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 「明日の朝は雪になるでしょう。お気をつけください」──。冬場の天気予報で時々耳にする定番のフレーズである。

 しかし翌朝、窓の外を見てみると雨。雪は降っていない。深夜に雪が降った形跡もない。結局、その日は終日、「全く雪が降らなかった」なんてことはしばしばある。「また雪の予報が外れたのかあ」と思う人が続出する。

 実はそれくらい、雨が降るのか、雪になるのかの見極めは難しい。特に関東地方の平野部など普段あまり雪が降らない太平洋側は、気象予報士も「雨か、雪か」の判断に迷う。

 雨か、雪か、その中間のみぞれになるかを判別するには、1つの定説がある。「雨雪判別表」と呼ばれるもので、気象の勉強をしたことがある人なら必ず見たことがある、一種の「方程式」のようなものだ。この判別表は30年以上前に確立されており、今でもその表を使って「雨、みぞれ、雪」の予報を決めるのが一般的である。民間の気象予報会社であるウェザーニューズもそうだった。

雨か、みぞれか、雪かの予報の基準となる判別表。縦軸が湿度、横軸が気温を示す。薄い点線の直線がこれまで予報に使われてきた境界線。オレンジの実線が今回判明した雪とみぞれの境界線、濃い青色の実線がみぞれと雨の境界線
(出所:ウェザーニューズ)
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 しかし、冒頭のように「明日は雪」と予報を出しても、実際は「雨だった」という予報外れが頻繁に起きる。通勤ラッシュとぶつかる平日の朝晩などに雪の予報が出ると、多くの人が身構える。都心はちょっとした積雪でも交通機関のまひが想定されるからだ。

 雨か、雪か。より精度の高い予報を出し、積雪量もできるだけ正確に予測したい(あるいは報告したい)というのが、予報士にとっては長年の課題だった。それでも先述の方程式は見直されることなく、使い続けられてきたのが実情だった。