Go のシンタックスだけで HTML とスタイルと JS を構築する「Vecty」というフロントエンド開発キットの紹介
先日 Umeda.go#3 にて登壇して Vecty を紹介しました。資料はこちらです。
Vecty とは?
リポジトリ: https://github.com/gopherjs/vecty
GopherJSむけの React-like な frontend development kit です。
GopherJS について
- 前に書いた紹介記事を参照
Vecty の主な機能は
- GopherJS の Go 記述を JS へのトランスパイル機能を利用します
- Go のシンタックスのみで HTML とスタイルとイベントハンドリングを記述
- HTML 記述ツリーをコンポーネントとして定義する支援機能
- コンポーネントツリーを初期レンダリングする機能
- 仮想 DOM のようにコンポーネントツリーを差分レンダリングする機能
- コンポーネントプロパティを定義する機能
これだけです。
Vecty によるフロントの開発
下記のようなファイル構成を GOPATH 配下に作成しておき、(仮にパッケージ名が「app」とします)
- app/ パッケージルート
- main.go app.js のソースコード
- index.html (オプショナル)
以下の開発サーバーを起動
gopherjs serve ./app # <- ファイルパスまたはパッケージパス
ブラウザにて「 http://localhost:8080/ 」を開くと、
gopherjs の開発サーバーは以下の特例を除き、指定したパスまたはパッケージをルートフォルダとしたスタティックファイルサーバーの様に振る舞います。
特例
- app.js に対するリクエストを受けると app パッケージをビルドした結果を返す。
- app.js.map に対するリクエストがあれば app パッケージをビルドした際に生成される map ファイルを返す。
- /に対するリクエストを受けると app/index.html を返そうとする。
- もし index.html が存在しない場合は app.js を script タグで読み込むだけの最小限の HTML を返す。
map ファイルはソースの URL と各行が生成 js のどの位置かを記録したファイルです。これと Go のソースコードがブラウザに配信されていることで、 Go のソースコードによるデバッグが可能になってます。
Vecty コンポーネント
Vecty コンポーネントの条件は以下の2つを満たす構造体定義です。
- vecty.Core を埋め込む
- Render メソッドを持つ
Render メソッドが返すのはコンポーネントまたは HTML 定義です。コンポーネントをネストした定義も使えますし、複数並べたものをまとめたものを記述することができます。最終的なツリーの枝の先は HTML 定義でなければなりません。
type MyComponent struct {
vecty.Core
}
func (c *MyComponent) Render() vecty.ComponentOrHTML {
return elem.Body(
elem.Heading1(vecty.Text("Title")),
elem.Paragraph(vecty.Text("hello world")),
)
}
Vecty のレンダリング
- vecty.RenderBody(c vecty.Component)
- vecty.Rerender(c vecty.Component)
前者は初期レンダリング用で Body エレメントが 親のトップでなければなりません。後者は差分レンダリング用で RenderBody に渡したものかその子コンポーネントでなければなりません。
Vecty 付属のサンプル
GopherJS は現時点(2018-02-25)でまだ go1.10 対応はマージされていません。go1.9.4 を使うか、
gopherjs のブランチを go1.10 ブランチに切り替えて使うなどしてください。
https://medium.com/gopherjs/gopherjs-1-10-1-is-released-2ff9002a6712 go1.10-1版でましたー。
準備
go get github.com/gopherjs/gopherjs
go get github.com/gopherjs/vecty
以下のサーバーを起動して http://localhost:8080 にアクセス。
gopherjs serve github.com/gopherjs/vecty/example
現在2種類のサンプルの動作が確認できます。 markdown サンプルは追加で以下のパッケージが必要です。
go get github.com/microcosm-cc/bluemonday
go get github.com/russross/blackfriday
作ってみたサンプル
ミニマムなサンプル
main.go
package main
import (
"github.com/gopherjs/vecty"
"github.com/gopherjs/vecty/elem"
)
type TopView struct {
vecty.Core
}
func (c *TopView) Render() vecty.ComponentOrHTML {
vecty.SetTitle("TopView")
return elem.Body(
elem.Heading1(vecty.Text("Top")),
elem.Button(vecty.Text("click")),
)
}
func main() {
top := &TopView{}
vecty.RenderBody(top)
}
プロパティを利用したサンプル
package main
import (
"fmt"
"time"
"github.com/gopherjs/vecty"
"github.com/gopherjs/vecty/elem"
"github.com/gopherjs/vecty/event"
)
type TopView struct {
vecty.Core
Heading string `vecty:"prop"`
}
func (c *TopView) Render() vecty.ComponentOrHTML {
vecty.SetTitle("TopView")
return elem.Body(
elem.Heading1(vecty.Text(c.Heading)),
elem.Button(
vecty.Markup(
event.Click(func(ev *vecty.Event) {
now := time.Now().Format(time.RFC3339Nano)
c.Heading = fmt.Sprintf("Top: %s", now)
vecty.Rerender(c)
}),
),
vecty.Text("click"),
),
)
}
func main() {
top := &TopView{Heading: "Top"}
vecty.RenderBody(top)
}
ミソは以下の流れです
- ボタンのクリック
- Hedding プロパティの書き換え
vecty.Rerender(c)
にて差分描画更新
ルーターを利用するサンプル
