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昔、私がまだ生意気な記者だった頃、先輩記者に説教されたことがある。自分の取材力に自信を持ち始め、いい気になっていた時期だったこともあり「何を言ってんの、この人」と斜に構えて聞いていたので、説教の中身はよく覚えていない。ただ、一つだけ強く記憶に残った話がある。それは次のような質問だ。「お前、記者と編集者との違いを知っているか」
私が「知りませんよ」とそっけなく答えると、先輩記者はこう諭した。「編集者は若い作家らの面倒を見て一人前に育てあげる。だから大成した作家は、その編集者が転職したり独立したりした時、昔の恩返しに小説やエッセーを寄稿してくれる。反対に『俺が、俺が』の記者なんか皆に嫌われるから、将来落ちぶれたら誰も助けてくれないぞ」
残念ながら、そんな含蓄のある説教を聞いたにもかかわらず、私はそれ以降も「俺が、俺が」の記者で押し通した。だが「デスク」の仕事をするようになって、その先輩記者の説教を思い出すことが増えた。デスクという仕事を簡単に説明すると、記者や寄稿者の原稿をチェックしたり、特集企画の工程管理をしたりする。要は編集者としての仕事である。
デスクという名の編集者の仕事を始めると、どうも勝手が違う。記者と違って他の誰かに記事を書いてもらうのが仕事なのだから、当たり前である。「このネタで、なぜそんな記事を書くのか」「なぜ締め切りを守らない」などと過去の自分を棚に上げて怒る。先輩記者の忠告を思い出したのはそんな時だ。同時にこう思った。自分は記者あがりだが、そうでない編集者はどんなふうに仕事をしているのだろうか。
長い前置きを書いてしまったが、その意図は読者にも明らかだろう。記者と編集者の関係は、システム開発プロジェクトにおける技術者とプロジェクトマネジャーに相当する。もちろん、システム開発に比べれば編集は超マイクロプロジェクトなので、「一緒にするな!」とお怒りの技術者やプロマネも多いと思う。ただシステム開発と同様、編集も炎上リスクが高いプロジェクトなのでご容赦願いたい。
さて、タイトルの「プロマネは技術者の仕事ではない」に異議がある読者はいないと思う。たまに「えっ! そうなの?」と聞き返す人もいるが、少し考えると容易に納得できるはずだ。プロマネの仕事と技術者の仕事は全く別物だ。問題はここからで、SIerと呼ばれる大手ITベンダーなどのプロマネと話すと、ほぼ全員が「だけど、技術者でなければプロマネは務まらない」と言い切る。私からすると二重の意味で「えっ! そうなの?」である。