ソフトバンクグループ(SBG)が国内の格安スマートフォン(スマホ)市場で怒濤(どとう)の進撃を続けている。仕掛け人は孫正義会長兼社長の右腕である宮内謙副社長だ。格安で首位の「ワイモバイル」では「タダ学割」など他社を驚かす販促策を打ち出し、中高生に強いLINEの格安スマホ子会社も傘下に収めた。国内通信事業の上場を成功させるため「暴れん坊」路線を復活させ、盟主・NTTドコモの牙城を切り崩し収益拡大を狙う戦略だ。
■とにかく先手のランドセル戦略
ワイモバイルは学割キャンペーンをしかける(写真はワイモバイル六本木InternetPark店)
「ソフトバンクとワイモバイルのダブルブランド戦略は好調だ。特にワイモバイルでは驚くほど顧客が獲得できているんだよ」――。国内通信子会社ソフトバンク社長の宮内氏は笑顔で語る。
東京・秋葉原にある国内最大規模の家電店「ヨドバシカメラマルチメディアAkiba」。入り口近くの一等地ではワイモバが大きなスペースを確保しているが、2月の週末は中高生の子供を連れた家族客らでごった返した。ワイモバ担当の店員は「学割タダのインパクトが大きい」と語る。
スマホ最大の商戦は春先だ。新社会人や中高生らがターゲットとなる。今回の商戦でライバルを驚かせたのがワイモバだ。例年より1カ月早い昨年12月から「タダ学割」キャンペーンを開始。18歳以下の学生を対象に、基本料金を最大3カ月無料とする。大手3社より利用料が半額以下のワイモバで、さらに値引く。テレビでは人気タレントの出川哲朗さんや、にゃんこスターを使うCMを大量に打ち出している。
「ランドセル商戦と同じだ。とにかく先手を打つことで話題になる」。孫氏からワイモバイル事業を任された寺尾洋幸執行役員は話す。「スマホデビューの年齢が低くなっている。子供の顧客をきっちり取っていくことが重要だ」と強調する。
慌てたのがKDDI(au)だ。グループ会社UQコミュニケーションズ(東京・港)が手掛ける格安スマホ「UQモバイル」で同様の学割プランを打ち出したが、「後の祭り」だ。KDDIでは自社の優良顧客の流出を恐れてUQモバイルを大暴れさせるのには及び腰だ。ワイモバのように派手な手は打ちづらい。
格安のワイモバは孫氏が決断して14年にサービスを開始し、宮内氏が育ててきた。特に最近1年はワイモバへの顧客流出を恐れない積極路線に転じて急成長した。
大きかったのは17年3月の決断だ。ソフトバンクのメインブランドからワイモバに乗り換えた場合、他社からの乗り換え客が受けられる月額1000円割引の対象にならなかった。だが、この制度を撤廃した。現在のタダ学割まで攻め続けた。