ルーターを導入してみます。
今のところおすすめは Vecty 用というわけではありませんが、
https://github.com/go-humble/router が使いやすいです。
main.go
package main
import (
"github.com/go-humble/router"
"github.com/gopherjs/vecty"
"github.com/gopherjs/vecty/elem"
"github.com/gopherjs/vecty/event"
"github.com/gopherjs/vecty/prop"
)
type NormalView struct {
vecty.Core
Title string `vecty:"prop"`
Next string `vecty:"prop"`
}
func (c *NormalView) Render() vecty.ComponentOrHTML {
vecty.SetTitle(c.Title)
return elem.Body(
elem.Heading1(vecty.Text(c.Title)),
elem.Anchor(
vecty.Markup(prop.Href("#/"+c.Next)),
vecty.Text("link:"+c.Next),
),
elem.Button(
vecty.Markup(
event.Click(func(ev *vecty.Event) {
c.Title = c.Title + ":click"
Refresh()
}),
),
vecty.Text("click"),
),
)
}
var currentView vecty.Component
func Refresh() {
vecty.Rerender(currentView)
}
func main() {
r := router.New()
r.ForceHashURL = true
r.HandleFunc("/", func(ctx *router.Context) {
currentView = &NormalView{Title: "top", Next: "next1"}
vecty.RenderBody(currentView)
})
r.HandleFunc("/next1", func(ctx *router.Context) {
currentView = &NormalView{Title: "next1", Next: "next2"}
vecty.RenderBody(currentView)
})
r.HandleFunc("/next2", func(ctx *router.Context) {
currentView = &NormalView{Title: "next2", Next: ""}
vecty.RenderBody(currentView)
})
r.Start()
}
r.ForceHashURL = true
によりロケーションのハッシュ部分に SPA 用のパスがつくようになります。
例: http://localhost:8080/#/next2
この状態でブラウザヒストリもきちんと構築されるので前のページに戻ったりブックマークを残したりしても期待どおりに動きます。
r.Start()
で現在のロケーションハッシュをもとに HundleFunc のいずれかが発火します。ロケーションハッシュがない場合は”#/“相当に遷移します。
アンカータグの href に”#/next2”を書いておくと、クリックにて”/next2”の HandleFunc を発火して画面遷移することができます。任意のタイミングで画面遷移させたい場合はr.Navigate("/next2")
を呼ぶと同じ挙動になります。
スタイルシートを追加する方法
スタイルシートを読み込む機能は Vecty に備わっています。
bootstrap4 のスタイルシートを読み込む例
vecty.AddStylesheet("https://maxcdn.bootstrapcdn.com/bootstrap/4.0.0/css/bootstrap.min.css")
QR コードコンポーネントを作ってみる
components/qrcode.go
package components
import (
"bytes"
"log"
"github.com/gopherjs/vecty"
"github.com/gopherjs/vecty/elem"
"github.com/aaronarduino/goqrsvg"
"github.com/ajstarks/svgo"
"github.com/boombuler/barcode/qr"
)
// QRCode ...
type QRCode struct {
vecty.Core
CellSize int `vecty:"prop"`
Text string `vecty:"prop"`
}
// Render ...
func (c *QRCode) Render() vecty.ComponentOrHTML {
sz := 8
if c.CellSize > 0 {
sz = c.CellSize
}
code, err := qr.Encode(c.Text, qr.M, qr.Auto)
if err != nil {
log.Println(err)
return nil
}
buff := bytes.NewBuffer(nil)
g := svg.New(buff)
qs := goqrsvg.NewQrSVG(code, sz)
qs.StartQrSVG(g)
qs.WriteQrSVG(g)
g.End()
return elem.Div(
vecty.Markup(vecty.UnsafeHTML(buff.String())),
)
}
このコンポーネントの驚くべきところは
- QR コードの JS ライブラリは使っていない。
- GopherJS を考慮していない Pure-Go のライブラリを使っただけ。
Vecty で SPA
リッチな SPA を構築するにあたり Vecty に足りない部分があります
- ルーターやビューという概念
- コンポーネントセット
- Flux 相当
ルーターやビューという概念
ルーターは https://github.com/go-humble/router を利用することで OK です。ビューという概念はコンポーネントに条件と機能追加することで実現できます。
- ルーターの1パスに1ビューがマッピングされることを想定
- Body エレメントを根にもつコンポーネント
- Setup メソッドサポート(オプショナル)
- Teardown メソッドサポート(オプショナル)
ビューを定形で扱うために github.com/go-humble/router と vecty のレンダラーをラップしたパッケージを起こしました。
このサンプルの「router」と「dispatcher」パッケージはそのまま他のアプリの実装に使えるので使い方とかまとまったら独立したパッケージにします。
コンポーネントセット
定番の Bootstrap4 の極プリミティブなコンポーネントセットを作ってライブラリにしました。
https://github.com/nobonobo/bootstrap4
使い方
import bs4 "github.com/nobonobo/bootstrap4"
...
