GoogleとFacebookは、パブリッシャーに対してさまざまな形で力を行使できる。Googleはその力を使って、自社のモバイルウェブ高速化プロジェクト「AMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)」のコードを利用するようパブリッシャーに働きかけている。
建前上、AMPを採用するかどうかはパブリッシャーの判断に任されている。しかし、検索トラフィックを失いたくないパブリッシャーにとって、選択の余地はほとんどないのが現実だ。
効果測定企業のチャートビート(Chartbeat)が公開した新しいデータをみれば、Googleが検索エンジンの支配力を背景にパブリッシャーに対してどれほど大きな影響力をもっているかがわかる。チャートビートのクライアントがGoogleから得たトラフィックは、全体で2017年1月の時点から25%増えているが、AMPに対応したパブリッシャーは、Googleからのモバイル検索トラフィックが100%増加していた。
Advertisement
これに対し、AMPに対応していないパブリッシャーは、同じ期間のGoogleからのモバイルトラフィックにほとんど変化がなかったのだ。デスクトップトラフィックは、AMPに対応しているかいないかに関わらず、すべてのパブリッシャーでほぼ一定だった(チャートビートのパブリッシャーが得た参照トラフィックのうち、Googleからのトラフィックが占める割合はおよそ40%であったのに対し、Facebookからのトラフィックは30%だった)。
モバイルファースト
「Googleは、ますますモバイルファーストのプラットフォームになりつつある」と、チャートビートのデータサイエンスディレクター、クリス・ブロー氏はいう。
この調査結果は、AMPを利用していないサイトに一定の影響が及んでいることを示している。AMPに未対応のサイトはまだまだ多い。チャートビートのクライアントである5万社のパブリッシャーうち、AMPを利用しているのは25%だ。そのようなパブリッシャーには大規模企業が多いが、例外もあるとチャートビートは述べている。
トラフィックベースでみると、AMPを利用するパブリッシャーはモバイルトラフィックの18%をAMPから得ており、2017年夏の16%から増加していた。これに対し、Facebookの高速読み込み記事テンプレートである「インスタント記事」を利用しているクライアントが全クライアントに占める割合は、わずか10%だった。また、それらのクライアントがインスタント記事から得たモバイルトラフィックの割合は11%で、2017年夏の約15%から減少している。
Googleの影響力
AMPのトラフィックが増えていることは、Googleがウェブに及ぼす影響力の大きさを示すもうひとつの兆候だ。実際、パブリッシャーはGoogleに対して好意的な態度をとりはじめている。関係が悪化しているFacebookと比べて、Googleは多くのトラフィックを提供してくれるうえ、連携が容易だからだ。Googleによれば、AMPのページは読み込み速度が85%速くなるという(一部のパブリッシャーにとっては速すぎるため、広告の速度が追い付かないという問題が生じている)。だが、テクノロジー界の巨人であるGoogleの影響力の拡大を警戒するパブリッシャーもある。
AMPのほかにも、GoogleはChrome(クローム)ブラウザ向けの新しい広告フィルターを米国時間2月15日に導入した。このフィルターは、GoogleとGoogleが設立を支援した業界団体の「Coalition for Better Ads(良い広告のための連合)」が行っている調査に基づいて広告をブロックする。また、パブリッシャーもこの取り組みに協力しており、フォーブス(Forbes)やロサンゼルス・タイムズ(The Los Angeles Times)など、Googleから違反と認定されたパブリッシャーの37%が修正を行ったと、Googleは述べている。このような取り組みに協力するかどうかは自由だが、協力しないパブリッシャーは、検索トラフィックと広告収益の一方または両方を失うリスクを抱えることになる。
「AMPのみによってもたらされたトラフィックの増加は、Facebookがすべてのニュースにもたらす参照トラフィックの減少分を補ってあまりあるものだ」と、チャートビートのCEO、ジョン・サロフ氏はいう。「AMPを利用していないパブリッシャーには、ROIを計算して、AMPへの対応が意味のある取り組みであることを知ってもらいたい。AMPがトラフィック元としてますます重要になっているからだ」と、サロフ氏は語った。
AMPのマネタイズ
一部のパブリッシャーにとって問題となっているのは、AMPのマネタイズをいかにうまく行うかということだ。ウェブの速度を上げるために、Googleはページの要素をそぎ落としたが、そのためにパブリッシャーが利用できる広告ユニットの種類が限定されることになった。パブリッシャーの業界団体デジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Content Next)が発表した「配信コンテンツ収益ベンチマークレポート(Distributed Content Revenue Benchmark Report)」によると、AMPから得られる利益はごくわずかしか増えていない。2017年上半期には、検索を通じてパブリッシャーが分散型コンテンツから得た収益はごくわずかで、OTT(オーバーザトップ)、シンジケーション、ソーシャルメディアより少なかったことが、20社のメンバー企業のデータをまとめたこのレポートで報告されている。
テクノロジー系パブリッシャーのパーチ(Purch)は、2017年に自社のヘッダー入札ソリューションでAMPタグを受け入れられるようにして以来、AMPページからの収益がモバイルページに匹敵するレベルになっていると、CTOのジョン・ポッター氏は述べている。ポッター氏にとっては、「AMPページがGoogleの結果ページに表示される場所がわからないこと、URLがGoogleのものになるためにブランド名が消えてしまうこと、そしてAMPページで開始されるセッションがモバイルページと比べて短いこと」に対する懸念の方が大きいという。
Googleが2月14日に投稿したブログ記事によると、2017年の1年間にパブリッシャーがAMPページから得た収益は3倍に増え、広告の読み込み時間も短縮されたという。しかし、まだ改善の余地があることもGoogleは認めている。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)