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【社説】

フリーランス 活躍には守る手だても

 個人で仕事を受注する「フリーランス」の人たちを保護すべきだ-。そんな考え方を盛り込んだ報告書を公正取引委員会の有識者会議がまとめた。働き方の多様化で考えるべき時期にきている。

 フリーランスは、会社員や団体職員などの雇用者と異なる。特定の企業に属さず仕事を発注者から受注する個人事業主である。

 IT技術者や編集者、デザイナー、美容師、大工など幅広い。会社員などの副業を含む人口は二〇一六年に千六十四万人、前年比で17%増えたとの推計もある。

 増加の理由は、インターネットの普及だ。場所や時間に関係なく仕事ができる。働き方の多様化で一つの企業に勤めるより、技能を磨きながら複数の発注者と契約をして働く方が収入を得やすいとの考え方も広がっているようだ。

 個人の専門性を生かせる働き方だが、仕事の発注者に対し立場が弱い。契約書が存在せず、不当な契約を強いられるケースも少なくない。会社員らは労働法制で守られているが、フリーランスは規制の対象外でこれまで働く環境に注意が払われてこなかった。

 報告書は、個人として働く者の増加に社会全体が対応しきれていないと指摘、不当な契約を公正な人材獲得競争をゆがめる行為とし独占禁止法の適用を打ち出し、企業に対応を促している。

 具体的には、独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」に抵触する恐れがあるケースとして、報酬の支払い遅れや一方的な減額、著しく低い報酬での取引を求めたりすることなどを挙げた。

 スポーツ界ではチーム同士が選手の引き抜きをしないことを申し合わせたり、芸能界では所属事務所が契約改定協議に応じないことも違反になり得るとした。

 発注する企業にとっても、人材活用の公正な競争の促進が進めば経済成長にもつながるはずだ。適正な契約を広げてほしい。

 働く環境の整備は、独禁法による規制だけでは不十分だろう。

 ある市民団体の調査ではフリーランスで働く女性の約六割が、出産後二カ月以内に復職していた。会社員のように育児休業給付金がなく働かなければ生活できないからだ。こうした労働法制でも手だてがないか検討が要る。

 自宅で仕事ができることから会社員より保育所入所選考で不利になる問題もある。政府は差をつけないよう自治体に要請したが、こうしたきめ細かい環境整備にも知恵を絞るべきだ。  

 

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