func (c *MyComponent) Render() vecty.ComponentOrHTML {
return &bs4.ButtonLinks{
Size: bs4.SizeLarge,
Href: "#/sample",
Children: vecty.Text("Sample"),
}
}
func main() {
vecty.AddStylesheet("https://maxcdn.bootstrapcdn.com/bootstrap/4.0.0/css/bootstrap.min.css")
...
}
Flux 相当
Vecty 付属のサンプル「todomvc」が Flux っぽいことを実践しています。この事例をアレンジしたサンプルを作ってみました。
- actions: 振る舞いごとに渡すパラメータ定義
- dispatcher: ビューとロジックを疎結合にするための仲介
- handler: 振る舞いの実装群。唯一ストアを書き換える役割を持つ
- store: アプリのフロントが持つデータを保持する。書き換えられるとカレントビューを Rerender する。
- views: ビューコンポーネントの定義群。ビューはルーターの URL と1対1で対応する。
- components: コンポーネントの定義群。
- models: データの型定義群を入れておくところ。
これらの要素を 1 方向に回す
足りないものを補って ChatApp を作ってみた
Site: https://chatapp.irieda.com
コード: https://github.com/nobonobo/vecty-sample
- リポジトリルート
- app/ フロントエンド実装ルート
- backend/ バックエンド実装
- main.go HTTP サーバー実装
これはバックエンドと一緒にサーブするサーバー実装も含まれています。フロントのサンプルとしては
$GOPATH/github.com/nobonobo/vecty-sample/app/
配下だけを参考にしてください。
Flux + Router 相当の実装
実装例が app/ フォルダの下にあります。
大きい SPA アプリを作る際は以下のようなパッケージツリーが推奨です。
- actions/ アクション定義置き場
- assets/ 静的ファイル群置き場
- app.css
- components/ コンポーネント定義置き場
- dispatcher/ ディスパッチャー実装
- handlers/ アクションの振る舞い実装群
- models/ データスキーマ定義置き場
- router/ ルーターラッパー実装
- store/ ストアデータ置き場
- views/ ビュー定義置き場
- index.html SPA の不変部分の HTML 記述
- main.go GopherJS メイン実装(app.js のメインソース)
index.html の工夫
Vecty の一つの欠点は成果物 JS ファイルが数メガバイト以上になる点です。初期 HTML をスピナー表示にしておき、app.js を defer 付きで読むようにすると読み込み中の不安感は多少緩和されます。(ロード完了後ルーターが発火して画面遷移します)(複数の script を読む場合に async をつけると実行順がバラつくので依存がある場合は defer のほうが良い)
スマホ向け調整に必要であれば、viewport や manifest.json などの記述を追加してしましょう。
タイトルは Vecty から動的にvecty.SetTitle("タイトル")
にて変更できます。
index.html
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<meta charset="utf-8">
<link href="assets/app.css" media="all" rel="stylesheet" />
</head>
<body>
<div class="loader">Loading...</div>
</body>
<script defer src="https://code.jquery.com/jquery-3.1.1.slim.min.js"></script>
<script defer src="https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/tether/1.4.0/js/tether.min.js"></script>
<script defer src="https://maxcdn.bootstrapcdn.com/bootstrap/4.0.0-alpha.6/js/bootstrap.min.js"></script>
<script defer src="app.js"></script>
</html>
HTTP サーバーの工夫
main.go
package main
import (
"context"
"flag"
"log"
"net"
"net/http"
"net/http/httputil"
"net/url"
"github.com/nobonobo/vecty-sample/backend"
)
func main() {
log.SetFlags(log.LstdFlags | log.Lshortfile)
var development bool
flag.BoolVar(&development, "dev", false, "reverseproxy to gopherjs serve(localhost:8080)")
flag.Parse()
if development {
log.Println("development mode")
u, _ := url.Parse("http://localhost:8080") // GopherJS開発サーバのエンドポイント
rp := httputil.NewSingleHostReverseProxy(u)
http.Handle("/", rp)
} else {
log.Println("normal mode")
