酒とディナーの接待は昔の話-バンカーや運用者に聞く今風おもてなし

金融業界では常に顧客の接待がつきものだが、今は単に酒と食事でもてなせばいいというわけではない。ライフスタイルがより健康的になり、業界全体で接待の予算が縮小する中で、どこに行き、何をすべきかという基準が変化している。アルコール付きディナーで商談をまとめるという伝説は今でも耳にするかもしれないが、現実はかなり違っていることが多い。

  われわれはシンガポールや香港、東京などのバンカー、ファンド運用者や幹部らに、顧客との商談や接待のためによく行く場所を教えてもらった。その内容は以下の通り。

香港

香港のレパルスベイにある「ライムウッド」

出典:Maximal Concepts Ltd.
  • ドイチェ・アセット・マネジメントのアジア太平洋地域担当最高投資責任者(CIO)、ショーン・テイラー氏

  接待の場所:私は時々、香港の違った一面を見てもらうため、顧客を「香港ヨットクラブ」に連れて行くこともある。海外から来た顧客の場合は、南側にあるレパルスベイの「ライムウッド」などの場所に連れて行くのが好きだ。ビーチに面したこの店はおいしい軽食を提供しており、非常にカジュアルでリラックスした雰囲気だ。

  以前から何が変化したか:ここ数年で変わったのは、市場の状況や欧州連合(EU)の第2次金融商品市場指令(MiFID2)のため、接待予算が大幅に縮小されていることだ。ただ、好まれる接待のタイプが変わったことも一因だと考える。顧客はあまり堅苦しくなく、よりカジュアルな形の接待を求めるようになった。

シンガポール

「ナショナル・キッチン」のシンガポール料理

ソース:Violet Oon
  • クルーシャル・パースペクティブのコリーン・プン最高経営責任者(CEO)

  接待の場所:中華や日本食、欧州料理の人気が高い傾向にある。キャピタル・タワーの最上階にある「チャイナ・クラブ」や、パン・パシフィック・ホテルの「Keyaki(欅)」などが例として挙げられる。シンガポールを訪れる海外の顧客や企業の中には地元の料理に興味がある人もいるため、私はそういう人を美術館ナショナル・ギャラリーの中にある「ナショナル・キッチン」や、プラナカン博物館のそばにある「トゥルー・ブルー」に連れて行くことにしている。

  以前から何が変化したか:シンガポールの接待場所の選択肢は大幅に拡大している。ただ、利ざや圧迫や規制強化など金融業界が直面する問題のため、接待予算は縮小している。

東京

ホテルオークラの「オーキッドルーム」(2015年)

撮影:林紀子/ワシントンポストゲッティイメージズ
  • ウィズダムツリー・ジャパンのイェスパー・コールCEO

  接待の場所:特にテラス席に座れる春と秋に朝食を取るなら、「Criscross(クリスクロス)」。 ディナーなら赤坂の「TAKAZAWA(タカザワ)」だ。ここは世界最高級のレストランだが、席数が少ないので予約を取るのは極めて難しい。酒を飲むなら青山の「ラジオ」。禁酒法時代の酒場にタイムマシンで戻ったような雰囲気だ。

  以前から何が変化したか:日本での接待や商談の場所と言えば、ホテルオークラの「オーキッドルーム」と相場が決まっていた。そこは日本の金融業界のありとあらゆる人物が集まる場所だった。ここに来れば、誰が東京に来て、誰と会っているのかを正確に知ることができたが、今は閉鎖されている。

  日本では朝食の場所を選ぶのがいつも非常に難しかった。だが、ここ数年で朝食を食べられるプライベートな店が何軒かオープンしたので、今はそこに人を連れて行くのが好きだ。

原題:Boozy Lunches No More: 8 Executives Reveal How They Woo Clients(抜粋)

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