クルマ好きはなぜスイフトスポーツを愛するのか? 人気の秘訣に迫る

クルマ好きはなぜスイフトスポーツを愛するのか? 人気の秘訣に迫る

 スズキのスイフトスポーツが人気です。

 2017年9月に発表・発売され、先代型の1.6L、NAから同車初の1.6Lターボを搭載、2ペダル仕様は先代のCVTからATに戻され、ボディはやや拡大して3ナンバーに(全長3890×全幅1736×1500 mm)。先代比70kg軽量化を達成し、周囲を驚かせました。

 そんなスイフトスポーツは2017年11月に777台、12月に1544台、2018年1月に1020台と好調な売り上げを記録し、クルマ好きからも高い評価を得ています。売れてるしクルマ好きにも好評という、珍しいモデルとなったスイフトスポーツ。その人気の秘訣はどこにあるのか? 細かい視点で量販車をチェックする自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏にじっくりチェックしてもらいました。

文:渡辺陽一郎 写真:池之平昌信


■まずは「価格」が大きな魅力

 クルマ好きの間で高い人気を得ている車種がスイフトスポーツだ。

 最も分かりやすい人気の理由は価格だろう。緊急自動ブレーキを作動できるセーフティパッケージ装着車でも192万2400円に収まる。

スイフトスポーツの標準グレード6MTは183万6000円、6ATで190万6200円。破格と言っていいお得感のある値付け
スイフトスポーツの標準グレード6MTは183万6000円、6ATで190万6200円。破格と言っていいお得感のある値付け

「200万円」は今も昔もクルマ選びの基準で、2000年頃まではミニバンやLサイズセダンの特別仕様車を選べた。それが今では安全装備や環境性能の向上で価格帯が高まり、平均所得は1990年代を下まわるから、小さなクルマに代替えする「ダウンサイジング」も進んだ。200万円以下のスイフトスポーツは、多くのユーザーにとって購入しやすい。

 しかもスイフトスポーツでは、安価なコンパクトカーに乗っている印象が皆無だ。一種の「本物感」が魅力の柱になる。

 本物感の要素は多く、まず内外装のデザインに注目したい。スイフトはベースモデルも含めて、居住空間や荷室が狭いが、所帯じみた雰囲気を感じさせない。実用性を諦めた代わりに質を高め、欧州車的な趣味性も身に付けた。

内装も「ストイック」というほどではないが、スポーツ感はあるし、快適性もある。雰囲気抜群
内装も「ストイック」というほどではないが、スポーツ感はあるし、快適性もある。雰囲気抜群

■「大人っぽいスポーティカー」は実質スイスポだけ

 2つ目はボディ、メカニズム、パーツなどの本物感だ。

 ボディはスイフトをベースにしながら、スポット溶接箇所を12点増やすなど手間を費やした。エンジンは専用にチューニングされた直列4気筒1.4Lのターボで6速MTも採用する。サスペンションにはモンロー製のストラットやリヤショックアブソーバーが採用され、ブレーキサイズも拡大した。

 このようにスイフトスポーツは、かつてのランサーエボリューションのような独立した高性能車に仕上げられ、本物感もフィットRSホンダセンシング、ヴィッツハイブリッドスポーツパッケージなどを上まわる。

 トヨタと日産もスイフトスポーツを視野に入れ、ヴィッツGRスポーツ、ノートニスモを用意するが、チューニングカーの性格が強過ぎる。外観もベース車との隔たりが生じて子供っぽい。大人っぽいコンパクトな国産スポーティカーは、今では実質的にスイフトスポーツしか選べない。

 スイフトスポーツの魅力は、ベース車のスイフトが優れた素性を備えることに基づく。後席や荷室が狭い代わりに、デザインと走りに磨きをかけ、スイフトスポーツの魅力を際立たせている。

 特に1.4Lターボやエアロパーツなどを搭載しながら、1トンを下まわる車両重量はベース車のクルマ造りによるところが大きい。

先代から70kg軽量化を成し遂げた現行スイフトスポーツ。走行性能もガラッと変わった
先代から70kg軽量化を成し遂げた現行スイフトスポーツ。走行性能もガラッと変わった

■スイフトスポーツは「最後の駆け込み寺」

 最近の趣味性の強い国産車には、SUVやフロントマスクの派手なミニバンが増えた。軽自動車もカスタムはフロントマスクが派手だ。これらが好みに合わない人にも、スイフトスポーツは魅力だろう。

 現行スイフトスポーツのフロントマスクは、従来型に比べると睨みを利かせるが、ボディが小さいから周囲の車両を威圧する雰囲気はない。

どう見てもスポーティカーではあるが、どこか愛嬌があるスイフトスポーツ
どう見てもスポーティカーではあるが、どこか愛嬌があるスイフトスポーツ

 つまりスイフトスポーツは、今の大人のクルマ好きにとって、最後の「駆け込み寺」なのだ。

 スポーツカーの減少と高性能化、ロードスターや86の250万円オーバーに疑問を感じる人、ミドルサイズスポーツセダンの衰退を悲しむ人、大径タイヤのSUVとかフロントマスクの派手なミニバン、軽自動車にゲンナリしている人、そして身の丈に合った軽くて運転の楽しいクルマが大好きな人……。