http.Handle("/", http.FileServer(http.Dir("./app")))
}
ctx, cancel := context.WithCancel(context.Background())
defer cancel()
h := backend.Setup(ctx, "/api")
http.HandleFunc("/api/", func(w http.ResponseWriter, r *http.Request) {
log.Println(r.Method, r.RequestURI)
h.ServeHTTP(w, r)
})
l, err := net.Listen("tcp", ":8888")
if err != nil {
log.Fatalln(err)
}
log.Println("listen:", l.Addr())
if err := http.Serve(l, nil); err != nil {
log.Fatalln(err)
}
}
「development mode」では予め「gopherjs serve github.com/nobonobo/vecty-sample/app」として開発サーバーを起動しておき、フロントリソースへのリクエストをそこへリバースプロキシします。「/api/」で始まるパスへのアクセスはバックエンド実装がハンドルする仕掛けです。
開発中はこの「development mode」を利用すると大変便利です。
「normal mode」ではフロントのスタティックファイルを集めたフォルダを FileServer する挙動です。
このサンプル付属の Makefile を見てもらえばわかりますが、「make build」すれば dist フォルダにフロントとバックの配布用ファイル一式が出力されます。そのフォルダをカレントディレクトリにして「./server」を起動すればフロントは静的ファイルでバックエンドは Go の実装でサーブされます。
ルーターとビューの工夫
“github.com/nobonobo/vecty-sample/app/router” パッケージはルーターインスタンスをシングルトンで持つ形にラップしてある。
Godoc: https://godoc.org/github.com/nobonobo/vecty-sample/app/router
HandleFunc や RenderBody 、 Rerender は vecty のものではなく、 router.RenderBody(view) や router.Rerender() を使います。
import (
orig "github.com/go-humble/router"
"github.com/nobonobo/vecty-sample/app/router"
)
func main() {
router.HandleFunc("/", func(ctx *orig.Context) {
router.RenderBody(&views.TopView{})
})
router.Start()
}
また、router.RenderBody の際は以下の手順が実行されます。
- 古いビューが Teardown メソッドをサポートしていればそのメソッドを呼ぶ。
- 新しいビューを RenderBody する
- 新しいビューが Setup メソッドをサポートしていればそのメソッドを呼ぶ。
この仕掛けにより、ビューのレンダリング直後に実行したい処理や後始末処理をカスタマイズできます。これらのフックは router.Navigate やアンカーが書き換えられた場合も同様に呼び出されます。
router.CurrentView()
にて現在表示中のビューインスタンスを取得できます。
router.Navigate(path)
にて現在表示中のビューインスタンスを切り替えます。
デプロイ
以下のものを揃えれば他のコンピューターリソースを使ってデプロイできます。
- HTTP サーバー本体
- app パッケージビルド結果の app.js
- app/assets/配下のファイル一式
これらを揃えるためのシナリオは「mkae build」を参考にしてください。 app.js はミニファイするように「gopherjs build -m …」というように「-m」オプションを付けています。
また、
https://github.com/rakyll/statik
などを活用すればシングルバイナリ化もできます。
Vecty の Pros,Cons
Pros
- 基本の知識は HTML/CSS/Go のみで OK
- API やモデル定義をクラサバで共有できる
- 成果物は ES5 相当で polyfill 不要
- 豊富な PureGo のライブラリが利用可能
- 型のある開発は素晴らしい
- Vecty 本体は small & clear なので読みやすい
Cons
- 結局 DOM まわりの知識は必要(特にイベント周り)
- DOM まわりを Go で置き換えるのに慣れが必要
- JS の既存 lib 使うならやっぱり JS 知識が必要
- 成果物 JS のファイルサイズがやや大きめ
- 開発中でもパッキングするのでリロード重い
- コンポーネントの設計はやはり難しい
- Vecty 安定板までに破壊的変更の予定がある
まとめ
- JS で必要な多くの処理を「gopherjs build」が一発で処理するため最終成果物生成速度がとにかく早い。
- 依存解決、コード整形、テストなども Go のツールセットをそのまま使えます。
- Pure-Go、JS、GopherJS すべての資産を利用可能。
- フロントエンドもバックエンドも Go の記述で開発できます。(Isomorphic!)
- 開発サーバーならブラウザで Go のソースコードでデバッグできます。
GopherJS+Vecty 大変おすすめですー。
PWA サポートが Android だけでなく Windows や iOS にやってくるみたいですね。よりこういった SPA のニーズは今後も増えてくることが予想されます。ネイティブに回帰するものと SPA で二極化が進むのかなぁ。従来のフォームサブミット&ページ再構築が多用されるスタイルはより嫌われるようになるのは間違いなさそうです。