤回され、国会がにわかに騒々しくなっています。データ問題そのものについては筆者の語るところではありませんが、裁量労働制にかつてないほど注目が集まる今、この制度から見た日本の労働法制の問題点を考えてみようと思います。

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裁量労働制の改正法案に反対の論陣を張るコラムや意見はメディアで多数目にしますが、今回はあえて逆の立場から、裁量労働制とは何か、そもそも労働法で変えるべき点は何なのかについて説明します。それにより、日本型雇用の問題点をあぶり出します。

「専門業務型」と「企画業務型」がある

前提として、現在の労働基準法が定める裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2つがあります。「業務の性質上」「その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要がある」専門業務や企画業務がその対象です。

たとえば、SEや雑誌編集者、番組プロデューサー、コピーライター、公認会計士、弁護士、建築士 、税理士など士業の業務が専門業務に、企画・調査立案・分析などを行う経営企画などの部署が企画業務に該当します。

われわれ弁護士も、裁量労働制の適用がある専門業務の典型例です。弁護士の業界では、成果で評価を測るのは当然で、「何時間かけたから」というのはあまり評価されません。そもそも弁護士が依頼者のために成果を出すのは当然のことであり、それは「何時間かけたから」評価されるということではないのです。

法律事務所に勤務し、固定給をもらう若手弁護士のことを居候弁護士(イソ弁)といいますが、彼らに対して厳密な労働時間管理をして残業代を支払っている事務所がどれほどあるでしょうか。あるにしてもごく少数派だと思います。

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  • NO NAMEd0971d830792
    問題は、健康や長時間労働が放置され、現在の労基法すら守られていない状態で、法律を変えれば働き方や現場の意識が変わると思っちゃうことじゃないでしょうか?
    「成果」を評価する方法が確立されていない職場がほとんどなのに、成果を基準に働こうと言っても恩恵を受けるのは一部のまともな上司や会社に恵まれた人だけなのです。
    法律があってもサビ残や長時間勤務が変わらず育休産休も取れずに辞める人もいるのに、法律さえなんとかすれば現実がそれに合わせてくれるなんてことはないんですよ。
    up87
    down3
    2018/2/28 10:16
  • NO NAMEbaef66e955f2
    無理な仕事量をあたえられ、裁量だといわれても、長時間労働を強いられれる。仕事量を配分するのは上司なのだから、そもそも自分で仕事量を自分で決められなければ、裁量労働制の意味はなくなる。人材不足のなか、誰々は早く買えるから更に仕事をお割り当てようというのがこのご時世。これでは会社の言いなりになる。評価にしろ、各会社の任意であり客観的な評価はありえない。裁量労働を立てに、自分の仕事量を制限するような社員は、評価を下げられる。現状の裁量労働制の弊害を調査・その是正なくしては、拡大などありえない。
    up54
    down5
    2018/2/28 10:45
  • NO NAMEb0f4b309793c
    今の不適切な使い方を合法化しましょうというのが今回の改正案。
    成果と言い換えているがこれはノルマ。
    ノルマ未達なら無制限で働かされることになるのが裁量労働制。

    今回の改正案では法人営業が対象になっているが
    これは長時間労働で問題になった電通の営業も対象になる。
    これだけでもこの改正案が過労死促進法と呼ばれるレベル
    の物であることは断言できる。
    up53
    down8
    2018/2/28 10:28
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