 多くのターゲット層がスイフトスポーツを買っている。

 見方を変えると、スイフトスポーツの高人気は、今のクルマ界に向けた不満や諦めの裏返しだ。自動車メーカーには、日本のクルマ好きをもう少しキチンと見て欲しい。スイフトスポーツが「駆け込み寺」では困る。かつての日本には、同じようなコンパクトなスポーツハッチがたくさんあった。

 

皇帝アルファード/ヴェルファイア新型試乗&全方位チェック
皇帝アルファード/ヴェルファイア新型試乗&全方位チェック

 昨年末12月25日にビッグマイナーチェンジが発表されていたアルファード/ヴェルファイアが、2018年1月8日より発売開始となった。
 本企画では、その新型アルファード/ヴェルファイアをさっそく試乗。乗り心地や加速感などをチェックしつつ、変更点や(価格など)買い得感を比較検討してみたい。
 ミニバン最高峰モデルのアルファード/ヴェルファイアは、「皇帝」と呼ぶべき実力なのか? 3000字オーバーの渾身インプレッションです。
文:ベストカー編集部
ベストカー2018年2月26日号


■馬力もトルクもアップして燃費も向上

 今回新型に切り替わったアルファード/ヴェルファイア、なんといっても注目なのが3.5L、V6エンジン搭載モデル。

 ダウンサイジングだの電動化だの言っている昨今の風潮にグサリとクサビを打ち込むかのように、「大排気量マルチシリンダーですが、なにか?」と従来型の280psから301psへと21psもパワーアップ。最大トルクも35.1kgmから36.8kgmへと厚くなっている。

こちらはヴェルファイア
こちらはヴェルファイア

 とはいうものの、もちろん時代に逆行しているのではなく、伝達効率を高めた新開発8速ATを組み合わせるなどによりJC08モード燃費は従来型の9.5km/Lから10.8km/Lへと約10%向上しているのだからたいしたもの。

 アルファード/ヴェルファイアというと、ついフロントマスクのさらなる迫力アップでオラオラ度は増したぜ、という印象に引っ張られるが、ちゃんとやることはやっているのでありました。

 ちなみに2.5Lガソリンエンジン仕様やハイブリッドモデルについてはパワースペックなどの変更はなし。

■余裕たっぷりの動力性能

 というわけで、さっそく乗ったのはパワートレーンが進化した3.5Lモデル。今回はメガウェブのライドワンコースというかぎられたシチュエーションではあったが、なになにチョイ乗り試乗でも充分にその進化の度合いを確認することができた。

 301psに36.8kgmのトルクというと、グイグイ荒々しい動力性能……と思われるかもしれないが、このエンジン、スムーズな吹け上がりとリニアなトルク特性なので「怒濤の加速」というよりも上品なハイパワーという印象。

 吹け上がりのシャープさが従来型よりも一段高まっており、特に4000rpmあたりからの伸びのよさが従来型との大きな差。

 新開発8速ATの繋がり感もよく、ゼロスタートからアクセル全開で加速すると2100kgもの車重を感じさせないスムーズな加速が気持ちいい。シフトショックなどはもちろん皆無。アクセル操作に対する車体の反応が従来型よりもダイレクトになった印象で、微妙なアクセル操作で加速感を調節できる幅が広がった。

 豪快な加速性能というのではなく、高品質な動力性能なのである。

こちらはアルファード
こちらはアルファード

 今回の試乗コースではコーナリングなどハンドリング性能を云々することはできないけれど、車重を感じさせない操舵感は確認できた。

 オドメーター9㎞という「おろしたて」の新車のためか、ちょっと足の動きにまろやかさが欠けていたけれど、乗り替えたハイブリッド(オドメーター120km)では段差通過時の足の動きもスムーズだった。

 それにしてもアル/ヴェルは室内に乗り込むたびに豪華なシート、広い室内空間に圧倒される。インパネの質感も高く、装備の充実度も高い。

 いやぁ、これで335万4480円のグレードからあるっていうんだから、これはなかなか「お買い得」なクルマだと再認識した。

■フロントグリルの存在感は150%増し

 と、前項で速攻試乗レポートをお届けしたのだが、今一度アルファード/ヴェルファイアのマイナーチェンジ内容についておさらいしておこう。

 パッと見、とにかくインパクトたっぷりなのがフロントマスク。

2台並ぶと迫力が増す
2台並ぶと迫力が増す。変更前はヴェルファイアのほうが人気が高かったが、新型はほぼ互角でどちらかというとアルファードのほうが納期がかかっているそう

 もともと強烈なフロントグリルのアルファードだったが、縦桟が強調されたグリルデザインはより立体的になり存在感が当社比150%増しといった印象。ヴェルファイアもフロントマスクがよりシャープなラインで構成されるデザインへと変更されているのだが、アルファードのグリルデザインの存在感があまりにも強烈すぎて霞んでしまいそう。

