(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年2月22日付)
米大統領選へのロシア介入疑惑の捜査を率いるロバート・モラー特別検察官(2017年6月21日撮影)。(c)AFP PHOTO / SAUL LOEB〔AFPBB News〕
米国のドナルド・トランプ大統領はロシアにはもう興味がないかもしれないが、ロシアの方は大統領に関心がある。
ロバート・モラー特別検察官は先日、トランプ氏の選挙運動にかかわったロシア人13人と米国人5人を含む計19人の起訴に踏み切った。これは始まりにすぎない。
モラー氏がロシアによる選挙関連のハッキングの件に取りかかれば、新たに訴追されるロシア人や米国人が出てくることは間違いないだろう。
翻ってみれば、ウォーターゲート事件が不法侵入から大統領辞任へと至るには2年を要した。就任して9カ月になるモラー氏も、同じようなスケジュールでこの一件に取り組んでいくことになりそうだ。
人は、慣れていることだと、つい気が緩む。そんなときは、目の前でとてつもないことが起こっていても、見落としてしまいがちだ。
モラー氏はチェスを指すような姿勢で捜査に臨んでいる。どの駒を動かすときも、相手のキングを常に意識している。2月16日には、2016年の大統領選挙にロシアが干渉したと指摘して自陣の守りを固めた。
モラー氏の言葉をうのみにしなくてもいい。トランプ政権のH・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、ロシアの役割は「今や疑いを差しはさむ余地がない」と語った。
これにより、大統領がすでに複数回試みているモラー氏の更迭は、ますます難しくなっている。トランプ氏は、今ではマクマスター将軍を捨て駒と見なしているように思われる。