 今回アルファード、ヴェルファイアともにエアロ仕様が新設定されているのだが、これがさらに派手で存在感を放つフロントマスクとなっている。バンパー両サイドにメッキパーツを配してワイド感を強調。これぞアル/ヴェルの真骨頂ともいえるバツグンの存在感なのである。

 インテリアに関してはシート表皮のデザインが変更されるとともに、メーター加飾、インパネの木目調デザインが変更されているのだが、なにしろもともと超豪華にして余裕たっぷりの室内空間なのでもはやなにも言うことはありません状態です。

エグゼクティブラウンジのシート。まさに豪華絢爛
エグゼクティブラウンジのシート。まさに豪華絢爛。7人乗り仕様の2列めはグリーン車やビジネスクラスに乗った気分

■世界トップレベルの自動ブレーキを全車標準装備

 特筆ポイントは第2世代へと進化した「トヨタセーフティセンス」が全グレードに標準装着されたことだ。

衝突軽減ブレーキを含む、第2世代の安全技術パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車標準装備とした。英断
衝突軽減ブレーキを含む、第2世代の安全技術パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車標準装備とした。英断

 ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせたセンサーにより前方を監視するのだが、従来の車両検知、昼間の歩行者検知に加え、他メーカーの自動ブレーキではボルボの最新システム以外では対応ができていない夜間の歩行者検知機能、自転車運転者検知機能が追加され、より高い安全性を実現する。

 しかも対歩行者では45km/hからの直前停止を可能としているというから、世界的にもトップレベルの自動ブレーキと言っていい。また従来型にはなかったレーントレーシングアシスト(ACC作動時に車線を維持するステア操作を自動的にアシストする)が追加されている。

 グレード体系だが、2.5Lガソリンエンジン及び3.5Lガソリンエンジン車はFF及び4WDが設定されるいっぽう、ハイブリッドモデルは後輪をモーターで駆動するE-Four4WDのみとなるのはこれまでと同様だ。

■「なんかお高いイメージ」、強くありませんか

 アル/ヴェルはなんか「お高い」イメージが先行しちゃっているのだが、よくよく価格表を見ていくと、前述のとおり、2.5Lガソリンエンジン搭載の「X」8人乗りの価格は335万4480円。

 これってちょっと意外なほどにお安い価格。

 もちろんトヨタセーフティセンスは標準装備。右側スライドドアの電動がオプションとなるなどの差異はあれど、けっして見劣りする装備内容ではない。

 ただ、アル/ヴェルの場合カーナビ&オーディオはエグゼクティブラウンジ以外のグレードではすべて「レス仕様」が標準のため、インテリジェントパーキングアシスト機能付きの純正オプションを装着するとプラス65万8800円となるのがちょっと油断ならない。

 ただし、それを言うならホンダのステップワゴンだってカーナビ&オーディオはオプション装着となっているし、カムリだって349万9200円の「G」グレードでもカーナビ&オーディオはブラス33万4800円のオプション。最廉価の「X」グレードではメーカーオプションは装着できずディーラーオプションでの対応となる。ようするに「これ」は最近の流行りで、アル/ヴェルだけが「見せかけの価格設定」ではない、ということだ。

■で、お薦めグレードは?

 アル/ヴェルらしい走りのパフォーマンスを味わうんだったらやっぱり3.5Lだ。2.5Lガソリンエンジンでも必要十分な動力性能はあるけれど、威風堂々としたあの姿にマッチした動力性能といえばやっぱりパワーアップした3.5Lを薦めたい。

 でもお高いんでしょ……と思ったら、こちらも意外とお安く463万2000円からある。

 アルファードG F7人乗りサイドリフトアップチルトシート装着車/ヴェルファイアV L7人乗りサイドリフトアップチルトシート装着車がそれ(最安グレード)だ。

 ここらへんの価格ゾーンとしてはBMW318iやベンツC180あたりとがっぷり四つ。ベンツもBMWももちろんブランド力もあって、クルマとしての仕上がりも凄いんだけど、動力性能的にはアルファード/ヴェルファイアの3.5L仕様には到底及ばない。むしろ4ドアサルーンだったら夏に新型に切り替わるクラウンが同門トヨタの真のライバルと言っていいかもしれない存在だ。

 このG F/V Lグレードは装備面も充実度が高く、カーナビ&オーディオはレス仕様となるものの、両側電動スライドドア、快適温熱シート付き7人乗り専用エグゼクティブシート(2列目の電動リクライニングはもちろんのこと、パワーオットマンも付く)、スマートエントリーシステムやパワーバックドアなど快適&便利装備はひととおり標準装着されている。

リアスタイルも迫力満点。混み合った駐車場でも見つけやすい
リアスタイルも迫力満点。これだけ存在感があると、混み合った駐車場でも見つけやすい

 繰り返し言ってしまうが、アル/ヴェルって車格というか、あの大きさと室内の豪華さから、とにかく高価なイメージを持っている人も多いと思うのだが、実は500万円を切る価格で3.5Lエンジン搭載モデルが狙えるのだ。

「ちょっと気になるな」と思っていて、「でも高そうだし」と思っている方、今一度検討してはどうだろう。

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